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56話:雪山で…①

※ジオジルが言う印が見えて来たぞ とは木に記した縄張りの境界線を示した目印の事です。

セルシナの放つ弓の印とは当たった相手をマーキングする微弱な紐状の魔力です。

説明が無かったので補足させて貰います。



長老ワイズが選び抜いた戦士達をシルバが選別する為、当初予定していたウルフ達が貪る雪山へと直ぐ様向かう事となった。選ばれたのはワイズとミーミルを除き、ジオジル、ボッス、バロッシュ、セルシナの4名。村人6名とラキュア達3人の9人での狩りである。一向が村を出てからもバロッシュが不服そうに雪を踏み鳴らし歩いていた。


ギュッギュッギュッギュ

「なぁなぁッ!!本当に俺なんかで良いのかよッ!!」

「さっきからそればかりだなバロッシュ…」

「仕方ないだろッ!!納得いかないんだからよッ!!」

「不満ならジョイスに言ってくれよな、選んだのアイツだしな」

「酷いぜボッスさんッ!!既にジョイスさん居ないってのによッ!!」

「カッカッカッ!!それもそうだッ!!」

「こっちは笑ってられないっすよッ!!」


バロッシュが文句を垂れてる間にも、ラキュアは周囲の状況を探って居ると何かを感じ取っていた。


ガササッ

『ねぇ長老さん、向こうに何かいますよ?』

「ホホッ!!もう見つけたのかいッッ!!だが今は良いのじゃよ、この辺はワシ達の縄張りだからの」

「この一帯を狩り尽くすと他の動物が居なくなってしまうのですよ。子供達が狩を学ぶ場でも有りますのでね」

『ふぅ~ん…じゃぁ暫くは歩くだけなのですね…』

「まぁ少しの辛抱じゃな」

『ちぇ~…』


少しでも役に立とうと感知能力で探りを入れて居たラキュアで有ったが、今は必要が無い事に凹んで居た。そして、その後ろで驚きの汗を流す一同がミルフィに話しをかける。


「…」

「彼女…凄いですね…」

「ラキュア様ですか?」

「えぇ…私も眼は良い方なのですが、目視出来ない先を彼女は見つけています。その能力だけで立派な狩人をやって行けると言いうのに…」

「あの容量の良さは狩人で留まる御方では御座いませんね」

「ミーミル、昨日までと全然態度違うわねッ!!あんなに睨み付けてたのにッ!!」

「な、なんの事でしょうかセルシナ姉様」

「とぼけちゃってぇ!!このこのこのッ!!」

「ふふ、二人は仲が良いのですねッ!!」

「こらこらッあまり騒ぐなッ!!警戒心も評価の対象として見られるぞッ!!」

「はーい」

「は、はい…」

「ワイズ、そろそろじゃ。印が見えて来たぞ」

「そうか…。お前達ッ!!お喋りはソコまでじゃ。村の縄張りを抜けるぞ、此処からが狩じゃ」


ワイズ達が目的地に近い事を確認すると直ぐ様、気持ちのを切り替えだした。そんな空気が伝わったのかシルバはラキュアに声を掛ける。


「ラキュア様、私達三人は彼等から少し距離を置きますよ」

『ん、何で?』

「私達が居ては意味が無いからですよ。彼等の実力を測る為に必要な事です。それと感知の情報も彼等には言わないように」

『っむーーッ!!何か下僕に言われると従いたくないですね』

「まぁまぁラキュア様そういわずにッ!!私達には目利きが出来ないのでシルバさんに任せるしか無いのですからッ!!」

『わ、分かってますよミルフィちゃん…あ、何か木の上で反応が…アソコにも…』

「ラキュア様、皆さんに動きが…」


ワイズ達は縄張りを抜けると共に武器を手に取り、見渡す様に重く進みだした。そんな長老達を眺める為、彼等の少し後ろを歩き、様子を見る事にしたラキュア達が、いち早く何かの反応を捉えて居た。そしてその反応は、遅れてワイズ達にも知れ渡る。


「長老ッ!!」

「セルシナ、獲物なら見つけ次第、印を放って構わん。ワシ達で取りに行く」

「はいッ!!」

「聞いたかお前達、セルシナを良く見とくのじゃよッ!!印を見失ったら見せ場が無く成るぞいッ!!」

「それでは先ずは南西から…」ギギギッ!!シュッ!!

