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47話:昇り降りは辛い


雪山を駆ける二人の姿があった。しかし、その速度はとても速いとは呼べなかった。


「ッグ!!」

「とうちゃん!!とうちゃん!!」

「前を向くんだ!!転んだら追い付かれるぞ!!」

「でもとうちゃんのその脚じゃ!!」

「その時は私が囮になれる。お前が逃げれる時間が稼げる」

「そんな事死んでも嫌だよ!!だったらオイラも!!」

「馬鹿な事を言うな!!お前だけでも生きて帰り、村の者に報告するんだ」

「それでも!!」


ササッ!!ワオーーーーン!!


「っな!!先回りされた!?」

「とうちゃん!!」

「ディスタ!!横に走れ!!」

「でもそっちは村じゃ…」

「良いから早く!!………!!?」

「とうちゃん?」

「何て事だ…なら反対側へ!!

「とうちゃん…こっちも…」


タタタタ!!ワォーーーン!!

「と、とうちゃん後ろ!!」

「ックソ!!囲まれてしまったか…すまないディスタ、この数じゃお前を守れそうに無い…。私達は此処で…」


囲まれた二人に向かいゆっくりと近付くウルフ達。急ぐ必要は無い、逃げ場など無いのだから。このままジックリと噛み殺し餌となるのだから。しかし…


ズッパァ!!ズササッ!!ドタン!!!!!!!!ドタン!!!!!!!!!

「っえ!?」

「な、なんだこの音は!!」


ワオーーーーン!!スタタタタタ!!

「とうちゃん!!ウルフ達が!!」

「あの音に驚いて逃げたのか!?」

「とうちゃん!!オイラ達…」

「そうとは言い切れん…兎に角止血して直ぐ動くよ。それまでじっとしてなさい」

「分かったよ!!オイラも手伝うよ」


二人はその場で応急処置に取り掛かった。しかし、その背後からは迫る者が…


――――――――――――――――――――――



山に囲まれ引き返す事も出来ないラキュア達は、雪山を昇りシルバの目的地である城へと向かう事になった。

ラキュアの相棒ことノワールに備わった感知能力の御かげでラキュア達3人の雪山を昇るペースは上り順調に進んでいた。


…≪そこ、凍ってるぴょこ≫…

『この辺凍ってるらしいです』


…≪そこ、崩れそうだぴょこ≫…

『この辺崩れそうなので他行きましょう』


…≪そこの木の裏、何かいるぴょこ≫…

『木の裏に何か居るってさ』

「何かって何ですか!!」

「大丈夫でしょうか…」


ササッ!!ピョン!!

『あれって野兎!?』

「肉だ肉!!捕まえましょうラキュア様!!」


…この下僕、随分と様呼びが馴染みましたね…と言うかウサギさん見て肉って…


『私、狩り何てした事が…それに兎が可哀想…』

「ラキュア様何をいってるんですか…あれほど好物だったのに…あっ…」


…たはー!!ラキュアちゃん兎肉好きだったのか―!!ごめんね兎さん、私は君を救えそうにないわ…


『そ、そうだったんだね!!よ、よーし捕まえちゃおーかな!!』

「す、すみませんラキュア様…」

「魔力は温存しておきたい…弓でもアレがよいのですが」

『弓ですか~…』


…あるには有るけど渡したくないですね…立派な勇者の弓なんで…


『ミルフィちゃん魔法行ける?』

「つかえる事には使えますが…的が…」

「的?」

『よーしやって見よ―!!』

「うぅ…当たるかな…我が炎 全てを穿ち駆け貫けよ【炎槍(フレイム ランサー)】」


体をモジモジさせながらも詠唱に入り、魔法を放ったミルフィ


シューン!!ボボボボ!!

ピクピクッ!!ピョン!!


しかし兎の耳に反応し避けられてしまう


『たは~避けられましたね』

「詠唱も遅い…大丈夫なのかこの魔王は…」ボソ

「うぅ…だから自信なかったんですよ!!あぁ逃げていきます!!」

『ゥぐ!!やもえない!!ぴょこちゃんアターック!!』シュポン!!ぶぉぉん!!


