35話:毒物混入 怪しいモノは疑うモノ
お菓子を作ると言う条件で道案内をしてくれた女の子が約束をすっぽかされ駄々をこね始めた所から始まる。
「これは作るしか無いんじゃないか?」
「自分で作りたい、とも言っていたわ…」
「無理に決まってんだろ!!大体お前等そんな時間も無いだろ!!逃げるにしても牢に戻るにしてもよ!!」
…これは収拾がつかないね…お菓子作れれば満足してくれるって事だよね…簡単なお菓子…
『ねぇ、何でもいいから油とカボチャとかゴボウとかお芋ない?』
「料理長様と呼べって…あぁ?なんだヘンテコかよ。油はあるぞ。ゴボウとやらは知らんが今あるの毒有りの芋くらいしかねーぞ…誰がこんなもの取り寄せたんだよ。ここのシェフは碌なヤツが居ないな…」
…毒有りの芋?まさかね…
「おじさんそれ見せて!!」
「その辺に転がってんぞ」
…転がってるっておい!!あ、本当に転がってるよ…袋から崩れてる…
『じゃぁ取りあえずこれでお菓子作りましょうか!!』
「馬鹿な事言ってんじゃねーぞヘンテコ!!毒が付いてるんだぞ!!」
…どれどれ…ふむふむ…やっぱりジャガイモだよこれ…
『良いですか?このお芋はですね…ちょっとコレ借りますよ?」
ラキュアは転がった芋を手に取り、背伸びして厨房の包丁を掴んだ。
「おチビちゃん危ないぞ…それ包丁だからな?」
『知ってますよそれくらい…それでですね、このお芋のこの場所とか…この場所とか…こうやって角で抉って…』クリックリ ポイ!!
「何してるんですか?」
『こうやって芽の部分を取ってあげると毒は気にせず食べられるんですよ?』
「はぁ?そんなの信じられるか!!運が悪いと腹痛を起こす有名な芋だぞ?」
…今までそうして来なかったからですよね…
『良いですよ!!私が食べますから!!どうせ使わないんでしょ!!』ぷりぷり
「私もお料理したい―!!」
「良いですよ~でも気を付けてね」
駄々っ子がラキュアが料理をしだす現場を見て興味を惹かれ、騒ぐのをやめた。ラキュアは「シメシメその調子だ」思いながらも、一緒にやらせる事にした。
『乗っても大丈夫な台持ってきてくれませんか?』
「そうね、届かないものね…」
「っけ、ならこれを使え…黙らせてくれたしな…」
そう言ってビーンが台を用意してくれて小さな子供二人が並んで厨房に立った。
「何切るのー?」
『お芋さんですよー?』
「お芋さん?お芋さんはお菓子じゃないよ?」
『お芋さんは美味しいお菓子になるんですよーその数は沢山ありますよー』
「ホントに―?沢山作る―!!」
『でも今は急いでるから簡単なのを一つだけ作るんだよーそれで我慢してね』
「えー…んーー我慢するー!!」
「なに言ってやがんだか…芋なんかでお菓子が作れるもんかよ」
「だったら貴方が作って下さればいいのに…」
「あのな、そんな事言われても砂糖はもう切らしてんだよ。作るも何も端から作れないわ」
『っふっふっふ、お菓子が全て甘い物だと思うなよ!!塩とか黒胡椒あったら持ってきてくださーい。あと油を入れる鍋もです!!』
「人使い洗いな…」
『こうしてね、薄くお芋さんを斬るんだよ』ササッ!!
「わーすごーい!!私もやる―!!」
…出来るかな…危ない気がするんだよね…
ズコン!!
「薄く切れないよーお手て切っちゃいそうで怖いよー…」
…ですよねー…だと思った…仕方ない、あれを出すか…
ガサゴソガサゴソ
「おいおいヘンテコ何してんだよ…トイレなら外でして来い…」
『違います!!』シュポン!!
『チャラララーン!!はーりーがーねー!!あ、この針金はですね、硬いので此処からこのくらいの長さまで斬って両端の先端を丸く曲げて貰っても良いですか?』
「あ、あぁ良いけどよ…なんでそんな物持ってんだよ…」
『え?針金って結構便利じゃないですか…S字フックにしたり…物を巻きつけたり固定したり…ついつい買っちゃいました』
カチャ…クルックル
「そう言う事じゃなくてな…まぁいいわ…ほらよ」
「おチビちゃんどうすんだそれ…」
『包丁の刃に丸まって重なってる部分に挟んで装着させて…こうするんです』シュパ!!シュパ!!
おおおおおお!!!
