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52話:ミルフィ、ナイフを学ぶ


ラキュア達が村人達の訓練風景を眺めに向かったその日、そこで分かった温泉施設の存在と、温泉に入る為のローカルルール(掟)に重んじて、訓練に励む事となった。



「あのディスタさん、そもそも訓練とは何をするのですか?」

「ん~…獲物を倒す為の知識と術を身に着け、実戦を交え一人前の狩人を目指し、いつまでも己の肉体を磨き続ける」

「は、はぁ…」


…う、うん…パっと来ないですね…


「と言うのが教訓であり【狩人として何でも出来る者】を目指せる者は、そんなに居ないのだぞッ。だから出来る事を身に着け、実戦で支え合う為の訓練なのだぞッ」

「要するに?」

「やりたい事をやるのだぞッ」ビシッ!!


「…」

「…」

『…』


…あまり、答えに成って無い様な気もするのですが…


「と言われても自分に何が出来るか分からないのですが…」

「そう悩む必要は無いのだぞッ。ほら例えばアソコにいる小さな女の子を見るのだぞ」


ディスタは、訓練場で何かに励んでいる小さな女の子に向けて指を指した。


「わぁ…ラキュア様と同じ位の子がナイフを持って…血まみれに…ッ!?」

『え、ちょ…良いんですっかアレ…止めなくて…』

「あの年で剥ぎの練習か…なかなか肝が据わってるな」

「その通りだぞ。狩りで仕留めた際に、獲物が大きすぎては持ち帰れない。だから、部位だけを残して持ち帰る。その為にああやって練習しているのだぞ。狩りが出来なくとも、他で補える者が一緒に居るだけでスムーズに行くのだぞ。とても大切な事なのだぞ」


「…」

『…』


「他にも視力や聴力を磨いて輔佐す者や、道具の整備を素早くこなす為、手際の良さを毎日磨く者、道具を沢山持ち運ぶ為に人より筋力をつける者。本当に何でも良いのだぞ。自分が何をしたいのか考え、やれる事磨くのが訓練なのだぞ」ビシッ!!


「自分が何をしたいのか…私は…ラキュア様を守りたいです。足手まといには成りたくないです…兎さんも狩れ無い様な役立たずには…」

「うむ…。ミルフィさんは外敵から主を守る役割をしたいのか?それなら必然的に体力と攻防の為の訓練が必要になってくるんだぞ。ミルフィさんは何か攻撃手段はあるのか?」

「えっと火属性の魔法が少々…物理的な攻撃手段は何もありません…」

「ん~魔法…。オイラ達は魔法についてはからッきしだぞッ。もともと魔力が少ないから、魔法を唱え撃つ事が殆どないのだぞ…体の調子が良くても、それをするだけで疲労に襲われてしまうのだぞ…だから教える事は…」

「下級魔族は魔力の貯蔵量が少ないですから…これだけは鍛えられないし仕方が無い」

「でも物理的な手段で有ればこの訓練場で学べば良いのだぞッ。剣やナイフ、槍や弓などもあるのだぞ」

「私ッ弓がやりたいですッ!!」

「弓か…弓は剣と同じ様に結構腕力を必要とするぞッ」

「うぅ…腕力…」

「今は無くてもこれから鍛えて行けば良いのだぞッ」


…や、やめてッ!!私のミルフィちゃんが、ふわふわ から 隠れマッチョ になってしまいますよッ!!…


「弓も良いですが、ミルフィさんには小回りの利くナイフが良いと私は思いますよ」

「ナイフですか?何だか地味の様な…」

「確かミルフィさんは侍女をやっていたと言ってましたよね?主に仕えて居れば、必然的に武器を制限されてしまいます。ですが小回りの利くナイフで有れば、隠し持つ事が可能で、もしもの時に素早く対応する事が出来るのですが…」