ズッパァ!!ズササッ!!!!!!!ドタンドタン!!!!!!!

「ひぃぃ!!木が…」

「なんて凶悪な鎌なんだ…まさか斬撃波まで飛ばすなんて…」

『う、兎さんどこですか…』

「木が倒れ過ぎて兎を探すのが困難です」


…ねぇぴょこちゃん、兎どこか分かる?…

…≪分かるぴょこ。けど…≫…

…けど?…

…≪木の下敷きだぴょこ…≫…

…えぇ…


『き、木の下敷きだそうです…』

「に、肉がぁ…」

「木を退けて取りにかかりますか?」

「手間が掛かりすぎると思うんですがな…」

『潰れた兎なんて扱いたくないですよ…諦めて行きましょうか』


色々飛び散ってペチャンコな兎を諦めたラキュア達は更に歩き出す。


…≪奥の方にも反応があるぴょこ。でも遠ざかって行くぴょこ≫…

『この先にまだ反応がある見たいですよ?徐々に離れて行く反応ですが…。進行方向ですし向かいます?』

「進むしかないですからね」

「私はラキュア様にお任せします!!」

『なら行くしか無いよね!!もしかしたらまた兎さんかも!!』


兎を取り損ねたラキュア達は、肉を求めて意気揚々とそのまま奥地へとに進む。


…≪離れて行く反応とその場に留まる反応を確認だぴょこ≫…

…それってどういう状況なの?…

…≪そこまでは分からないぴょこ≫…

…ふ~ん、まぁいっか!!…

…≪そろそろ見えてくるぴょこ≫…

…あ、本当だ…


「何か見えてきましたよ?」

『ん~なんだかモフモフしたものがみえてきましてね…』

「ク、クマさん!?」


…え、クマですかい!?…


「クマにしては小さい背中だな…」

『小熊って事ですかね!?私達逃げなくて良いんですか?』

「あの程度のクマならどうと言う事は無いと思いますが」

『そ、そうなの!?』


…私の世界からしたら小熊でも結構怖いんだけどなぁ。やっぱり魔法とか有ると危険視レベルが違うのかな…


「ラキュア様!!向こうもコチラに気が付きましたよ‼?しかも、さらに小さいモフモフが…」


ササッ!!タタタタタ!!

「これ以上来るな!!」

「ディスタ!!よせ!!」

「とうちゃんは早く止血して!!オイラが時間を稼ぐから!!それにコイツ等弱そう」



「…」

「…」

『…』


「とうちゃん見てよ!!コイツ等オイラの威嚇でビビってる!!これなら!!」

「それはちょっと違う気がするが…」


コソコソ

『モフモフアニマルと思いきや毛皮を被った人間じゃないですか!!』

「親子って所か…」

「怪我してるみたいですよ?」

「敵意を持っている様だが…対話でもするか?」

『敵意ですか…取りあえず声を掛けまてみましょう…』


ついつい小声で話し出す3人。そしてラキュアが彼等に声を掛けた。


『あー、わたしたちはーあやしいものじゃーありませんー』

「あ、あからさまですね…」

「全くですね」


…何が言いたいんですかね!!この二人は!!…


「どう考えても怪しいに決まってる!!良いから近寄るな!!」

「ディスタ、言葉を選べ!!逆上させたらどうする!!」

「と、とうちゃん…」

『その方、怪我をしているんですか?安いですが塗り薬いります?』

「近寄るなって言ってるだろ!!そんなモノ信じられるか!!毒かもしれないのに!!」

「ディスタ…」

「いくらとうちゃんでも、見ず知らずの怪しい奴からモノなんか受け取らせないよ!!」


「頑固なガキなこった」

「信じて貰えそうも無いですね…」

『仕方ないですね…暴れられても困るのでアレを使いますよ…』

「アレとは一体…」

「ラキュア様!?まさか眼を!!」

『そのまさかです!!開け!!我が魔眼よ!!』バサッ!!しゅる!!パチィ!!