「木の上か、バロッシュはお留守番じゃのうッ!!ホッホッ!!」ササッ!!

「言われなくても分ってるっすよッ!!あの爺…斧持ってる癖に身軽過ぎんだよ畜生ッ…」

「他にも見えたわッ!!バロッシュッ!!走ってッ!!」シュッ!!

「おうよッ!!」


ササッ!!シュンッ!!ササッ!!シュンッ!!

「なんだワイズ、お前さんまで来なくても」

「ジオジル、あんま一人で行くなッ」

「ワシは見せ場を作らなイカンのよッ!!お前と違ってなッ!!」ッフッ!! ピュンッ!!

「そうは言ってものう…」

「ワイズ、そのうち獲物が落ちて来るぞッ」

「ほいほい…ワシが行けばいいのじゃろ…」


ジオジルがしれっと吹き矢で獲物を捕らえると、余裕気な笑みで指を指した。

それをワイズが取りに向かった。


ササッ!!…ドスッ…

「ホホッ!!落ちて来たか、それにしてもこのリス、まるまる太って居るのッ!!」

「すまんがそれはウルフの餌じゃよ。血でも撒いておけば向こうから来るじゃろ」

「なんじゃ毒を盛ったのか…仕方ないのう…フンッ!!」ザシュッ!!

「向こうもヤッてる様じゃな…」

「見たいじゃな。だが、あやつ…やはり狩りには向かんか…」


反応を捕らえてから二手に分かれ、バロッシュ達が別の獲物を見つけていた。


ザザザザザザザザッ!!

「紐がお尻で靡いてやがるぜ?いったい何処まで逃げるおつもりだッ」

「…」

「クソッ木を盾に進み分けて行きやがるッ!!」

「バロッシュ御兄さん、早くしないと逃げられます」

「と言われても、流石に遠すぎってもんだよッ!!」

「仕方ないですね…」シャキンッ!!シュッシュッ!!


ミーミルが投げナイフを2本投擲すると、それは見事に命中した。


グサグサッ!!ドスンッ!!

「これなら追いつけますよね?」

「良い腕だミーミルッ!!」

「当然ですッ」

「フッ!!これがあのミーミルとは…。俺も遠距離技術磨こうかなッ…」グシュッ!!

「バロッシュ御兄さんどうしましょうか?」

「どうって持ち帰るに決まってるだろ。よっと」ズササッズササ…

「いえその、私の方が力持ちと言いますか」ヒョイッ!!

「お、おいおいマジか…。」

「このまま私が運んだ方が…」

「これ位は俺に花を持たせてくれ…頼むッミーミル!!」

「仕方ないですね…危なくなったら私が持ち運びますからね」

「流石俺の可愛い妹分だッ!!よっとおッ!!」ズササッ!!


ジオジルとワイズ、バロッシュとミーミルがそれぞれの獲物を持ち、ボッスとセルシナの元へと戻って来た。


「ボッスさんッ皆さんが戻ってきましたッ!!」

「ホホッ!!ワシ達は外れじゃ」

「獲れた様だな、獲物はリスと鹿か…」

「へっへっへ。すまんな爺さん共ッ!!」

「バロッシュよ、余り調子に乗るでないぞ?しっかり見ておったからの?」

「な、何をだよッ!!」

「楽しく追いかけっこしていた所に決まっておろう…」

「な、何の事かなーッ!!」

「ホッホッホッ!!ミーミル、よくやった」

「はい御祖父様、これ位何て事は」

「だとよッバロッシュッ!!もうちょっと良い所見せろよ」

「ぼ、ボッスさんまで…クッソ―ッ!!何で俺は此処に居るんだよッ!!」


哀れみの目を向けるミーミルの視線を他所に、バロッシュが強く地団駄(じだんだ)と踏み鳴らしていた。


「皆さん何だかイキイキして見えますねッ!!」

『年長ペアも歳を感じられない身の熟しでしたよ…』

「狩人の血が滾ってしょうがないのでしょうねッ」

「どうですかシルバさん。皆さんの動きは」

「まだまだ始まったばかりですからね。ただラキュア様の言う通り、長老さんとジオジルさんの身のこなしは素晴らしいですね。ミーミルさんの投擲精度も見事でした。鹿の脚を狙い、木を避けるタイミングで巧く衝突させ動きを止めましたからね」