「……ッ!!!わ…私、ナイフが良いですッ!!いつでも何処でも弓なんて持って行ったら野蛮ですものねッ!!それに比べてナイフなら…」キラン☆ミ


…ちょ、、私のミルフィちゃんをチョロインにしないで頂きたい…。それに、その心がけは凄く嬉しいのですが、いつでもどこでも隠しナイフ持ち歩いてるのも大分野蛮な気も…


「ではナイフを渡す為に、あっちに移動するぞッ」



ラキュア達は、訓練に励む村人達の視線を掻い潜り、実技に適した訓練地点へとたどり着いた。



「オイラ達はこの辺りで始めるとするぞッ」

『随分端っこでやるのですね』

「お前達は只でさえ目立つのだぞ。他の者達が集中出来無いので仕方ないのだぞ…此処まで歩いて来て、それは感じただろッ?」

「は、はい…」


…確かに、話したくても話せないソワソワした村人達が只コチラを見ているだけで、兎に角気持ちが悪かったですよ…先ほど長老に叱られた様ですし仕方が無いのですがね…


「それで…何故射的場に?私はナイフについて学びに来たのですよね?」

「それは勿論、投げて当てる為だぞッ」


((「『ッえぇ!?』」))


『もっと他にやる事有りますよね?構え方とかナイフ同士の斬り合いとか…』

「言うほど教える事は無いのだぞ。そもそもナイフとは斬り合う為の武器では無いのだぞ。基本的には補助でしか無いのだぞ」

『えっ…でも盗賊とか山賊って大体ナイフですよね…』

「何処の根拠か知らないけど、遠くで最初からナイフを握ってる様な敵は、それしか手段が無いからだぞ。距離が有るなら弓を構えれば良い、間合いを詰めるなら剣や槍の方がナイフより断然仕留めやすいのだぞ」


…まぁ、それはそうですけど…


「では何故、ナイフを装備するか。と言う事になって来るのだけど、まず1つが、それしか持ち合わせて居ないから。もう一つが、ナイフに絶対の自信が有るから。そして最後に、その方が効率が良いから。なのだぞッ」

「どうにもナイフの利点が良く分かりませんね…」

『効率と言われてもねぇ…』

「うむ…なら初めに、ナイフとはどのような武器かを簡単に説明するぞ」


「…」コクリ

『…』コクリ


「今、ここに置いて有るナイフ達は、超近接戦において最も傷を付けるのに適した武器なのだぞッ。ナイフとは基本的に、刃先を当てるだけで良い武器で有り、力を込めて相手を切り落とす武器では無いのだぞ」

「え~っと、それでは相手を倒す事が出来ないのでは?」

「その通りだぞ。そもそも倒すのが目的では無く、本来は敵の撃退を目的とした武器なのだぞッだからこそ補助としての武器枠なのだぞ」

「それではいざと言う時に…ッ!!」

「でも、それは使い方次第で変わって来るのだぞ」

『使い方?』

「そう、使い方だぞ。例えば先ほどナイフとは刃先を当てるだけで良い、とオイラは言ったぞ。でもその刃先が急所へと斬り割いていたら?貫いていたら?例えば眼、大動脈、頭部や心臓…」


「…」

『…』


「時間が立てばその内死に絶えるし、部位によっては即死もあり得るのだぞ。刃は小さいが、近づければそれだけ急所へと当て安く、更にナイフに薬物を持って有れば、浅い傷でも致命打となるのだぞ。猛毒で有ればその内死に絶え、神経毒で有れば簡単に無力化が出来るのだぞ。そしてその傷を効率的に与えられるのがナイフなのだぞッ」


『なるほど…」

「効率という意味が何となく分かって来た気がします」


「但し、ナイフは真っ向勝負に弱いのだぞッ。見ての通り刃先は短く、距離を詰めなければ成らないのだぞッ。持っている事がバレるだけで傷を与える事が困難になるのだぞッ。その時点でナイフでの負傷効率はグンと落ちるから、それより長い剣や、遠距離に切り替えるのが常識なのだぞッ。だから補助としての武器なのだぞッ」