グォォォォン!!


…≪そのダサい台詞、言う必要あるぴょこ?≫…

…だッ!!ダサいだとぉぉぉ!!私のキメ台詞なのよ!!…

…≪そ、そうなのかぴょこ…も、もう何も言わないぴょこ…好きにするぴょこ≫…


「グッゥ!!」

「と、とう…ちゃ…ん!!う、動け…ない!!」

『は~い大人しくしてて下さいね~痛くないですからね~少しチクっとするだけですよ~』

「え、ラキュア様チクッとするんですか?」

『あ、チクっとはしませんね!!ちょっと言ってみたかっただけですね、ハイ…』

「何を言っているんだこのチ…ラキュア様は…」

『どれどれ…ふむふむ…所々噛まれた跡が有りますね…』

「何かに襲われたのか?」

「離れた反応が襲撃者と言う事でしょうか」

『取りあえず止血剤と消毒薬と気休め程度らしい安いポーション飲ませますね~』シュポン!!


「おい!!やめろ!!とうちゃんから離れろ!!うぐぐ!!」

「お前達は一体…まさか本当に助けて…」

『私は最初からそのつもりなんですがね…』ぬりぬり


「うがぁぁぁー!!」


「とうちゃん!!ぐぬぬ!!おまえ達とうちゃんに何を~!!」

「すまんディスタ…すこし沁みただけだ…」

「と、とうちゃん…」


…すこしでその叫び声って…大丈夫かなこの薬…いやまぁヴィンティーニ商会で買ったモノだけどさ…


『ミルフィちゃん包帯でグルグル巻きに出来る?』

「グルグル巻きって…」

「出来ます!!」

『なら渡しますね!!』シュポン!!


