40話:若造組vs老い耄れ組【2】
ジェミルニアがガーデル達に圧倒的な力で粉砕する間際、スキンヘッドことカインが割って入り、決闘の時とは違う殺しの一撃を受け止めていた。
ギギギギッ
「言い訳ですか?ふむふむ…《僕達の方が強いから》、らしいですよ?」
「ハッハッハ!!全く意味が分からんな!!」
「はは…僕もつくづくそう思います…」
ガチン!!ガチン!!
「今頃あの時と同じ様に吹き飛んでる筈なんだがの」
「僕もそれ覚悟で飛び込んだんですが案外平気ですね」
「先ほどの決闘は手を抜いていたとでも?」
「そんな訳無いじゃないですか!!手なんか抜いて居たら今頃ここに居ませんよ?」
「その割には余裕だの」
「それは貴方もでしょう?このまま僕と打ち合いして良いんですか?」
カインがそう言ってガーデル達に視線をズラした。
彼等は死の予兆を感じて腰が抜けていたがカインが時間を稼いでいる内に体勢を立て直し、クリフの背中を見ている。通り抜ける隙を伺っているのだ。
「そんな心配は要らん。それにな、その剣の心配をした方が良いのでは無いか?」
ピキッ!!
「!!?」
「若造が何故その剣を持っているか知らんが、耐えれるだけで、壊れない訳では無いのだぞ。ワシの攻撃はあの時とは違い、手加減などしておらんからの。騎士の武器で無いなら壊しても問題なかろう!!」
「ノーム!!どういう事ですか!!…そんな…それじゃここまで何ですか?」
「…急にどうした?ビックリしたわい。ヒステリックって奴かの?顔に余裕が消えたのう!!なら畳みかけるぞ?【連続強打】!!」
バゴン!!バゴン!!バゴン!!バゴン!!バゴン!!バゴン!!バゴン!!バゴン!!
「ック!!このままでは!!」
「ほれほれ!!さっきまでの威勢はどうした!?止めの一撃だわい!!」
バキン!!
「グハァ!!」ドドン!!
「これで終いじゃのう。さて今度こそお前等魔族を…」
上から振り下ろされる強打を耐えきったが、カインの剣を破壊し、土属性の衝撃を吸収するノームの加護が消えた為、その衝撃により床に叩き込まれてしまった。その床は人
の形にめり込み、カインは口から血を吐き出す。その傍らには依代を無くしたノームが漂っていた。
「ほぉ、成る程な!!あれほどワシの攻撃に耐えれて居たのは精霊を宿して居たからか!!納得したわい。若造は精霊術師と言う訳だったと。すまんな、折角の依代を壊してしまって。そいつが下級ならその内消え兼ねん…」
「ぐ…ゴホッ!!…ノーム!!」
タタタタタタ
『カイン!!しっかり!!大丈夫!!?』
「ラキュア…さん…僕なら…大丈夫…」ゴホッ!!ペッ!!
