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50話:下僕が下僕になった日


宴が終わり長老の家で寝泊まりする事と成った翌日、簡易的に掃除を終わらせ、眠りに付いていたラキュア達は早朝の鐘の音と共に起き出した。



――― ゴーン!! ゴーン!! ―――


「な、なんだ…」

「何か鳴ってます…ラキュア様、ラキュア様~」

『むにゃむにゅ…ん、何だか懐かしい音です…』

「もう朝の様ですよ。そう言えば掃除は途中でしたね…さぁラキュア様起きましょう…シルバさんもですよ」

「うぐ、身体が硬い…まだ休み足りない…」

「寝るのは構いませんが掃除の後ですよ!!昨日は夜でしたし、換気がまだ出来てないのですからね!!ラキュア様、体を拭くタオルと汚れても構わない動きやすいお洋服などは有りますか?」

『ミルフィちゃんは随分元気だね…ちょっと待ってね~…むにゃむにゃ…』ガサゴソ シュポン!!


ラキュアは眠たげにアイテムポーチからタオルと3人分の衣類を取り出した。


「ささ、ラキュア様、お体を拭いて着替えますよ。シルバさんも自分で拭いて着替えてください」


バサバサ!!シュル!! フキフキッ!!フキフキッ!!バサバサ!!シュル!!


…あぁ流石、お父様の侍女と言った所なのでしょうか…口開けてボーっとしてるだけで私が完成していきます…

…≪そんな事より誰か来るぴょこよ?≫…

…えっ?…


「どうしましたラキュア様?」



タッタッタッタ!!

「お前ら速く起きるのだぞ!!」ガチャ



廊下から足音と共に聞き覚えの有る声が響き、そのまま勢い良くドアが開かれた。



シュルル フキフキッ!!

「…?」

「ふぇぇ!?」

「…クソガキ…」

『ぎやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』シュポン!!



――― ドガ――――ン!!! ―――



「な…に…!?」ガクッ



ドアを勢いで開けたディスタの登場に驚き、素っ裸のラキュアが反射的に大鎌を取り出し振り抜いた。それは衝撃波と成り、余りの光景に固まっていたディスタは、反応する事も無く廊下の壁にめり込んだ。


「ららら!!ラキュア様!!やりすぎですよッ!!」

『そそそ、そんな事言われても不可抗力なのですよッ!!大体ノック無しでレディ―の部屋に入るのがいけないのですよ!!』

「それはそうですが壁にめり込んでますよ!!これ、きっと意識無い奴ですッ!!兎に角早めに支度してしまいましょう!!直ぐに誰か来ちゃいますよ!!」

「私も危うく一撃入れる所だったよ。だが予定した私の一撃よりも遥かに酷いな」


『………』


ラキュア達は急いで支度し、予想通り轟音に引きつけられ長老を含む村人達が、武装状態で部屋まで出迎えてくれた。

彼等はディスタが壁にめり込んだ惨状を見た瞬間凍り付き、壁から降ろした後、こちらへと武器を構えたのだが事情を話す事で警戒が緩み、失神から復帰したディスタの証言により誤解が解けたのである。そして食事の席…



「聞いたぞディスタッ!!宝物庫に手を掛けたらしいじゃねーか!!」バシンッ!!

「痛いぞッ!!何すんだよバルッシュの兄ちゃん!!それに宝物庫ってなんだよッ!!」

「しらばっくれんなよッ!!美人の寝室に決まってんだろッ!!それにしても傑作だなッ!!」

「オイラは見たくて覗いた訳じゃないんだぞっ!!」


ギリッ!!

すると遠くの席から3人の女性もといラキュア達の視線がディスタへと貫いていた。


「ひぃぃぃ……」

「おいバルッシュ、その辺にしてやれ。さっきまでその話題で沈み切ってんだからなッ!!」

「ウグっ!!」

「ハハハッ!!まぁそうだろうなッ!!だが羨ましい限りだぜ、これが俺達みたいな成人なら殺されても文句はいえねぇってもんだぜッ!!」

「ほれほれ、そろそろ席に付かんかい。食事の席じゃぞ」

「へ~い。それじゃ今後も期待してるぜッ」バシンッ!!

「っくっそ~!!どいつもコイツも言いたい放題ッ!!」

「ほれ、ディスタもそろそろ完食してしまいなさい。食器の汚れが取れなくなるじゃろうに」

「へ~い…」


ガシャガシャ!!カッカッカ!!カランカラン!!グビッグビッゴンッ!!