ラキュアがポーチから包帯を取り出し、それを手渡されたミルフィが止血と消毒を施した。それが終えた後、傷を包帯で巻き始めた。そしてラキュアは続けて問いかけた。


『は~いお坊ちゃんは痛い所有りますか~』

「お、お坊ちゃんだと!!オイラより明らかに年下な癖に!!」

「ディスタ、その様子だと傷は無いんだな?」

「だ、大丈夫…とうちゃんが庇ってくれたから…」

「そうか、それなら良かった…まさか本当に助けてくれるとはな」

『ふぅ…まぁそろそろ良いかな?』パチッしゅる!!バサァ


強制的に身動きを封じモフモフ男の応急処置を済ませた後、ラキュアは眼帯を付け直し防寒具のフード着込んだ。


「おっとっと、いったいどうなってんだ…」

「か、身体が…動くよ!?」

『もう動けますね!!さて私達は行きますか!!』

「え、行くんですかラキュア様!!」

『え?』

「普通は何が有ったか聞く所だと思うのですが…」

「この雪山で何が起きたのかを聞いておけばこの先の危険に備えれるかもしれないしな…」


…ミルフィちゃんにシルバまでそう言うとは…まぁ何に襲われたのか聞いておいた方がいいのか…


『二人が言うなら…一体何が有ったんですか?良ければ教えて頂けると…』

「そうですね…隠す様な事でも無いですし良いですよ。と言ってもスノーウルフの群れに襲われていただけですがね」

「だけって…そのウルフ達と戦い追い払ったと言う事ですか」

「ち、違う…とうちゃんとオイラは追い込まれていた所に何かが倒れる様な大きな音が山に響いて…それでウルフ達が驚いて逃げ去ったんだ…」

「ちょうど貴女達が来た方角からですね。命拾いをしました。そこで私達は怪我の手当ての為に即時その場で対応していたのですが、後ろから貴女達が現れて」

『盗賊か何か危ない輩と思い込みその子が飛び出したと?』

「お恥ずかしながらにそう言う事になります」

「ふむ…倒れる様な大きな音か…」

「どう考えてもラキュア様のあの薙ぎ倒しですよね…」

『わ、私か!!』

「そんな音がしていたら私達も気が付いていただろうに…」

「方角が私達の来た方と言いましたしね」


…要するに、私の 兎さんプレス がウルフ達を驚かせ助かったと?そういう事ですか!!…


「やはり貴女達があの音を出したのですね…御かげで命拾いをしました。ほらディスタもお礼を言いなさい」

「と、とうちゃん!!?こんな弱そうな女、それにチビがやったなんて信じるの!!?」

「ディスタ…信じられないのは分かるが、私達はこうして助かったし、手当てもして貰った。感謝は必要ですよ」


…あなたも信じられないんですね…女性三人ですもんね、確かにそうですね。それよりコイツ生意気ですよ!!…


「ぐぬぬ…とうちゃんを…助けてくれて…ありがとうな…」

『ぐふふ!!よく言えまちたねぇ~えらいで~す!!その生意気な態度もチャラにしてあげましゅよ!!』

「とうちゃんコイツ!!」

「ラキュア様…」

「子供ではあるが大人げないと言いうか…どうしたらこう育つんだ…」

『子供は素直なのが一番なんですよ?』

「ここまで感情が素直なのもどうかと思うけどね…」

「ラキュア様…素直に煽っても子供らしくないですよ…」

「そうだそうだ―!!年下の癖にオイラより生意気だぞ!!」


…ぐぬぬ!!調子に乗りよって!!…


「ディスタが一番悪いんですよ。自分より小さな子にムキになってどうするんですか…。すみません…息子が…所で貴方達は何故こんな場所に?」

『何故と聞かれても…成り行きとしか…』

「全く分からない土地でして…」

「まさか遭難ですか?」

「に、似たようなモノですね…向かう方向は分かってるんですがね」チラ

「あの山昇るつもりですか!?流石に無茶だと思いますよ…」

「ここは雪山だけどあの先は氷山だぞ。そんな服と道具も無しじゃ到底無理だね!!」

『えぇ…そんな事言われてもなぁ…どうするんですか下僕!!無理と言われましたよ!!』

「原住民に無理と言われたら無理なんだろうな…だが山を越えなくては…」

「超えるだけなら回り道していけばいいさ。私達の村に道が続いているので、それに沿って行けば問題無く行ける筈さ」

「こんな雪山に村があるんですか?」

「小さいが麓へ行けばちゃんとあるぞ!!オイラ達は狩りの為に此処まで登って来たんだけどな!!」

『そして狩られそうになったと…』

「とうちゃんコイツ!!」

「ハハハ…事実ですので仕方が無いです。折角ですので村へ案内してあげましょうか」

『それは有りがたいです!!良いよね?ミルフィちゃん』

「私はラキュア様に付いていく次第ですので!!それに山登りは…」

「そうですね、どの道しがみ付いてでもその村に付いていく様でしたしね」

『よ~し!!そうと決まればレッツゴー!!』


ラキュア達は雪山で出会った二人の親子の背中を追い、彼等の村へと行く事になった。

その足取りはとても遅かった。


ゼェハァゼェハァ


『山を登ったと思ったら今度は降りるんですね…』

「とうちゃん…このチビ当たり前な事いってるぞ」

「彼女達の様子を見ると言いたくなるのも仕方が無いと思いますね…」


グサッ!!グサッ!!


「と言っても老人にしか見えないぞ?こんなんじゃウルフ達が来たら直ぐ食われちゃうぞ!!」

『ふふふ、大丈夫ですよ、私のこの大鎌が有ればですね…ハァハァ…ちょちょいのちょい…なんですからね』グサッ!!グサッ!!

「そんな事言っても全然頼りないぞ!!それに…」


ゼェハァゼェハァ

「ま、まだなのか…村は…」

「脚の筋肉がピクピクしてます…」


「コイツ等まで!!」

「いやぁ、まさか下山するのに時間が掛かるとは私も思いませんでした。しかし恩人だからね、危なかったら支えてあげなさい」

「こ、こんな弱そうな奴等が恩人だなんて、信じられるか~!!!!」


老人もとい、三人の女性をサポートする少年の叫び声が山に轟いていた。

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