「これは驚いた、まさかこんな手でスライス出来るとはな」
『これなら手を斬る心配もないと思います。やってみて』
「うん!!」すぱ!!すぱ!!
ヒソヒソ ヒソヒソ
…何だか周りの料理人達がうるさいわね…まぁ良いわ…
「楽し―!!どんどん切れるよー!!」
『その調子でどんどん切ってねー!!その間に私はっと…』どぱどぱどぱ
「おいおいそんなに使うのかよ!!スープじゃないんだぞ!?」
『分かってますよ…火にかけてお芋さんをサクッと揚げるんですよ』
「なんだそりゃ?」
『ふんふふーん♪ふんふふーん♪ポテトチップス~♪』じゅわじゅわじゅわじゅわ
ラキュアは鼻歌を交えながら油を入れた鍋を火で加熱し次々と薄切りの芋を入れていき、
きつね色に焦げ目がついて来た芋を鍋から取り出していく。
『お塩もらいますね~』ぱさっぱさ
「本当に塩でいいのか?砂糖と間違えてないか?」
『良いんですよ…一応味見しなきゃね…あちち!!んー!!これこれ!!』ぱりっぱり!!
「まさかこれがお菓子なのか?」
『そうですよ。甘いだけがお菓子じゃないのですぞ!?はいどうぞ』
「いや、毒が…」
『そうでしたね~じゃあ二人で食べよっか!!』
「もうお菓子出来たのー?私、お芋さん切ってただけなのに!!」
『それくらいしかする事が無いんですよ?はいどうぞ!!』
「お芋さん干からびてるー!!食べれるのー?』
ぱりっぱり
『あむあむ…この通り…あむあむ…凄く美味しくて…あむあむ…手が止まらなくなりますよ…』
ラキュアは出来立てのポテチをパリパリと音を立てながら次々に口に運んでいた。
その音と美味しそうに食べる姿を見て駄々っ子も口に放り込んだ。
サク!!パリッ!!
「あむあむあむ!!おいひぃー!!あむあむ!!」
『自分で作って食べて満足出来ましたか?』
「出来たー!!楽しかったし美味しかったー!!」
((((「りょ、料理長様!!」))))
「あんな食いっぷり見せられたら俺達も食べたくなるってもんだ…なぁヘンテコ、俺達にも少し…」
『駄目ですー!!食べたいなら自分で作って下さい!!毒無しのお芋さんでも探してね!!それにこれから作る時間なんか無いんですよ』
((((「りょ、料理長様!!」))))
「お前等は料理に集中しとけや!!」
「そうでしたわね…目的を忘れる所でしたわ」じゅるり
「そうだ、ビーン俺達と今すぐ此処を!!」じゅるり
…この二人も食べたそうにしてるね…胡椒の方を分けてあげようかな…
『お二人も食べますか?毒は無い筈ですよ…』
「そうしたい所ですが…」
「これから逃げる事を考えると不安要素は消しておきたい…だから遠慮するぜ…」
美味しそうに食べる子供達につられついつい涎が垂れてしまう大人達であったが当初の目的を思い出し諦めたのであった。駄々っ子も満足した様でこの場の騒ぎが収まり逃げる算段に取り掛かる一向達は仲間だと言うビーンの説得を改めて試みる事に。
「さて、そこのおチビちゃんが言う様に時間がないんだ。出来ればお前にも一緒に逃げて欲しいんだ」
「俺だってさっきも言ったが信用出来ない限り無理だ。そいつが俺達に通じる何かでもない限りな!!」
「な、何か無いのかおチビちゃん!!ヤツの手紙を預かってるとかよ!!」
『そ、そんな物は無いですよ…』
…私が彼等と通じるモノと言ったら私も魔族と言う事くらいしか…でもここじゃ…
ラキュアから見て彼等は【ガーデル達を手引きした仲間】と言う事しか聞かされていない為、アルカードとの共通点で有る事を知らないでいた。
ラキュアが今出せる説得の為の証拠は真っ黒な左眼しか無いが、それすらも只の女の子が居る中で、他の料理人が居る中で晒す訳にも行かず躊躇ってしまった。
「なら俺達はビーンを置いて行くしか…」
「牢に戻れば問題ないだろ!!」
「いいえ、この子に証拠が無くても私達はこの子に賭けたのよ…だから…行くわ」
「そうかよ勝手にしろ!!」
「オジサン達ケンカー?」
『大人の話しだよ…この子も早く帰してあげなきゃだし私はこの子と会場に戻りますね…それに仲間と合流しなきゃ行けませんし』
「ダールにカトレアは行くんだろ?逃げるなら裏口を使え…そのまま外に出られるぞ…」
「カトレア、どうする」
「あの子がミルフィ達と知り合いなら放って置けないですわ。私達も付いて行きましょう」
「そうだな…そうしよう。ビーン!!俺達は行く!!またいつか会える事を!!」
「なら捕まるんじゃねーぞ!!絶対にだ!!」
「あぁ!!」
ラキュアが先に厨房を後にし、それを追うように二人もまた厨房から姿を消した。
話が分からない料理人達は疑問符を浮かべながらも料理をし、ビーンは苦虫を噛み潰した様な顔で彼等を見送った。
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それから数分後の出来事である。ガーデル達は兵士が立ち寄らない厨房から潜入する為、その裏口のドアを開いた。
「な、なんですか?追加の素材注文ならもう無い筈なんですが…」
「ッチ!!やはり料理人は居るか。取りあえず全員寝かせるぞ!!」ドカ!!