『でも2本刺さってましたよね?あれだけ的確なら頭部にでも突き刺せば…』

「フフッ…ミーミルさんは狩の補助に回ってますからね。本来なら範囲内で有れば彼女一人で軽く仕留めて居ますよ」

『流石は下僕の太鼓判と言った所ですか、他の三人は?』

「セルシナさんの視力と、それを生かした矢印と言う紐を打ち付ける役割は良い物だと思います。リスを当てれて無いのを見るとミーミルさんより精度が悪いと思いますが、遠距離としての役割は十分です。ボッスさんはこれからでしょうが、とても落ち着いた戦場視察をしていますね。セルシナさんの先導をしつつ、別れた二組の中心を分かりやすい様に突き進んでいました。彼が見えて居れば仲間が散り散りになる事は無い、そういったリーダー的な足運びだと思います。二組の状況が私達でも分かったのは、彼の後ろに付いて居たからこそです」

『ふ~ん。ボッスさんが一番何もしてない様に見えていたけど、重要そうな事してたんですね…』

「それでバロッシュさんは?」

「彼は今の所論外ですかね…やってる様で何もしてないです。逃げる相手の先を読む事が苦手なのでしょうかね…キッパリ言うと狩が下手です」


…本当にキッパリ言いましたね…凄く熱い御兄さんなのに…


「そうですか…でもバロッシュさんが居たらかこそ場が和やかな気がします…」

「ふむ、士気に関わる役割ですか。確かに彼にはその気質は有るのかもしれませんね。ただ狩としての評価では無いです。これが戦争で有れば彼のそれは輝きを放つでしょうがね」

『なんかだか思った以上にちゃんと見て居ますね…下僕の癖に生意気ですよ』

「フフフッそれはお褒めのお言葉として受け取ります。さぁラキュア様、彼等が困って居ますのでそろそろ私達も向かいますよ?荷物運びの能力は求めて居ませんから」

『え?それってどういう意味?』

「行けば分かりますよ」


ボッスを中心に行動していた狩人達が中心へと戻り、その能力をシルバが粗方見極めていた。彼女の評価を意外と真面目に受け取ったラキュアは彼等の元へと近づいて行く。


「さて、ではこのままミーミルに任せるか?」

「だが、この先の獲物はどうする、剥ぎと持ち運びの人員は居ない面子じゃぞ」

「美味しい所だけ剥いでいきますか?」

「あまり餌を与えると匂いに吊られたウルフ達が、群がる動物を喰らい尽くすかもしれんぞ」

「ではウルフ捜索に専念しましょうか?」

「折角の狩場が勿体ないんじゃないか?爺共だって滅多に来れるわけじゃ無いだろ」

「まぁバロッシュの言う通りでもあるが…」

「でしたら私が引きずってでも荷物持ちを…御祖父様は狩りに専念すべきですよ」


顎に手を当て悩みだす一同を目に、ラキュア達もまたその光景に疑問符を浮かべて居た。


「…」

「…」

『も…揉め事?』

「どうやら持ち物係の話し合いの様ですね」

『あ~…そう言えば荷物になるのか…』

「ふむ、ではラキュア様の出番で御座いますね」

『え?あ…』


…成る程、そういう事ですか…私は鞄係と。でも間違っちゃいない。うん、でもパシリ見たいで嫌ですが自分から名乗り出ればきっと…うん、違う筈ッ!!…


ラキュアは獲物を取り囲む一同達の背後からそっと近づき顔を覗き込んだ。


そそぉ~…ひょこッ!!