「なんだい、お嬢ちゃんはスキンヘッドの知り合いだったのか。すまないな、だが君はコチラに避難しなさい。今なら魔族も手を出せまい」
『い、嫌だ!!カインにこんな事して!!』
「そんな目でワシを見ないでくれ…それにこのスキンヘッドも魔族の手の者の様だ…。奴と共に魔族共を捕らえなければならぬ。さぁ来るのだ」
『カインを捕らえる!?尚更嫌ですよ!!私の仲間にこんな事して更に…!!!』
「ふむ…子供の相手は苦手じゃな…無理矢理にでも連れて行くしか無い様だな…」
「ラキュアさん…お願いが有ります…」
「こ、こんな時にお願いって!!まさか死ぬんじゃないよね!?」
「ハハ…僕はまだ死にませんよ…それよりノームが消えちゃうかも知れません…ですから依代を僕にくれませんか?」
…ノームって確か精霊?だよね…
『どう言う事ですか?それに私、依代なんか持ってませんよ!?』
「今のノームは…凄く貧弱で、力が戻って居ません…大精霊であるノームですが、弱っていて依代が無いと消えて無く成ってしまうんです…。ですから依代を…」ガサ タタ
カインが重い体をお越し立ち上がる。そしてラキュアの頭上を飛び回るノーム。カインがラキュアにお願いする様に、ノームもまた体いっぱいにお願いをしていたので有る。
『だから私は依代なんか!!』
「それがですね、どうやらラキュアさんのヘンテコな物品が依代らしいのですよ…」
…ヘンテコな物品ってこの鎧とか指輪とかだよね?…
『えぇ?これとか?』
「そうですね…確か直ぐ壊れそうなヘンテコな盾ありますよね?ノームはそれが良いらしくて…」
…あの直ぐに穴が開きそうなダンボール製の盾ですか…それ渡しても直ぐ壊れちゃ意味ない気がするんだけど…それに一応勇者の遺物らしいしけど精霊とやらを宿して平気なのかな…
「これ、かなり大事な物なんですよ?しかも直ぐに壊れそうですよ?」
「お願いしますラキュアさん…ノームの為に…他の依代が無い今、それに頼るしか無いんです」
…そこまで言われちゃうと…助けれるなら助けたいのが私の本望…だから…
『んーーー精霊が消えないで済むんですよね?こんな物で助かるなら…』
「おいおい若造、何を話してるか知らないが戦いの最中に子供に頭下げて縋ってんじゃねーぞ?」
『確かに今のカインは凄くダサいですね…』
「ラキュアさん!!」
『でも良いですよ。ノームを助けてあげましょうか!!ハイ!!これです!!大切に使って下さいね?』ガサガサ ポイッ!!
「ら、ラキュアさーん!!…ノーム!!さぁ!!」シュルシュルシュルシュル シュポン!!
ラキュアがお馴染みの様に、はたから見たら股座を弄る様な動作で箱鎧の中のポーチを漁り、ヘンテコ盾を取り出してカインに渡すと、ラキュアの頭上を飛び回る精霊が盾に向かって吸い込まれるように入り込んだ。すると異変が起きる。その盾は光を放ちながら別の何かへと形を変えいた。
キーーーーーン!!
「な、何が…何をした若造…」
「僕にも分かりませんが…凄い事だと言う事が分かりました…戦えるんでしょ?ノーム」
カインの左ガントレットの上に、浮く様に装着された六角形の盾が出来上がり、そして大人の手程の大きさな褐色の人型精霊がカインの肩に座っていた。
「それが本当のノームの姿ですか…メイビス様にも見せてあげたいですよ」
「バカな…精霊が実体化だと…まるで妖精では無いか!!」
…あのおじさんが何を言っているのか分からないよ…それよりアッチが大変な事に!!ミルフィちゃん助けなきゃ!!…
「ジェミルニアさん、悪いですが此処からが本番の様です。御相手、良いでしょうか?」
「ふっ、その状態でまだやると言うのか。身体はまだふら付いておるぞ?精霊剣も砕けた。スキンヘッドのお前さんに防ぐ手立てが有ると言うのなら受けて立つがな」
「なら問題ないですね、僕達の力を見せてしまいましょうか。行くよ、ノーム!!」
カインは盾を構える様に腕を折り、浮いた六角形の盾がそれに合わせて浮遊する。
「そんな物見た事が無いぞ…どんな原理してやがる…だが見た所武器が無い様だが?」
「武器なんかいりませんよ。僕は大切な人達を守れれば良いんです。ですが攻撃はちゃんと出来ますよ?」
「だろう…な…それが本物ならな…」
「それを二人で確かめましょうか…ね!!ノーム!!手始めにロックピラー!!」ゴゴゴゴーン!!
「!?下か!!」フン!!
「まだまだ!!」ゴゴゴゴーン!!
「くそ!!霧が無い!!それに邪魔に成って来たわい!!うぉりゃ!!」バゴン!!
「ノーム!?…うん、分かったよ」
館内に石の柱が何本も出現し二人の視界を塞ぐ、ジェミルニアはその柱を次々と大槌で粉砕し、破片をカインに飛び散らす。しかしカインは盾を構えた。
「その小さな盾じゃ防ぎきれんぞ!!」
ブーーーン!!ボトボトボトボ
「す、凄いですね…これ」
「な、詠唱無しの障壁だと!?」
「これなら行けますね…悪いですが勝たせて貰います」
カインの構える盾から半透明な円形フィールドが包むように形成され、飛んでくる石の破片を次々と受け止め、地面に落ちていく。カインは勝機を得た鋭い目に変わる
「ならば直接叩くまでだわい!!」フン!!