『それなら初めからナイフを握って攻撃する意味ないですね…ずっと剣や槍で戦ってた方が遥かにマシに思えてきました』


「ラキュア様、真向から剣を振り攻めるよりは、敵に悟られず、過ぎ去り際に切り傷を加えるのも負傷効率の一つなのです。不意打ちで有ればナイフで無くても出来ますが、武器の大きさや攻撃動作、雑音などがナイフには全く無いので、手際よく傷を負わせ、武器を仕舞えるです。その小回りの良さは、途中で気づかれる事無く、誰がヤッたか分からない程に厄介なのですよ」


…なにそれ、狩人ですら無く成ってるよね…通り魔?コイツなんなの?…


「それだけの事を小さな刃物で出来て、尚且つ隠し持つことだ出来るのだぞ」

『それで…なんで射的場?』

「それはさっきも言ったぞ?投げて当てる為だぞッ。この投げナイフを使って」ガチャガチャ

「成る程…刃は短いけど、ナイフを投げて傷さえ与えれば、不利な長距離戦や近接戦でも撃退が可能と言う事ですね?」

「そういう事だぞッ!!」

『本当に良いんですか?その訓練だけで』

「攻撃を受け、避けて、いなす様な訓練は、ナイフが無くても練習できるのだぞ。でもナイフを思う存分投げるにはそうも行かないのだぞ。的が無ければ始まらない、投げる距離も無ければ始まらない。投げる数が無ければ始まらない。そして、使い慣れた物で無ければ精度は高まらないのだぞッ。石ころ投げてればナイフ投げが上達する訳ではないのだぞッ。これは全ての武器で言える事なのだぞッ。それが無いと訓練に成りえない事をこの場で練習するのだぞッ」


…要するに、ナイフを投げて練習するのは、今しか無いって事ですね…なるほど…なんだかな~…


「…なッ!!化け物か…」

『な、なんですか急に…気持ち悪い下僕ですね』

「なんでも無いですよラキュア様」

『あぁそうですか…』


「ではミルフィさんはナイフを握って投げる訓練を始めるのだぞッ」

「あの、持ち方とか投げ方とか…」

「近接時の持ち方は自由だぞ。でも慣れるまでは普通に持ち、投げる時は手首の捻りだけで投擲するのが基本だぞ。狙いを付け、上から構えて投げるのも良いが、理想は下から振り上げる様にだぞ」

「…下から?何故下からなのでしょうか?とても投げ難く、力が入らない様な…」

「上投げは決まった体勢でしか投擲出来ないのだぞッ。例えば落ちているナイフを拾ったとするぞッ。その時、即座に相手に投げ飛ばすには肩まで上げる動作を必要とするのだぞ。こんな風に…」ポイッ


ぽと…ススッ シュッ!!シュトンッ!!

「これでは無駄が多いのだぞ、上投げは手首の構造上、肩まで上げないと角度調節が出来ないうえに、投げると言う動作も相手に伝わってしまうのだぞッ。でも下投げなら…」ポイッ


ぽと…スシュッ!!シュトンッ!!

「この様に拾った直後に相手に向けて投げる事が出来るのだぞッ。角度の調整もしやすく、色々な体制から投げる事が出来るのだぞ」

「こんな軽い動作で…」

「コツは手首の捻りだぞ」

「手首の捻り?ですか?」

「そうだぞッ。こんな風にだぞッ」シャキンッ!!!!


シュッ!!!!シュトトトンッ!!


「す、凄いですッ!!」

「力を込めて投げるのは予備動作も必要だし無駄が多いのだぞ。いかに素早く、いかに的確に当てられるかがナイフに求められる技術なのだぞ。だからこの程度の動作が適しているのだぞ」

『…』

「さぁミルフィさんもやってみるのだぞッ」

「は、はいッ!!…えぃッ!!」ッスッ!!ぽとん…

「腕を押し出すのでなく、手首を捻るのだぞッ」

「はいッ!!えーーーぃッ!!」ぽとんッ!!