『あ、あの~でしたら私が持ち運びますよ…』

「うぉぉッ!!びっくりしたぜッ!!おチビちゃんかッ!!」

「おや、まさかあのアイテムバックでか」

『勿論です』

「しかしのう…」

「持ち運びの能力は期待して居ないので評価には入れる予定は無いです。ですので宜しければラキュア様に任せて頂ければ」


(((「ッ!!!」)))


「ほ、本当かッ!!これなら狩り放題だなッ!!」

「まさに荷が軽くなる所業じゃなッ!!ホッホッホッ!!」

「では狩り過ぎない程度に村人達の蓄えを取りつつ、この血肉でウルフを待つとしますか」

「うーむ…。いや駄目じゃ、日が沈まぬうちに済ませんと帰れんぞ…?ウルフを探しながらついでに仕留める。これで良い」

「よし、了解した長老。ではラキュアちゃんには俺の元へと運ばれる獲物の持ち運びを任す」

『は、はいッ!!任されましたッ!!』

「そうと決まれば急ぐぞ、余り離れない様に二組で行動しなさいッ。誰も手が出せない獲物はミーミルに任すぞ。さて行くぞいッ!!」

「はいッ!!」


ラキュアが獲物の持ち運びと言う悩みの種を解決する事で、ワイズ達の狩は捗る一方で有った。暫く狩が上手く行かなかった事も有ったのか、血を浴びて戻って来る狩人達の真の笑顔を見たラキュアは少々引き攣っていた。


「すまんおチビちゃん。コイツも頼む」

『は、ハハハ…またですか…あ、行ってらっしゃい…』

「ラキュア様…顔が可笑しいですよ…もっと可愛らしく笑わないと…」ぷにゅぅ!!ぷにゅぅ!!

『しょ、しょんな事いはれてもでふね…』

「狩人なんてこんな物ですよ?生きがいですからね?血を浴びてこそです」

「シルバさんも狩りたくてしょうがないのですか?」

「私ですか?私は元狩人ですが今は魔法使いですよ?狩りの生きがいは故郷に置いて行きました」

『と言う割には、自分を血に染めて素晴らしい誉を手にしたそうじゃないですか…』

「さて何の事でしょうか?血なんか出さなくても生き物は簡単に殺せるのですよ」

『そ、そうでしたね…下僕さんなら可能でしょうね。聞いた私が馬鹿でしたよ…』

「おや、ボッスさんがもう帰ってきましたよ?」

『え、もうですかッ!?』

「でも手ぶらの様ですが」


ギュッギュッギュッギュ

「すまんラキュアちゃん、少し確認して欲しいから来てほしいのだが…」

『感知って事ですか?シルバさんに駄目って言われてるんだけど…』

「一応ダメ元だから聞いてくれ、セルシナが山の崖上でウルフの影を複数確認したと言っているんだ。高低差も有るし不用意に近づくには厳しいからお前さんの感知が必要だと判断し、皆を連れて引き返すように言いつけて来たのだが」

『どうですか?下僕殿』

「ふむ…。確かめに向かい登り切った所を襲われてはどうにもなりませんしね…。良いでしょう。ラキュア様をその場所へ案内して下さい」

「分かった。こっちだ」


本来で有ればウルフを見つけるのも彼等の評価対象として見るのだが、状況からみて危険と判断したシルバはラキュアを頼る事に決め、一向は合流する事となった。


「おうッ!!きたかおチビちゃんッ!!」

「すみません…もしかしたら見間違えの可能性もあるのに…」

「無暗に突っ込まれるより余程ましですよ。それで何処で?」

「この先です。視界が開けるのでコチラの場所まで把握されてしまうかと思いまして…」

「よいよい、それでよい。良く踏みとどまれたな、ここにはバカが混じって居るからの」

「お、おいッ!!それ俺の事だろッ!!」

「さてどうかのうッ!!名前までは行っておらんからのッ!!」

「ホッホッホッ!!ジオジルその辺にしてやれ、面白くてしょうがないわい。さてラキュアちゃんよ…後は任せたぞ」

『ん、分かりました。この先ねッ』


テトテトテト


ラキュアは小さな歩幅で歩き、ノアールが感じる感知領域まで到着した。


…どう?ぴょこちゃん…

…《あの娘良く見えたぴょこね、確かに生体反応は5つ有るぴょこよ。でもノアールじゃ生物の特定までは無理ぴょこよ?》…

…うん、それは今までの分かってるよ。でも肉眼で判別できるのは凄いね…ぴょこちゃんにもその能力有ればいいのに…

…《の、ノワールのはラキュアの魔力感知領域内なら不可視領域でも反応で分かるのだぴょこよッ!!見えないと確認出来ない肉眼より凄いんだぴょこよッ!!…》

…分かってるってそんな事ッ!!…


テトテトテト…

「ら、ラキュア様が戻って来ましたぁぁぁあッ!!」ダダダダっ!!ぎゅぎゅッ!!

