44話:帰店と機転
館の外へと出たラキュア達は移動手段である馬車を探すのだが、土地勘の無い館の庭をこの暗さで探すには困難であった。
『流石にもう暗いですね…』
「普通は出歩きませんからね。馬車も何処にあるのか」
≪私達には土地勘が無い。いつまでも館の敷地に居る訳にも行かない。大通りにそって知っている道まで徒歩で向かうぞ≫
「結構かかりそうだにゃ…」
≪そうだな、この際だからカインの【ソレ】に付いて少し聞こうか。その肩に居る生物はなんだ?≫
戦闘中で聞けなかったカインの変化を歩く序でに聞く事にしたメイビス。その目線の先には時より飛び回ってはカインの肩に着地する何か映っている。
「この子がノームだと言う事は確実です。ですが何故こうなったのかはノームにも分からないみたいで…」
≪な、ななな!?それがノームなのか!!!なんてプリティなんだ!!≫はぁはぁ
…め、メイビスって精霊の事になると壊れる性格なのかな…
≪いかんいかん、そうでは無い…ジェミルニアと対等出来たのはラキュアの御かげで、と言って居たな?それはノームと関係するのか?≫
「そうですね…依代の精霊剣が壊れてしまってノームが危うかったのをラキュアさんの所持してい玩具の盾を依代にしてもらいまして…」
≪はぁ!?ラキュア!!どういう事だ!!依代を持っていたのか!?≫
『いやいや…依代だったなんて知りませんでしたよ…私の勇者装備が全部依代らしいんですよ…』
「あのヘンテコな鎧もかにゃ?」
『た、多分…』
「それでラキュアさんの盾をノームに宿したらこの通りです。盾が腕に浮遊した状態で装備されてまして、無詠唱の物魔障壁を自在に扱えるようになったのです。ノーム自身もサポートしてくれて…正直倒せそうな勢いでしたよ…」
≪全く意味が分からんな。状況が理解を超えているぞ…盾が浮くとは…それにノームが…≫
「不思議な光景だにぁ…」
メイビス達はカインの盾を暫く眺めているとメイビスとカインが何か話し始めた。
≪どうしたノーム、ん?…あぁそうか…私としては寂しいが勿論構わないぞ。あぁ、頼んだぞ…≫
「良いんですかメイビス様!!そんな簡単に!!」
≪ノームがお前を気に入ったのなら仕方が無いさ。それに精霊剣に宿した時もそう答えた筈だろ?≫
「あの時の言葉は鵜呑みにしていませんでしたよ…」
≪お前達と組ませてから大分経つからな…大事にしてやってくれ≫
「勿論です!!。うん?…いつまでもその姿で居られないのですね?では依代に戻りましょうかノーム」
肩にのるノームの姿が光の玉に戻り、皮製ガントレットの上に浮く六角形の盾に入り込んだ。
「どうやら定期的に依代に入り、魔力を補給しないと具現化が保てないらしいです」
「具現化って何だにゃ?」
「先程の実体を持つ精霊の事見たいです。大気の魔力をより強力に扱える様ですよ」
…強力だけど燃費が悪くて維持出来ないって事かな?…もしかして私の子も?…
…≪魔力の補給に関しては同じだぴょこ。でもワタシは元々実体だぴょこ≫…
…ぴょこちゃんはノームとは違うんだね…
…≪ぴょ、ぴょこちゃんって何だぴょこ!?≫…
…だって毎回ぴょこぴょこ言ってるしね。それより依代に早く戻りましょ?このカチューシャが依代なんでしょ?さぁおいで!!ぴょこちゃん!!…
…≪ワタシはノアールだぴょこ~~~!!≫…
しゅるん!!スポン!!