「あのガキ何でも無い顔しながら中々凄い事しましたよ」

『え、やっぱりアレ凄いの?』

「指一本一本の力加減とその投擲精度…隙の無い手首の振り、あの歳でこれ程出来るのはそうそう居ないですよ。ミルフィさんへのアドバイスと言い、教官として村人達に教えているのも納得が行きます」

『ふ~ん…』


…なんか生意気なガキの癖に、本当に生意気な性能ですね…べた褒めじゃないですか…


ディスタがさり気無く、指と指の間にナイフを挟み込み、何気ない顔で投擲して見せた。その数は3本。それらは全て的に刺さって居て、適当に放り投げた物では無い事が伺える技術だった。


『なんか私達、暇に成りましたね…』

「そうですか?なら試しにやってみてはどうですか?多分許可は貰えると思いますよ」

『う、うん…じゃ下僕が聞いて来てよ』

「分かりましたラキュア様」


…ずいぶん従順になったモノですね…


「悪態をついて居ましたが、許可は貰えましたよ?何を言われたか聞きますか?」

『あ、こっちも随分あっさりですね…お構いなく…。どうせ想像できますよ…』

「でしたらラキュア様も早速やってみましょうか」


ディスタがミルフィに、ナイフについてのアレコレを説明し投擲訓練が始まっていた。見ているだけで暇を持て余して居たラキュア達もナイフの投擲訓練に挑戦し始めた。


ガチャガチャ

『なにこれ…ナイフじゃ無い物も混じってますよ』

「ナイフの代わりに成る物も混じってますね。見て下さいラキュア様、これも需要があるんですよ』ササッ ッスッ!!シュトトンッ!!ビヨ~ンッ!!

『フォークッ!?ナイフッ!?』

「パーティー会場でお馴染みの危険物で御座います。のうのうとワインを楽しむ貴族共の目玉を抉るに最適ですね」


…この下僕サラッとヤバイこと言ってますよ…無詠唱魔法なんか無くても殺戮者として称えられたんじゃないのかね…


「ッ!!?」

「どうしましたか?ディスタさん」

「あ…いや、何でもないぞ…さぁ次は護身用のナイフを触ってみるのだぞ。」

「は、はいッ!!」


訓練を始めてから数時間が経過していた。慣れない動作に疲れを現せたミルフィと、

おもちゃ箱をあさる様に適当にナイフを出しては、届かない的めがけ投げ捨てるラキュアと、それを見守りながら時折ナイフを握りど真ん中へと放つシルバ。そしてディスタは、そんなシルバの投擲に興味が沸いて仕方が無いと言った様子であった。


『はぁ…なんか詰まらないです…』ぽいッ!!ぽとんッ…

「私は腕が痛くなって参りました…」ッスッ!!ットンッ!!

『良いよね~ミルフィちゃんは…何だかんだで的に当たってるし』

「私は縁の外ですし…これ位ならラキュア様もその内当たりますってッ!!」

『これくらいねぇ…』ぽいッ!!ぽとんッ…

「お前みたいなチンチクリンにはまだ早いのだぞッ。これならナイフを握って振り回して居た方が、マシな訓練になるのだぞッ」ビシッ!!


…ムカ―!!さも当たり前かの様に、人差し指立てながら言われるのがこれ程悔しいなんてッ!!…


『まぁ私にはッ小さな刃物振り回すより、大きな鎌を振り回してる方がずっと楽だし、凄く強いのですよッ!!』

「流石お子様のほら吹き話しはスケールが大きいのだぞッ!!大鎌が楽なんてアホらしいのだぞッ!!どれだけ重いか知らない癖に…。それよりシルバさん、お尋ねしたい事があるのだが…」


…何かほら吹き扱いされた上に、さらっと流されたしッ!!…


「なんです?私の腕前についてですか?」

「うぐッ…」

「あれだけ見られてたら何となく察しが付きますよ。言っておきますが、森の民として狩りに関する技術は粗方身に付けて居ますよ?」ガチャガチャ


シャキンッ!!!!シュトトトトンッ!!