『うぐぐッ!!み、ミルフィちゃん…ぐるじいよぉ…何故に…』


…ちょ、ちょっと離れただけなのに…


「どうでしたかラキュア様」

『ん、崖上で反応が5つ出ました』

「なッ!!ウルフが5匹ぃぃ!?」

「あの高低差で5匹か…良かったなバロッシュ。命拾いしたようだぞ」

「な、何のことだかなーッ!!さて長老ッどうすんだこれから」

「そりゃ行くに決まっとろう」

「正気かよッ!!今まで爺共はツガイしか相手に出来た事ないだろッ!!」

「そりゃ今までは居てもツガイだけじゃったからなぁ」

「なら3匹以上はイケるって言うのか!?」

「そうは言って居らん。やらずして逃げる時点で選抜する必要も無いと言っておるのじゃよ」

「俺は来たくて来た訳じゃ…」

「フフフ、良いですよバロッシュさんは来なくても。村の期待に応えれないヘタレとして村に戻ると良いです。この先、選ばれなかった者達の視線に絶えれるので有ればね」

「うッ…」

「まぁワシはお前こそ一番行くべきじゃと思うがな」

「ちょ、長老…俺なんか狩りは下手くそな警備止まりの奴だぞ…」

「っふ…バロッシュは何も分かってないんだな…まぁ良いさ、俺が無理矢理にでもお前を連れて行くからな。ジョイスの頼みだ」

「ぼ、ボッスさんまでッ!!」

「そもそも大事な事を忘れて居ますよ」

「大事な事?」

「私達にはラキュアちゃん達がついて居ると言う事じゃよ。甘える訳じゃないが、彼女達が退かないのであれば負ける事は無いと言う事じゃ」

「うぐぐ…」

「まぁそういう事ですので行きますよ?早くしてくださいバロッシュ御兄さん」

「くそ…分かったよ…ッ!!どうなっても知らないからなッ!!」

「ホッホッホッ!!さて行くぞ」


ギュッギュッギュッギュ

『所でこの崖どうするの?私登れないですよ…』

「そうですね…少し魔力使いますか…ラキュア様危ないのですこし下がって居て下さい」

『ん、うん…』


――― 低段階型(ローグラデーション)威力制御化(グレードコントロール)魔法(マジック)ッ!! ―――

――― 複数型(マルチ)氷結柱(フローズンピラー)ッ!! ―――



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!! 


「こ、これはッ…氷の階段ッ!!」

「これならラキュア様でも登れるでしょう。勿論皆さんも」

『どや顔がイラ付きますがナイスですッ!!』

「ホホッ!!これは有りがたいッ!!」

「流石は無詠唱魔法使い様…恐るべし…」

『ん…ちょっと待って…それが無詠唱?今何か言ってませんでしたか?』

「ラキュア様…アレはワードスペルと言って魔法を体現させる為の鍵なのですよ」


…ごめんミルフィちゃん…何言ってるか全く分からないですよ…


「まぁ今は事細かく説明している暇は無いので、早く昇りましょう」

「さぁラキュア様ッ足元気を付けて下さいねッ!!」ニギッ!!

