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43話:若造組vs老い耄れ組【終】


ミルフィを追うクリフの背後からラキュアの斬撃波が放たれ、今まで回避してきたクリフは脇腹に傷を負ってしまった。膝を付くクリフに歩寄るラキュアと、ラキュアを迎えに来たメイビス達がその時合流をする。だが、間抜けなやり取りにより隠していた正体がクリフにばれてしまった。しかし、その御かげかクリフの戦意を折る事が出来た一向は傷を抑えるクリフと共に戦闘中のカインの元へと向かったのである。


そして話しは【2】の終盤から始まる。


「おい…ジェミルニア、ワシ等は手を引くぞ」

「何を言っているクリフ!!聖騎士の誇りで有るお前が魔族を逃がしてどうする!!ワシが無理でもお前なら!!」

「グフ…そうは言ってもな…流石にアレは止められん…」

「ク、クリフ…なんだその血は…」

「ハハハ…まさかアレがこんな所に有るとはな…」

「何を言ってるかさっぱり分からんぞクリフ!!」

「それにだ、あの子は切れぬ…」

「あ、アレは人質になったお嬢ちゃんなのか!?」

「ラ、ラキュアさん!!?」



にょき!!


クリフが振り向く先、瓦礫の山頂から大鎌を握ったラキュアが姿の現れた。そしてその真下からソマリと、横からメイビスが顔を出し、瓦礫を降りて来た。


「ラキュにゃんそろそろ良いかにゃ?」

『ありがとうソマリ!!これで汚れずにすみましたよ!!』

≪大鎌を持ってよじ登るのは大変そうだったしな≫

「むしろ私が感謝だにゃ!!ラキュにゃんとの思いでの1ページがまた増えたにゃ!!」


瓦礫を超えたソマリは肩車で乗せていたラキュアを降ろす。


≪カイン、良く耐えたな≫

「ラキュアさんの御かげで…それよりメイビス様、魔族達は?」

≪彼等なら今頃馬車に揺られているさ》


その言葉にジェミルニアが反応した


「ま、まさか本当か!!?クリフを凌いで逃げ切ったと言うのか!!?」

「ん~どうなんだにゃぁ?」

≪私達はつい先程この子と合流したからな。それよりクリフ、その傷≫

「あぁ分かっている…部下に治してもらうさ…」

「まさかクリフに傷を負わせる程だったとは…だがそんな力量の奴居たのか?」

「いや、そのだな…この傷は…」


「…」チラ!!

「…」チラ!!

≪…≫チラ!!


…あちゃ~そんなに見ないで頂きたいですよ!!確かにやったのは私ですが…


『ちょっとコッチ見ないで下さいよ!!そこは知らない振りして別の方角を向く所でしょ!!』

《すまんつい》

「大体の事はラキュアさんが絡んでますからね…」

「これは本能と言うモノだにゃ」


「その子がやったとでも言うのかね…流石に冗談がキツイわい。だがその眼…人族とは思えぬな。それに分不相応な鎌…何者じゃ 」

「ジェミルニア…その子はワシの曾姪孫、アルカードの子供だ」

「アルカードの子供だと!?今王国が追っていると言う!?なぜ此処に!!」

「ワシにも良く分からん。だが勇者の追撃を逃れ此処まで逃げて来たのだろう…」

「っく!!寄りにもよってこんな時に!!クリフ、恨むなよ。魔族は逃がしたがその子は此処でっ!!!」ガチャン!!


ジェミルニアが大槌をラキュアに向かい構える。しかしその間を3人が割って入った。


「駄目だにゃ!!」

「行かせませんよ」シャキン!!

≪やれやれ≫ササ


そして更にクリフが言う


「辞めておけジェミルニア。先程も言ったぞ、退くとな」

「魔王の神託者だぞ!!」

「魔王の相手は勇者がする。ワシ等が受けた命令は流れ者の処理だ。それにワシの家族じゃ」

「しかしこれで逃がせば罪を被るぞ!!魔族を逃し、魔王も逃し!!それでいいのか!!」

「そもそもワシ等だけでは手に負えん状況だ。ジェミルニア、その若造に勝てるのか?」

「…クッ」


クリフがスキンヘッドを見る。そしてジェミルニアは苦いを顔をし目を逸らした。


「だがワシ等二人なら!!」

「無理だ、確かに二人ならソイツの相手位何とかなる。だがな、この子の大鎌は何でも切断するアーティファクト級の武器だ」

「神託者が既にアーティファクトを保有だと!?あれがか!!」

「それだけじゃ無い、その仮面の女性が一番厄介だぞ?」

「まさか、【僕より強いのがあの中に居る】と言う若造の言葉は本当だと言うのか?」

「そうだ、その女性は…あの大賢者であるメイビス様だ。敵に回せば都市が消えるぞ?その覚悟は出来ているか?」

「な!!偽物に決まって居る!!」

「確かにその可能性もあるな…メイビス様、良ければその顔を見せて貰えないだろうか…」


クリフのその言葉にラキュア達は円陣を組みコソコソしだした


「どうするにゃメイにゃん」ぼそぼそ

『メイビスってそんなに凄いんですか?私の知る限りじゃ戦闘役立たずですよ!?』ぼそぼそ

≪随分ハッキリ言ってくれるじゃないかラキュアよ。…だがぞれも事実だからな…今の私は魔法を使えない…≫ぼそぼそ

『ここはハッタリで乗り切るしかなさそうですね!!』ぼそぼそ

≪やはりその様だな…≫ぼそぼそ


ラキュア達の円陣が組み終わり、ジェミルニアへと振り向く一向


「なんだ?急にコソコソしよって…やはり偽物かの?」

≪そんな訳がないだろう。仕方が無いか…≫ガバッ!!