「なっ!!?」

「わっ!!」

『…』


シルバは、先ほどディスタが見せたナイフ投げの数+1を両手で熟して魅せた。それは大道芸さながらに全てが顔の的へと突き刺さっていた。


「ッフッ!!こんな動かない的、適格に当てた所で意味は無いのですがね。体に掠りさえすれば毒が盛れるのですから」

「っくうッ!!…し、シルバさんッ!!オイラと勝負をッ!!」


『おや?上位版見せつけられて火が付きましたね…』

「負けられない意地って奴でしょうか…」


「的当てゲームでもするつもりですか?そんなお遊びで勝利に浸っても意味が無いのですよ」

「お遊び…そんなつもりは…」

「どうせやるなら、狩人らしく狩りで実力を示す。と言うなら受けて立ちますよ?丁度良いですからね」

「丁度良い?」

「いえ、こちらの話しですよ」


『そう言えば稽古がなんたらって話ししてましたね…』

「確かに有りましたね…私、すっかり忘れてました…」


「じゃ、じゃあッ!!オイラは長老に話しを付けてくるのだぞッ!!」タッタッタッタ


「やる気が走る速度に現れてますね…」シュッ!!カチャッ!! シュッ!!カチャッ!!

『本当に分かりやすい奴ですね。所でミルフィちゃんは何してるんですか?』

「あっ!!これは先ほどディスタさんに渡された護身用ナイフで、暇な時は常に触っておけと言われてまして…こうして出し入れの練習をして何時でも身を護れる様にと言われたのですよ」

『無理してやる必要は無いのですよ…』

「無理なんかしてませんよッ!!これもラキュア様を護る為の一歩なのですッ!!」

『み、ミルフィちゃん…』


…私のミルフィちゃんが段々物騒な娘に…


「ミルフィさん、そのナイフ少し貸して下さい」

「えっ!?あ、どうぞ…」

『ちょっ下僕ッ!!それで可笑しな真似でもしたら許さ無いですからねッ!!』

「可笑しな真似はしませんよラキュア様。ミルフィさん見て居て下さいね」カチャカチャ…


ササッ!!シュパッ!! ササッ!!シュパッ!!

『…!!?』

「す、凄いッ!!ナイフが突然出てきましたッ!!」


ササッ!!シュパッ!! ササッ!!シュパッ!!

「どうですか?ミルフィさん。護身用と言っても持って居る事を悟られてはイケないのですよ。こうして思わぬ場所から取り出せてこそ、相手の油断を誘い、返り討ちに出来るのですよ」

「な、成る程ですッ!!」


ササッ!!シュパッ!! ササッ!!シュパッ!!

「他にもこんな場所や、女性であればこういう事も…」

「こ、こんな…///」

「どうせやるならこういった事も練習すると良いですよ。それではお返ししますね」


シュシュッ!!カチャ


…何処ぞのマジックショーですかね…それより何ですかッその胸は…峰不○子戦法ですか?前世で過ごした貧乳人生をバカにしたデモンストレーションですかッ!!全く腹立たしいボディーですよッ!!…


『ミルフィちゃんはそんな破廉恥な事、真似しなくて良いのですよ…』

「…」

「ラ、ラキュア様…///」カチャッ!!