「どうじゃ御口には合ってるかの?と言っても昨日の残り物じゃがな」

「ええ、美味しい限りですッ!!」

「それにしても朝だと言うのに賑やかですね」

「いつもこんなもんじゃよ」

『と言う事はいつも村の皆でご飯を?』

「そうじゃな、アタシ達は皆家族同然だからの」

「それ長老さんも言ってましたよね」

「ホッホッホッ!!まぁアイツが一番この村を愛しているからのう!!それでアンタ達はこれからどうするんだい?今日は余り動かない方が良いと思うがの」


御婆さんがそう言いながら視線をラキュア達の外へと向けて居た。


ジーーーーーッ!!


そしてラキュア達もその視線の先へと顔を振り向く。


クルッササッ!!

「…」

「…」

『…』


「ホッホッホッ!!皆、気になってしょうがないのだろうなッ!!」

『なんだかムズ痒いですよ…』

「無理も無いのう」

「客人ですら珍しいのに三人美人じゃからのうッ!!」

「それにあのディスタを朝から気絶させちまうんだからなッ」

「ハハハ…」

「アレは奴が悪い」

「分かっておる分かっておるッ!!本当は好きな席で構わないのだがの、皆この有様だからの、老い耄れ達の席と一緒になってしまって悪いのう」

『そ、それは全然構いません…寧ろ感謝ですよ…』

「まぁ今日は終始この調子じゃろうな、外からの視線が痛いだろうから大人しくして置くのが良いと思うぞ」

「そ、そうですね…私達、お部屋の片づけの途中だったので丁度良かったと思います」

「そうかそうか…あぁそうじゃ使い手の者だが、皆あの調子じゃ。このままディスタを使わせても良いかのう?」

「…」

「…どうでしょうかラキュア様」

『…まぁ流石に懲りたと思いますので…』

「ホッホッホッ!!そうじゃろうなッ!!」

「ならディスタをワシの庭に居させて置くから何か有れば呼ぶと言い」

『あぁ…はい…』

「まぁアイツは狩りの腕も立つからの、居ない事もあるが、その時はワシの部屋にでもきなされ」

「畏まりました」

「ふ~ん、あのガキ狩りが出来るんだね」

「ああ見えて大人よりも頼りになるのじゃよ、ジョイスと調査に向かわせたのもそれが理由じゃ」

『ふ~ん』もぐもぐ

「もし本当に討伐へ行くと言うのであれば…奴に何か教わると良いぞ」

「…」

「確かに私達には必要かもしれませんね…」

『えぇ…?』

「ほら、私の魔法とか当たらなかったじゃないですか!!あのままじゃ役立たずですし、私も何かお役に立ちたいのですよ!!」

『むー…ミルフィちゃんがそこまでしたいなら…』

「まぁ私は遠慮するがな」

「ほぉ、やはり森の民だからかのう」

「まぁそれも有る」

「ならディスタが不甲斐無い様なら逆に稽古でもつけて貰えると嬉しいのう」

「面倒ですね」

『とか言いながら実力で負けるのが怖いんですね』もぐもぐ

「ック…良いですよ、その時は私が見てあげましょうか」

「ほほ、コレは有りがたいのうッ!!」

「私の着替えを覗いた罪と一緒になッ!!」

「ホッホッホッ!!くわばらくわばらッ!!」


それと同時に異変を感じた者が一人居た。


ゾワッ!!

「ッッッ!!!?」


「どうしたディスタ…顔色が悪いぞ?」

「あ、いや…何故か今寒気が…」

「ハハハッ!!まだ本調子じゃないんじゃねーか?仕方ねーな、お前は今日の練習休んでおきなッ!!俺が伝えて置いてやるからよ」

「あ、ありがとうバルッシュ兄ちゃん…そうするぞ、とうちゃんにも宜しく頼むぞ」

「あぁ任せておけ!!」バシンッ!!

「ウグッ!!」

「おっとすまんすまん!!」



「それでは私達はこれで」

「今日はゆっくりの~」

「さぁラキュア様、お掃除始めますよ」

『ん、まってこのプルプルデザートがまだ…』ジュルジュル!!

「もうッラキュア様ったらッ!!ホント可愛いですよ」

「私は先に戻りますよ、ラキュア様」


『 b 』ビシッ!! 


「ホッホッホ!!本当に変わっているのう」

「そうじゃろうそうじゃろう」

「この歳だと言うのに見て居て飽きぬ愛らしさじゃ」


ラキュアはデザートにがっつきながら拳でグッドサインを出し、先に戻るシルバを見送った。

暫くして一向は部屋に戻り、予定通り部屋の片づけを開始し始めた。



バサッ!!バサッ!!キュッキュ!!