仮面を鷲掴み、横にズラすメイビス。色白の肌と綺麗で透き通った青い瞳、そして歳に似合わない綺麗な素顔が仮面の横から現れる。


≪これで満足か?まさか私の顔を忘れたとは言わせんぞ?≫

「…どうなんだクリフ!!?」

≪顔を合わせるのは3週間ぶりだな。最後に会ったのは王国の騎士団本部の執務室だったな。お前の驚いたダサいポーズは今でも忘れないぞ?≫

「……やはりメイビス様ですか…。そこまで分かって居れば疑いようが無いってもんだ。ジェミルニア、諦めろ」

「まさか本当に本物…と言う事は大賢者が魔族の味方をしたと言う事か!!」

≪勘違いするなよ?私はこの子の味方だ。この子が味方するなら私も味方する。この子を傷付けるなら私は戦う≫

「それはアタシ達も同じだにゃ」

「そうですね、僕達はラキュアさんの護衛ですからね!!」

『み、みんな!!』


…何この友情モノの。なんか恥ずかしくなっちゃうんだけど!!…


「だが分かって居るな?国の反逆者ですぞ!?」

「それを承知で僕達は此処まで来たんですよ」

「そうだにゃ、大変だったのにゃ」

≪さぁどうするジェミルニア。反逆者となったこの私に挑み、お前の都市を自らの選択で潰すか?≫

「ジェミルニア!!退け!!ワシも手が出せん、それに傷を治しておらん。お前がする事は魔王を倒す事では無い、民衆の不安を取り除き、この都市を守る事だ!!」

「ック!!やもえない…な…。なら最後に確認だけさせてくれ、お前達は何しに此処へ来た」


『私達は仲間を助けに来ただけですよ?ここの人達をどうこうするつもりは有りません。知らない振りして逃がして貰えればそれだけで良いのです!!』


「フッ!!ハッハッハ!!知らない振りしてか!!!それは無理ってもんだろう!!だが良かろう、ワシ等は手を退くとする」

「聞いたかお嬢ちゃん、いや…ラキュアよ」

『は、はい!!しかと!!』

「なら、もう行くが良い。この都市を伝い、魔族大陸へと向かうのだろ?堂々と長居させる訳にも行かん。お前達は反逆者で、ワシ等を凌いで逃げた事になるんだからなッ!!」


…ふむ、確かに。領主に正体バレたのに暫く滞在してま~す。とか王様が知ったら間違いなく激おこですね…


≪そうだな、私達はその準備も出来ている。長居する事はないだろう≫チラ

「そうですね…」チラ

「本当に便利だにゃ…」チラ


『んもう!!一々コッチを見ないで下さいよね!!衣類が少し無く成ってますが他は問題ないですよ!!』


「それなら今すぐ行くのにゃ?」

「流石に門は潜れないと思うのですが…」

≪宿にでも泊り早朝に出るとするか≫

『では宿探しですね、真暗ですが見つかりまうかね?』

「僕達が泊まっていた宿なら酒場もやってましたし部屋が空いてなくても最悪そこで寝れますよ?」

「それもそうだにゃアソコに行くにゃ!!」


ラキュア達の話しもひと段落付き出口へと歩く途中傷を押さえながらクリフが声を掛けて来た。


「待ってくれメイビス様」

≪どうしたクリフ、早く仲間の元へ行き治療をしないと…≫

「少し聞きたい事が有る…その子は本当にラキュアなのだな?」

≪なんだクリフ、この子がラキュアに見えないのか?≫

「そうでは無い…だがその眼…それに性格やワシの事さえ…」

≪大丈夫だ。この子はラキュアだよ。ただ私達が保護した時には記憶が無くなっていた≫


そこへソマリも割って入る


「自分の名前やアルカードの事すら分からないでいたにゃ…」

≪クリフよ、聞かれる前に先に言っておくぞ?アルカードとティルミアは私達がラキュアを保護した時に息を引き取っていた。残ったのはラキュアと勇者候補の学生だけだ≫

「ックッ!!…本当なんだな…」

≪嘘をついてどうなる。この手で二人を埋めてやった…。そうだクリフ、お願いが有るんだが≫

「メイビス様のお願いですか…無茶な事でなければ…」

≪多少無茶があるかもしれんな…迷惑は掛ける筈だ≫

「でしょうな。それでそのお願いと言うのは」

≪フォルンの森に巨大で何処から見ても分かる様な大樹が育った。そこにアルカードとティルミアが眠っている。お前の力でその地を守ってやって欲しい≫

「そうか、そこにアルカードが眠っているのだな…分かった。もともとアルカードがフォルンの土地を得れたのもワシの助力有ってこそだ。あの地の管理はワシが引き継げるよう頼んでみよう」