… ――― 遅かったかーッ!! ――― …



消えて飛び出すナイフのマジックショーが終わるとディスタが帰って来た。しかしラキュア達からはその足取りが重く見えて居た。


「帰ってきましたね…」

『何というか行きも帰りも分かりやすいですね…』

「ッふ…話にならんな」


テトテトテト…

「す、すみません…許可を貰う事が出来なかったぞ…」

「何か理由が?」

「スノーウルフが統率を取り始めたから、そんな事で外へ行かす訳には行かないと怒鳴られたぞ…」


…う、うん…翌々考えれば御もっともな理由ですね…そりゃ村の長として許せないよね…


「ならさっさと倒しに行かないとですね。二人とも魔力の方は大丈夫なんでしょ?」

「はい、疲労感は無く成りましたし大分戻ったと思います」

「私も同じですね。魔力の貯蔵自体はまだまだ可能ですが、ゲートの様な多量の魔力は使わ無いので問題無いでしょう」

『うん、そう…なら出発の準備でもそろそろ始めて、近い内に向かいましょうかッ!!』

「はいッ!!」

「お、お前達本当に行く気なのか?特にミルフィさんとチンチクリン…お前達、碌にナイフを使えてなかったぞ…」

「うぐ…」

『私はそんなもの無くても戦えますからねッ!!勿論ミルフィちゃんだってね!!ミルフィちゃんの魔法は凄いんだよ?領主邸の外壁に巨大な穴を開ける程の威力を持った魔法を放てるんだからねッ!!それとチンチクリンじゃないしッ!!』

「ら、ラキュア様…」

「ミルフィさんが!?と言うかお前ら何をやらかして来たんだぞッ!!領主って何処かで戦争でもしてきたのかよッ!!」

「……」

『まぁ…似たような物ですかね…そんな事は置いておいて…』

「どうで有れこんなチビが狩りに向かう事自体無理なのだぞッ!!村の子供達でさえオイラ位しか今は狩りに出されて無いのだぞッ!!ナイフも投げ飛ばせない様な非力なお子様がやれる事など、精々剥ぎ取り位なのだぞッ!!」

「ラキュア様こう見えて凄くお強……………」


――― ゴーン!! ゴーン!! ―――


(((「ひゃっはーッ!!訓練終わりだぜ~!!」)))


わいわいガヤガヤッ

「お前ら~ッ!!湯印を取りにこ~い!!自習する者は時間と器材を紙に書いて俺に寄こせよ~ッ!!」


(((「いぇーいッ!!」)))


「お前達、訓練終わったのだぞッ。これで目的のお風呂に入れるぞ。オイラは湯印貰ってるから先に入って来るのだぞッ」

「うぅ…」

「ラキュア様…ついにこの時が参りましたよ…」


…あの生意気なガキめ…めっちゃボロクソに言ってくれるじゃないですか…これじゃ言い逃げされた気分ですよッ!!でも温泉の時間がやって来たのでここは我慢して、暖かい御湯と共に全てを洗い流すとしますよ…


『悔しいですが行きますよッ!!我等が楽園にッ!!』



ミルフィがラキュアの強さについて語る間際、訓練終了の鐘が鳴ってしまった。

ラキュアは不服な悔しさを押し殺し、温泉施設へと向かったのであった。


ミルフィの訓練内容が固まり、武装訓練の敷地へと移動し始めた頃、それらの光景を遠目で眺めていた者が居た。



ピシュッ!!シュトンッ!! 

「クソックソッ…」ボソ


「ちょっと~~ッ!!ミーミル凄いじゃないッ!!どうしたのよ急にッ!!」


ピシュッ!!シュトンッ!!

「あの泥棒ネコめ…」ボソ


「しかも余所見しながら的の真ん中に当て続ける何てッ!!?信じられないわッ!!?」


ピシュッ!!シュトンッ!!

「私とのマンツーマンレッスンを邪魔しやがって…」ボソ


「これなら弓訓練の卒業も近いわねッ!!」

「絶対に許さないッッ!!!」ギギギギッ!!

「えっ!?」


――― シュトーンッ!! ―――



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