「ラキュア様~駄目ですよ~汚れが残ってますよ?」

『ふぇぇぇぇぇ!!』はぁはぁ

「シルバさんッ!!なんで毎回角の汚れを拭かないんですか!!」

「…細かすぎないか…ずっと暮らす訳じゃないでしょうに…」

『屈辱ですがそれには同意ですよ…』

「お部屋の汚れは心の汚れなのですよ!!ラキュア様はもっとピュアで無くてはなりませんッ!!今でもピュアですがね///」

『だったら良いじゃないですか~…』

「ここで許したらズルズルと癖が残ってしまいます!!ですから許しません!!ほらシルバさん!!手が止まってますよ!!」

「うぐぐ…」

『それにしても倉庫にしては生活感ある部屋ですね…』

「絵や標本も飾ってありますし誰かの部屋だったのかもしれませんね…綺麗に片付ければ気持ちよく寝られるお部屋になると思いますよ?」

「と言われても…このペースでは…」

『さ、先が長いのですよ…』


主任とパートの関係の様な、厳しい視線にビクつかせながらも、ラキュアとシルバは肩を揃えて真面目に作業に取り掛かっていた。


「……。ラキュア様、この娘は何なんだ…何故こんなハウスキーパー見たいな事を得意げに出来るんだ…」

『え、それは…私の家で働く侍女でしたから…』キュッキュ

「…ラキュア様ってまさか…本当の良い所育ちですか?」ふきふき…

『この下僕は何を今更な事聞いているんですかね…私の家は伯爵家だったらしいですよ』ふーふー!!

「は、伯爵!?…でも、だったらしいよとは…」サササ

『ハーバルの街に着く際、色々有ったのですよ…。何ですかその眼は…』ガチャガチャ

「え、いやぁ…私の様に弱みに付け込んだ、悪徳非道な外道一家の幼女かと…」ガサガサ

『酷い偏見ですね…罰として私のこの額縁の角拭いてくださいね』ヒョイ!!

「そ、そんな…なぜ私がこの様な…」ふきふき…


「おやぁ?ラキュア様…今シルバさんに…」

「ミルフィ主任、今現在ラキュア様に額縁を…」ギギギギッ!!

『な、何の事でしょうか主任!!私達は強力をしているだけでごじゃいましゅ!!』ニギニギー!!

「いだいでしゅ、らぎゅあしゃま……ほっぺはやめでぐだしゃいっぃ…」

「いつからそんな仲良しに成ったんでしょうかね?まぁ良いでしょう…」

「良く無いですよ…」

『下僕は黙ってください…』グニッ!!