「うぐぅ」バタン!!
「なんの騒ぎだ!!ゥぐ!!」バタン!!
ガーデル達が料理人達を無力化して行く中、騒ぎに気が付きガタイの良い男が奥から出て来た。
「何をしている!!厨房で遊んでる暇なんて無いぞ!!………誰だお前等…」
「お、おいガーデル!!あれ!!」
「ッな!!お前まさかビーンか!!?」
「何でそんな怪しい恰好の奴等が俺の名前知ってやがんだ…何者だ。ここは料理人の戦場だぞ」
「バカ俺達だよビーン!!」バサッ!!
「が、ガーデル!!?それにお前等も!!」
侵入した者達はその男の正体に気づき、男もまた怪しい連中の正体に気が付いた。
「何故こんな所に居る!!」
「それはコッチの台詞だ馬鹿共!!」
「俺達はお前達を助けに来たに決まってるだろうが!!」
「こんな場所に居たのと言う事は…まさか料理中だったのか?」
「ダールとカトレアはどうした!!一緒じゃないのか」
「おいおい次々喋るなよ!!まさか本当に助けに来るとは…」
「どういう事だビーン!!誰か俺達の情報を流した奴が居るのか!?」チラ
「おいガーデル!!そんな馬鹿な奴が俺達の中に居る訳無いだろ!!」
「なら誰が!!」
「待て待て、違うんだ。ついさっきまでダールもカトレアも此処に来てたんだ。だが俺は兎も角、二人は牢に居る筈が逃げ出す為に俺の所まで来たんだよ」
「二人で抜け出してここまで来ただぁ?それで何でお前はココに居て二人は居ないんだよ!!」
「だからそれを説明する…その抜け出す手助けをしたのがヘンテコな格好した小さな子供だったんだよ」
「何言ってんだお前…悪いもんでも作って食ったか?」
「あのな!!本当の事しか言ってないからな!!」
「お、おう…それで?」
「そのヘンテコな子供がお前等の名を口にして【時機にお前等が助けに来る】と情報を話し、此処まで逃げ出す手助けをして来たんだとよ。だが、俺はそんな怪しい子供は信じきれず、二人は踊らされて居ると思ってな。ダール達はそれでも行くと言うもんだから先ほど行かせたばかりだ…」
「話しを聞く限りじゃ無理もないな。ヘンテコな子供って時点で既に胡散臭いぜ。だか俺達はお前等を助けに来た。どうするんだビーン。それでも残るか?」
「……行くしかねーだろ。お前等はそれが好機だと踏んでここまで来たんだろ?」
「そうだ、その為に準備をして来た。だから…二人も見つけて皆で逃げるぞ!!」
「困った連中だぜ…ビーンとカトレアを行かせてしまってすまないな。二人はヘンテコを仲間の元に送る為にパーティ会場に向かった筈だ。俺達も行こう」
「聞いたかお前等!!作戦成功は近いぞ!!気を抜かず警戒して動くぞ!!」
入れ違いで来たガーデル達は仲間の一人で有るビーンと合流し、ラキュアが居る会場へと向かった。
おおおおおおおおおおおおおおお!!
ヒソヒソ
「こ、これは何て素晴らしい物だ!!
「あれが有れば野菜の皮むき修行など…!!」
「綺麗な飾りが作りまくれてしまうぞ!!」
「俺もあれが欲しくてたまらないぞ!!」
「作り方も簡単では無いか!!明日にでも硬い針金を買いに向かうぞ!!」
おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
料理そっちのけでラキュアの料理を眺めるギャラリーシェフ達である。
「お前等ちゃんと働けよな!!!」
(((((「 … へーーい … 」)))))