ラキュアは『おいで』と言っておきながら半場強制的に大鎌を頭のカチューシャに押し付けた。不思議な事にそのまま大鎌が吸い込まれカチューシャの蝶の髪飾りが羽を羽ばたかせピクピクと動き出す。
…≪な、なにするぴょこ!!もっと丁寧に扱って欲しいぴょこ!!≫…
…はいはい、ぴょこちゃんも魔力回復しましょうね~…
…≪ぴょこぴょこぴょこぴょこ~~!!≫…
≪お、おいラキュア…大鎌はどうした≫
「あれ、ストレージにでも入れられたんですか?」
『違いますよ!!この大鎌もノームの様に光の玉になって依代に移したのです』
「にゃにゃ!!」
「と言う事は…」
≪その大鎌は精霊だったと言う事か!!≫
『そういう事だと思います…』
≪だが妙だな、依代はその髪飾りだが、既に大鎌に成っているだろ?どういう事だ≫
…≪ワタシはそもそも精霊じゃないぴょこ!!元々大鎌なのだぴょこ!!≫…
『元から大鎌だぴょこ、などと述べており、犯人は精霊で有る事を否定しています』
「ラキュにゃんが意味不明な事を言いだしているにゃ…」
「良く分かりませんが分かった気がします」
≪ふむ…大鎌は依代では無く、具現化能力の一種か?となると大鎌自体が精霊で、ラキュアのポーチやストレージに入らなかった。と言う事かもしれんな≫
「ポーチに入らない物とは魔法や生きた生物等ですもんね…大鎌その物が生きているなら今まで入らなかった事に納得が行きますね…」
「今なら入るかもしれないのにゃ!?」
≪ラキュア、ここで少し試してみてはどうだ≫
『ん~…やるだけやってみますね!!』
ラキュアは足を止め、カチューシャを頭から取り外し肩に掛けたポーチの中に押し込んだ。
押し戻される感覚は無く、手を放し腕を引き抜くと依代で有るカチューシャはポーチに収まっていた。
『す、凄いですメイビス。本当に出来ましたよ!!』
「流石ですメイビス様!!」
≪たんなる予想でしか無かったがな≫
「なら次はストレージを試すにゃ!!」
その後、同じ様にストレージを試したラキュアはメイビスの予想通り収納を可能とした。あれほど厄介だった大きな大鎌も手軽に持ち出す事が可能となったのだ。
『でも私思ったんです。カチューシャの依代をポーチやストレージに仕舞えても常に付けて居られる装飾品なので、大鎌と違い仕舞う必要が殆ど無さそうですよね…持ち運びの問題がこの時点で既に解決したような気がします…』
「確かに…」
「跳ね橋の検問も髪飾りだったのなら問題無かったのにゃ…」
≪確かにその道理だが、ストレージは盗難の恐れが無い万能のスキルだ。ポーチと違い、いつでも取り出せるからな。依代の入ったポーチを盗られては話にならんぞ?≫
「それもそうだにゃ!!」
「頭から外す時はストレージに仕舞うのが良さそうですね」
…ふむ、成る程。大して意味ないじゃん。とか思ってましたが盗らる心配が無いと言うのは良いですね!!…
…≪さっきから何するぴょこ!!丁寧に扱えと言ったばかりだぴょこ!!≫…
…はいはい、ごめんね~ぴょこちゃん。どおどお…
…≪だからぴょこちゃんじゃ無いって言ってるぴょこ~!!≫…
「依代の飾りが凄く動いてるにゃ…本当に飾りかにゃ?」
「今にも飛び立ちそうですね」
『なんか怒ってる見たいです。頭の中でぴょこぴょこ言ってます…』
≪おいおい…精霊を怒らせるとは何をやらかしたんだお前は…≫
『何って言われても…ただのスキンシップですよ…』
「一体どんなスキンシップをしたら精霊を怒らせれるんですかね…」
一通り気になる事を話し終えた一向は、メイビスを先頭にドドの宿屋へたどり着いた。安全の為、大通りから遠回りをして居たラキュア達だが土地勘が有れば15分程で付く距離を30分ほど掛かっていた。
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ガランガラン
「おや、こんな時間に珍しい…って誰かと思えば賢者様じゃないか。飲みに来たのか?」
≪やぁマスター。朝一でハーバルを出る為に泊まらせて貰いに来たよ≫
「お酒も飲みたいにゃ~」
「そんな暇ないですよ。ソマリさんだけ置いて行きますよ?」
「それは嫌だにゃ!!」
「ハハ、随分急いでいる様だな」
≪そうだな…私達はこれからお尋ね者だからな。何か言われても知らない振りをしておけよ?≫
「おいおい冗談キツイぜ賢者様よ!!ただでさえウチは問題を抱えてんだからよ!!その子が例の探し人か?なんか奴等の話しに出てくるお嬢ちゃんに似てる様な…」
「奴等?」
「あぁ、コッチの話しだ…それにお前達は、いつも酒に溺れて会話なんか覚えて居なかったしな…」
「美味しい酒は良く眠れるのにゃぁ!!」
…此処がメイビス達が泊まっていた場所なのね…酒場と言う割には客が誰も居ないね…
酒場のカウンターで立ち話をするメイビス達。すると厨房の方から声が聞こえた
「ドド―!!コッチの積み荷の準備が出来たぞ!!俺達はこのまま都市を出るぞ!!」
≪こ、この声は!!?≫
「すまんな賢者様、これまた訳ありの客でよぉ。おーう待ってなビーン!!すぐ行くぜ」
≪ビーンだと!?やはりこの声はビーンなのか!!マスター、ちょっと通して貰うぞ≫
「おいおい!!勘弁してくれよ!!!」
「僕達も行きましょうか」
「流れにのるのにゃぁ!!」
『えぇ…嫌がってますよ…』
ズカズカズカ!!