「何故私がこんな目に…」ボソ


そうこうしている内に、細かい汚れ作業が終わっていた。だがミルフィは換気する窓が一つしかない事に悩んでいた。


「ん~…」

『どうしたのミルフィちゃん?』

「そのですね…換気をしたいのですが、このお部屋は窓が一つしか無いのですよ…」

「それがどうしたと言うのだよ。開けて置けばどうにでもなるだろう」

「何を言ってるんですかシルバさんは、窓が一つしかないと、風が入って来るだけで、埃が出ていく出口が無く、お部屋の中でグルグルと漂い続けるだけなのですよ?」

「何を言ってるか全くわからないぞ…」


…窓を開けても埃を逃がせないから困っていると?メイドの鏡というべきなのでしょうが…細かすぎですよミルフィちゃん…ここお屋敷じゃないのに…


「要するに、外へ逃がす為の風を送り込めば良いのだな?」

「そういう事に成りますが…見ての通り風が入って来るだけなのですよ…」

「はぁ…仕方ないですね…私は早く疲れを取りたいのです。早く終わらせる為に少し力を貸しましょうか…」

『ん、ちから?』

「二人とも飾りなどは箱に纏めて、一度部屋から出て下さいね~」

『下僕の指図など受けぬ!!』

「い、良いから荷物を纏めて行きましょうラキュア様!!何かする見たいですので…」

『およよよよ…』


ミルフィに肩を押されドアの外へと連れ出された後、二人はドアの入口から顔を覗いたままシルバの様子を観察していると、異変は直ぐに起きた。

優しい緑色の光と共に、お部屋内部から不思議と風が流れ込み、ラキュアの白くて美しい髪がはためく様に靡きだした。



――― ヒュー!! ―――



「うむ…制御が少し難しいな…やはりこの土地には精霊が少ないか…」

「これは…魔法ッ!!?」

『うぐぐッ!!』


シルバは自身の風魔法によりドア付近から窓へと向けて風を送り込んでいた。



――― ヒュー… ―――



「まぁこんな所ですかね。満足ですか?主任」

「え…あ、はい…有り難う御座い…ました…」ビクッ

『なんか地味でしたけど、あれって魔法なの?』

「地味って…力入れたら部屋の物全て吹き飛びますよ…加減したんですよ」

「す、凄いです…本当に無詠唱で魔法を放つなんて…」

『み、ミルフィちゃん!!?』

「フッフッフ!!初見ならこれが普通の反応と言うモノですよラキュア様」

「ラキュア様…本当に凄い事なのですよ…無詠唱と言うのは…今までの常識を覆す恐ろしく便利で凶悪な事なのですよ…」ビクッビクッ

『凶悪って…』

「ラキュア様は魔法に関してはカラッキシの様ですか?それではこの先大変ですよ?」

『下僕の癖にウザく感じてきましたよ…』

「ラキュア様…例えば私が炎の魔法で攻撃するとしましょう。その場合詠唱と言う行為を必要とします。それは相手に悟らるだけで簡単に対応されてしまうモノなのです。例えばあの時の兎さんの様に…」

「だが無詠唱で有ればこの様に」パチッ


―――   ボォン!!   ―――


「いつでも自在に火を出し」パチッ


―――  ボアァ!! ボガン!!  ―――


「いつでも奇襲が可能なのですよ」



シルバは見せつける様に指を鳴らすと同時に小さな炎を指の真上に放火し、今度は開けっ放しの窓の向こうへと指先を向け指を鳴らすと、直径5㎝程の炎の球体が出現し、窓の外で小さく爆発した。


「ラキュア様…本物ですよ…こんな…」ビクビク


パコンッ!!

「い、痛ッ!!!」

『ミルフィちゃんが怯えてるじゃないですか!!下僕の癖に生意気ですよ!!』

「ぐぬぬッ!!」

「…ラキュア様は…怖く…ないのですか?こんな間近に殺戮者が居るのに…」

『怖い?殺戮者?』

「あ……」

「っふ…おチビさんは結構抜けてますね。流石良い所のお嬢さんと言うべきなのですかね」

『下僕の癖に嫌味ですか!!』

「まぁ折角なのでね、無知なお嬢様育ちのおチビさんには教えてあげますか…。エレメンタラーとは名誉の称号で有りならがら不名誉の称号でもあるのですよ。エレメンタラーと聞いて驚くのは只凄いからでは無く、私が嘗て…この力で沢山を葬ったからです。この称号は魔族からは称えられ、人族からは恐れられる名誉なのです。流石に置かれてる状況が分かって来たんじゃないでしょうか?私がその気になれば何時だって貴女達を…」


ゴツンッ!!


「ウグッ!!またしてもッ……!!」

『ハイハイ分かりましたッ!!下僕は殺戮者だったのですね…。なら今後、私の前では辞めて下さいね?ミルフィちゃんが怖がっちゃうじゃないですか』

「ら、ラキュア様…!?」

『良いですかミルフィちゃん。この人は、今と成っては私の下僕なのですよ?』

「ほぉ…この後に及んでまだそんな事言うなんてね…話を聞いて居ましたか?私は何時でも…」

『余り調子に乗らないでくださいね。下僕の分際で…何時でも殺せるのは私も同じ事なのですよ…』

「なに寝言言ってるんですかね」

『それだけ凄い人なのにまだ分からないのですか…』しゅるる…

「…」


『 確かまだ 見せて居ませんでしたよね? 私の 左眼を 』



―――  ぬるぅ……パチィィ!!!  ―――


「ッ!!?」


―――  グォォォォン!!  ―――



「う、ぐぁッ!!な、に…を…!!!?」

『あの時はミルフィちゃんを人質に取られてましたが、今はそうでは無いですからねッ!!』

「ら、ラキュア様!!」

『あ、良かった!!やっぱりミルフィちゃんは平気なのねッ!!』

「ラキュア様…あまり無茶はしないで下さい…。もし、私の様にシルバさんも動けて居れば…」

 

『 …………はッ!!!! 』


…確かに!!そんな事微塵も考えて無かったですよッ!!あれ?もし動けてたら私詰んでた?…


『み、ミルフィちゃんごめん!!で、でもッいつかこうでもしないと絶対危なかったと思う!!』

「…ご…けな…い…くそッ…」

『さて…下僕はオイタが過ぎた様ですね…自分の立場分かってますか?』


「……」ゴクリッ!!


『 …私、アナタを何時でも殺せるのよ… 』シュポン!!