『う、うん…仕方ない…。でも何で氷なの…石とか土の方が昇り安かったのに…』

「これ程凄いのにケチつけるとはなッ!!」

「ラキュア様、この土地は自然の恩恵を凄く受けており、水系の精霊以外は極端に少ないのですよ。ですから土や炎と言った属性を使うには時間も魔力も必要となり燃費が悪いのです。その点水の精霊は豊富な為、普段より威力や必要魔力量も申し分ないのですよ」

「とは言っても普通の魔法より凄い量の魔力は使ったと思われますよ…」

「そうじゃな…最低3詩以上の長詠唱に連続化の魔法…それを体現できる魔力量と、その全てを無詠唱でやってのけてしまうと言うのだから…つくづく末恐ろしいわい」

『へ、へぇ…凄さがさっぱり分からないや…』ボソッ


ノアールが感知した崖上の5つの反応へと向かう為に、シルバが放った氷の魔法によって崖に氷の階段が作られ、一向はそれを登り切った。


『何事も無く到着しましたよ…』

「うむ…ワシも構えては居たんだがのう…」

「肝心のウルフが襲ってこないのう…」

「無理も無いっすよ、崖下に居た筈の猿共がビックリ技で昇って来たとなれば誰でも一度退くさ…」

「あんな技を昇る為に使うんだものね…確かに逃げたくはなります…」

「それでもああやってコチラを見て居るだけでもいい度胸ですね」

「獣ながらにアッパレだな。さて長老、好都合でしかないこの状況…どういたしますか」

「そうじゃな、好都合でしかないこの状況は利用するしか他ないのう。今直ぐにでも奴等の首元に食らいつきに行こうじゃないか」

「了解。どうなるか正直分からんが俺達は行って来る」

「バロッシュはどうするのじゃ?」

「行くってッ!!此処まで来て今更戻れるかってのッ!!」

「此処まで来て戻ればそれこそ伝説になれますよ!?」

「セルシナは黙っとけッ!!行くったら行くんだよッ!!」

「ホホホッ!!さて、ボッスは先頭に付け、ワシとジオジルで支えてやるわい。バロッシュはミーミルとセルシナの援護じゃ、きっちり食い止めるのじゃよ。ミーミル、あのデカいウルフを頼む、手を抜く必要は無い。無論ワシも抜くつもりも無いからの。状況次第で仕留めにかかれ。シルバさん達はワシ達が見て居られなくなったら助太刀を申す。それでは行くぞい」


((「突ッッ!!」))


「はいッ!!」「ああッ」「了解っすッ!!」「…」「ホホッ!!」



―――〈 ワオーンッ!! 〉―――



こうして当初の目的であるウルフとの戦闘が始まった。



ラキュア達が雪山を散策していた頃、温泉騒動の一見から未だに牢に閉じ込められていたディスタは泣き疲れたのか意気消沈していた所、一人の友人が牢へと足を運んできた。


「…」

「なんでオイラばかり…」


ガサッガサッガサッガサ


「足音?」


コンコンッ!!

「ようディスタッ!!元気…じゃぁなさそうだな…」

「…なんだ、ビークか…オイラになんの様だぞ」

「おいおい、そんな冷たい目で見るなよ…俺達の仲だろッ!?」

「何が俺達の仲だッ!!牢に打ち込まれたオイラを笑いに来ただけの癖にッ!!」

「やめてくれよ親友にそんな事いうのはよッ!!コレでも心配してきたんだぜッ!!」

「とか言って…」

「ほらよッ!!差し入れだッ、厨房の残り物らしいけどなッ!!」

「ビ、ビークッ」ゴクりんこッ

「これ位気にすんなッ!!それでよ、面白い話が合ってよッ!!」


むしゃむしゃ、むしゃむしゃ

「お、おもひろいはなひ?」

「おうよッ!!実はよ…あのミーミルがよ…隠れ猛っ」


ガチャンッ!!

「おーいビークッ!!お前の父ちゃんが呼んでんぞ~!!なんか厨房でやらかしたらしいじゃねーかッ!!凄い怒ってるぞッ!!早く来ーいッ!!」

「うげぇッ!!もうバレたのかよッ!!くっそーこの後誤魔化すつもりがぁぁぁぁあ!!」

「ビ、ビーク、お前ッ!!それよりミーミルが何んなんだぞッ!!」ごっくんッ!!

「わりぃディスタ!!その話はまた今度なッ!!」


スタタタタタッ!!


「お、おいビークッ!!…なんなんだよ一体…まぁでも…御かげでお腹が膨れたぞ…ありがとうビーク」


バロッシュに続き、良く分から無いながらもビークから元気を貰ったディスタであった。

そして、この村で唯一、ミーミルが猛者だった事について知らされていないディスタであった。


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