…流れと言うか雪崩と言うか…なし崩し的な…でも確かにこの声聞き覚え有りますね…
「おいおいおい!!なんだなんだ!!?客は来ないんじゃ無かったのかよ!!」
≪やぁビーン。さっきぶりだな≫
「おわ!!」ドカ!!
ビーンは突然現れたメイビスに驚き料理台に腰を打ち付けた。
「痛てて…メイビス様何故ここに…」
≪それはコッチの台詞だビーン≫
『あ、あのコックさんだ』
「知り合いの宿屋って此処だったのかにゃ」
「お嬢ちゃんにお前達も…」
ドドを押しのけズカズカと他所の酒場の厨房へと入り込むラキュア達。そこに居たのは馬車で逃げたビーンだった。
≪ビーン、今から逃げるつもりなのか?流石に無理だと思うのだが…≫
「いや…それがな、ドドが言うには北門を制圧していて今頃開門している筈だって言うんだよ。折角だから俺達もこのまま逃げて合流しようかと思ってな」
『随分用意周到ですね…まさかソコまでしているなんて…』
「他のお二人は?」
「あ?あぁ…ダールとカトレアなら二階で少し休んでるぜ。これから呼びに行くがな」
そして後から、頭を掻きながら困った表情をしたドドが厨房へ入って来た。
「なんだお前達、知り合いだったのか?」
「まぁな、それに俺達を助けてくれた」
「嘘だろ!?賢者様達は巻き込まない筈じゃ!!」
「なんの話しか俺は知らないが、メイビス様達は領主の館に招待されてたらしくてな、そこのお嬢ちゃんを中心に助けて貰ったんだよ」
「そうか…そういう事か…。要するに賢者様達は囚人を助けちまったから早急に都市を出たい訳か」
≪まぁ…そんな所だ≫
「それだけじゃ無いけどにゃぁ…」
…思いっきり魔族に加担して皆を逃がしちゃいましたからね…
「それにしても丁度良いのでは無いでしょうか?」
「何がだ?」
「どうせなら私達も一緒に馬車に乗らして貰うのも良いかと」
≪そうだな、私達ならもしもの護衛になるしな≫
「主にカインだけどにゃ!!」
「それは良いかもしれんな。俺達も心強いと言うモノだ」
「おいおい正気かよビーン。この若い人族が護衛って」
≪言われてるぞ下僕≫
「メイビス様…」
酒場内で散々【下僕】と弄り倒されたカインを思い出させる様にメイビスが言う。それをカバーするかの様にラキュアが迫力を付けて喋り出した。
『カインは凄く頼りになりますよ!‼大槌振り回すジェミルニアの足止めもしたんですからね!!』
「な!!ジェミルニア様と戦ったと言うのか!!」
『凄かったですよ?格好良かったんですからね!!今にも粉砕されそうな魔族達を突然現れて防ぐ所とか正に私の描く勇者ですよ!!その後の事は分かりませんが兎に角凄かったんです!!』
「お、おお、なら…大丈夫…だな!!」
力説する無邪気な子供を見て、拒む選択肢を失ったドドはそう言うしか他無かった。
「子供って便利だにゃ」
≪あそこまで言われちゃな≫
「そうと決まれば俺はダール達を呼んでくる。メイビス様達は酒場で待機していてくれ」
≪そうさせて貰う≫
一向は厨房を出て酒場へ移動して暫くするとダールとカトレアを連れてビーンが降りて来た。
「おう待たせたな」
「そうでも無いのにゃ」
「本当に居らしてますわね。メイビス様に猫さん、それに…」
「そうか、お嬢ちゃん達も逃げきれたんだな…」
「二人には悪いが此処で話してる暇は無いんでな、急いで都市を出るぞ」
「ドド、お世話に成りましたわ。また会える日を」
「気にするなカトレアさん。お前等も元気でな」
≪ああ、私達も行くぞ≫
ラキュア達はドドの宿屋に居たビーン達と共に北門へ向かう。
≪これは一体どんな原理なのだ…≫さわさわ
「ちょ、メイビス様…近いですって」
≪暗いのだから仕方が無いだろう。ほら、腕を伸ばしなさい≫
「あ、はい…」
『なんか凄いですね…』
「まるでイチャイチャするカップル見たいだにゃ…」
『腕にしがみ付いたり振り回したり引っ張ったりしてますもんね』
「でもアレは研究の一環なんだろうにゃ…」
『耐久テストでもしてるんですかね…だんだんハードになってきました』
「め、メイビス様!!ボクの腕まで巻き込まないでください!!そんなに締め付けたら血が止まりますよ!!」
≪フン!!フン!!これでも外れないか!!どうなっているんだこれは!!フン!!フン!!≫
宿屋に向かう途中、メイビスは暇つぶしとしてカインを実験台していたと言う。
「痛いですぅぅぅぅぅ!!関節を逆に曲げないでくださいぃぃ!!!」
≪フン!!フン!!≫