――― ガシャン!!ギギギギッ!! ―――


ポタッ… ポタッ… 


ラキュアは開眼した事により、シルバの動きが停止し身動きの取れないシルバの首元に、大鎌の鋭い刃先でゆっくりと浅い傷を付けた。


『さあ、得意の無詠唱とやらでこの状況を打破してみますか?でも、その時には下僕の首は落ちてると思いますよ?だって私、この大鎌から手を放すだけでアナタを殺せるのだもの…何でも斬れますからね、大鎌が落ちる重力で勝手に首が落ちますね…フフフッ!!』


「…グッ!!」

『さて、私とここで殺り合うか、下僕として生きるか決めますか?もし戦うなら何時でも好きに行動して下さい。魔法を打つなりもがくなり…但しその瞬間…。もし、下僕として降伏するので有れば目を深く閉じてくださいね?考える時間欲しいですか?』


ラキュアは脅迫する様に、シルバに向けて一方的な命のやり取りを吹きかけた。

ラキュアを仕留めつつ、首元の大鎌から逃げ出す事が無詠唱だけで可能なのか…。その様な自分の命を賭けてまで試す博打に、シルバは乗る事は無かった。言われるがまま、悩む事無くシルバは深く目を閉じた。


「…」

「…」

『フフッ!!これで下僕は下僕ですねッ!!もういいですよ』シュルル シュポン!!


そう言ってラキュアは眼帯を付け直し、大鎌を仕舞った。


「はぁ…はぁ…何て事だ…この私が…」

『もうバカな事は考えないでくださいね?次はその首貰いますからね…』

「ッチ…幼女の癖になんて規格外だ…これじゃあまるで…まるで!?…まさか…この娘が魔王!?」

「………」


…アチャー!!そう言えば、こうならない為にミルフィちゃんが頑張ってくれてたんだった…

…何て事だ私よ!!ミルフィちゃん本当にごめんおッ!!…


『ササ―何の事かなーッ!?というか、もう私の下僕だしーそんなのはもう関係ないよね?』

「ウグッ!!ら、ラキュア様ッ!!貴方は次代の魔王なのですか!!?」

『次代の魔王?なんですかそれ?私がそんな事しる訳無いじゃないですか、それに私は魔王より勇者に成りたいのですよ!!魔王なんて知りませんよッ!!』

「魔王で無く勇者!?魔族が勇者!!?ふふふ…ふふふふッ!!」

「ラキュア様…」


((「ふふふふッ!!ハハハハハッ!!!!!」))


…なんか壊れだしましたね…


ダダダダダダダ!!

「ど、ドアが開いている!?…何が有ったんだぞ!!凄い風の音と小さな爆発の音が聞こえたぞ!!しかも途中から笑い声が……」


「…」

『…』

「既にドアが開いているのだから覗きじゃないのだぞ!!勘違いするんじゃないぞ!!」


…なんですかその、『勘違いしないでよね!!』みたいな慌てぶり…何処ぞのヒロインなのですか…


『はいはい分かりました分かりました…ッコチラは何でもないですよ…』

「ほ、本当なのか!?」


((「あはははははははははははッ!!!」))


「どう見ても可笑しいぞ!?」

「…」


シュポン!! 

『…ていッ☆ミ』


――― ガツンッ!! ―――


「うぐふぇッ!!」バタンッ!!


「え、今どこからそれを…」

『そんな事は気にしなくて良いのですよ!!それよりちょっと手伝って下さい。妬ましいナイスバデーのお姉さんを寝かし浸けるので…』

「…そもそもなぜ気絶させたのだ…」

『仕方ないのですッ!!さぁミルフィちゃんも!!』

「は、はいッ!!」

「あ、余り村で変な事するんじゃないぞッ!!」



何処か可笑しくなったシルバを物理的に静め、これ以上の騒ぎになる事は無かった。

シルバが起きた時、再び笑い茸の様な症状になるのかと不安に思ったラキュア達で有ったが、その心配は無用だったようだ。しかし他の何かが可笑しくなってい

『下僕~掃除で肩がこったのですよ~』

「肩ですね?それではマッサージを…」ササッ!!

『えッ!?』

「…」


『下僕~あの本届かないのですよ~』

「あの本ですね?はい、どうぞコチラですラキュア様」

『えぇッ!?』

「…」


『下僕~』

「はいどうぞ」

「…」


「下僕~!!」

「はいどうぞ」

「…」



(( 『なにこれッ!!気持ち悪ッ!!!!!』 ))



その日、下僕が下僕となった。

そして、ラキュア達にはその理由が全く分から無いので有った。


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