≪助かるぞ、クリフ。それとラキュアの生存の事だが…≫

「それは出来ん。宮廷魔術師に嘘が筒抜けにされた場合ワシが危険になる。この出来事は正直に報告せねばならん…それだけは分かってくれ」

≪……ッチ。ならば仕方ない…代々的に私達が加担した事を話しハーバルでの失態を擦り付けてくれ。お前達の責任も少しは解消されるだろう≫

「…良いのですね?」

≪あぁ、何て事無いさ。これで私達は正式に国のお尋ね者だな≫

「この国を去るのだから問題ないのにゃ!!」

「そうでうね、僕達の覚悟は元から出来てますしね」

「そうか、分かった。ラキュアを頼んだぞ」

≪あぁ、勿論だ≫


話しが終わったよ、とでも言うようにカインがラキュアの頭を笑顔で撫でてた。ラキュアは、そんなカインの顔を上目使いで確認しソマリに手を引かれ館の出口へと歩いて行く。


≪ラキュア…眼帯を付けておけ≫

『えぇ!?』

「護衛と兵士達が苦しみもがいてるにゃ…」

「倒れてる人も居ますね…」


…あ、すっかり忘れていたよ…これが普通の反応だって事に…折角の広い視野がまた狭まるのね…


横切るラキュアの真っ黒な眼に不安を感じた人達が恐怖にもがいていた。ラキュアはポーチから出した眼帯を左眼に取り付け館を出て行った。こうして若者と老い耄れ達の戦いが静かに幕を閉じた。









「クリフ、ワシ等も中庭へ行くぞ。ほれ肩を貸してやるわい」

「すまんな…ジェミルニア」

「やめろ、お互い命拾いしたと言うのに」

「これから忙しくなるな」

「そうだな、御かげで問題が山積みだ。頼むから領主の地位が剥奪されない事を祈るばかりじゃよ」

「それならワシが何とかしてみせるさ」

「ッホ!!期待はせんでおくわ」


ガチャン


――――――――――――――――――――――――――――



「お嬢ちゃん大丈夫でしょうか」

「相手が魔族で有るなら大丈夫なはずじゃがの」


タタタタ!!

「おいアンタ!!ヴィンティーニ商会の者だな?」

「え、えぇそうですが…あなたは護衛の方でしょうか?」

「あぁ!!アンタの所の護衛がジェミルニア様と戦闘しだしてな…たった今ソレが終わった所なんだ」

「そうみたいじゃな…中庭に戻ってきよった」

「それでどうなったんですか?」

「あのスキンヘッドの護衛はジェミルニア様を凌ぎ、仲間達と外へ出て行った所だ。何故戦闘になったのかは分からないが一応アイツ等のファミリーで有るヴィンテーニには報告しようかと思ってな」

「成る程…粗方想像が付きますね…もしかしたらこのまま都市を出て行くのかもしれません…」

「ふむ…すまんな若いの。ヘイソン、ワシ等も行きたい所だが、このまま行けばワシ等も1枚噛んでいる事にされるしの。どうやら彼女達とは此処までの様じゃ…」

「そうですね…無事に出られる事を祈るばかりです」


雇った護衛が魔族に寝返った。で有るなら幾らでもヴィンティーニ商会が関与した疑いを晴らせるが、このまま一緒に行くことでそれが出来なくなってしまう。ヘイソン達はこれ以上踏み込む事が出来ず彼等を心の中で見送る事にした。




ラキュア達4人はドドの宿屋に向かう為、暗い街の夜道をトボトボと歩いていた。


テクテクテク

『はぁ…正直もうしんどいです…』

「確かにクタクタだにゃぁ…ベッドに入ったら直ぐに堕ちちゃうにゃ…」

『所でソマリのお尻のポケットに詰まってる筒状の紙は何ですか?来るとき何も持ち物有りませんでしたよね?』

「これかにゃ?これはカインが頑張って手に入れたヴィンティーニ商会が得られる特別待遇書だにゃ!!」

『え…それってソマリさん持ち歩いてて良いんですか?ヘイソンさんに渡しておく物だと思うのですが…』

「あ…」

≪…≫

「い、今頃戻れないのにゃ!!」

「何か一言でも伝えて置くべきでしたね…」

≪そんな暇があったならな…≫

「カインの頑張りも無駄になったのにゃ…」

「はぁ…」

≪次が有るかもしれないさ≫

「次なんて要りませんよ…」

『カイン…良く分からないけどドンマイ…』


暗い夜道に湿気た空気が流れていた。


「そう言えばヴィンティーニ商会で働いたお給料もらってないにゃ」


(((『 ッハッ!! 』)))


そして追い打ちを駆ける様に更なる不の風が4人を横切ったのであった。


…私のお給料があああああああああああああああああ!!!!!…



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