ガチン!!ガチン!!
「本気出さないと逃げられますよ?」
「言ってくれるじゃないか若造。だがそうも行かないからの」
「館に障壁が無いですからね…なら僕が優勢と言う事ですか?」
「ぬかせ!!丁度良いハンデじゃわい!!」
「それはどうでしょうかね、後悔しますよ!!」キュイーーーン!!
カインが自己障壁のエリアをジェミルニアまで伸ばし障壁内に二人の空間が出来た。
「何をするつもりだ。ワシまで障壁の空間に入れよって」
「これは保険の様な物です、ノーム!!【土砂津波】!!」
「やはり本物か!!この場所でそんな上位魔法を!!」
「その為の障壁ですよ?」
「生意気な若造めが!!!【隕石落とし《メテオインパクト》】!!!」
ゴゴゴゴゴゴ!!!
カインが立つ床を除き、障壁で囲った館の床が地震の様に揺れ、地盤沈下の様に崩れていく。すると瓦礫の様に分解されていく地面が突如として津波の様に、土砂崩れの様にジェミルニアに襲い掛かる。呑まれる様に巻き込まれ、波が障壁へと叩きつけられた。
ド――――ン!!
「先ほどのお返しです、どうですか?」
ガラガラ
「っち、障壁が有ると分かったから良かったが…」
「やはり先ほどの技で相殺しましたか…」
メテオインパクトにより自分の地盤を叩き、衝撃により瓦礫が下から昇る様に壁と成り、一時的に押し寄せる波の威力を停めた。それでも波は止まらず呑まれてしまうが、勢いは殺せることが出来たジェミルニアは瓦礫から這い上がったのだ。
「今の貴方の状況と私の状況ではハンデにすら成りませんね」
「ワシの館で好き勝手しよって…ボロボロでは無いか」
「僕が障壁を展開して居なければもっと酷くなっていましたね」
「ッチ、ここに居る兵士達を上手く突かれたわい。その気が有ればこの場の兵士達を殺せるぞ、と意思表示をした訳だな」
「その気は無いですかそういう事に成ります。どうでしょうか、ここで降参するのは」
「領主たるこのワシにミスミス魔族共を逃がせと言うのか?それにお前さんも逃がしては置けん罪になったぞ」
「ハハハ…そんなモノは此処に来る前からですよ…こんなやり方は好きでは有りませんが…此処で引いて貰わなければ実力行使で行きます」
そこへ後ろから声が掛かる。そして振り向く二人。声の先を見た。
「おい…ジェミルニア、ワシ等は手を引くぞ」
「何を言っているクリフ!!聖騎士の誇りで有るお前が魔族を逃がしてどうする!!ワシが無理でもお前なら!!」
「グフ…そうは言ってもな…流石にアレは止められん…」
「ク、クリフ…なんだその血は…」
「ハハハ…まさかアレがこんな所に有るとはな…」
「何を言ってるかさっぱり分からんぞクリフ!!」
「それにだ、あの子は切れぬ…」
「あ、アレは人質になったお嬢ちゃんなのか!?」
「ラ、ラキュアさん!!?」
クリフが振り向く先にラキュアが居た。
ぴょこ…ぴょこ…
…《し、しつこいぴょこ…早く向かいたいのに先にマナが切れるぴょこ》…
「ふふふ、逃げ切れると思わないで下さいね!!あなたは私の精霊にするのよ!!」
「無理に決まってるじゃないですか!!精霊は認めた相手としか共存はしないのですよ!!」
「これから認めさせるのよ!!ぎっりちとね!!」
「精霊に大してよからぬ事は流石に…」
「火あぶり?それとも蝋燭?熱湯なんかどうかしら!!フライパンで焼いたらどんな味なのかしら!!」
…《やばいぴょこ~~~!!!絶対捕まりたくないぴょこ!!》…




