24話:噂への来訪者達
次の日、ラキュアはいつもの様に起こされ、お店に向かい昨日と同じようにデンクの手伝いをして大鎌ブースの垂れ幕を上げた。
『やっぱり並んでますね…今日も忙しくなりそうです』
「だが食品と違って業務的な素材の切断以外から定期的な収入は得れなく成るからな、一般客の斬る物が無くなりその内寂しくなるぞ?」
…あぁそうなのか…確かに用が済めば必要が無いサービスだもんね…
「前回列から溢れた方優先で切断を行います~!!倉庫に預けた方は名前と品が一致次第、優先しますので僕達までお伝えくださ~い!!」
昨日の時間内に切断出来なかったお客に対してデンクが大声で叫び出すと、ぞろぞろとデンクの元に人が寄って来た。デンクとフィルソンが倉庫から品々の入った荷車を引いてきて、確認の取れたお客に預かった品を返していく。
「昨日は出来なかったが、重くてね…預かってくれて正直助かったよ。長い列に並ばず、このまま行っても良いんだよね?」
「良いですよ~コチラの優先チケットを渡しておきますので、優先用の別の列に並び必ずラーちゃんに見せてあげて下さいね。でないと長い列に戻されますからね?」
「そうかそうか、分かりました有り難う御座います」
デンクとフィルソンが昨日の客の相手をして貰っている間は優先列が設けられ識別用のチケットが手渡されていた。これが無ければ優先待遇は受けれないので他の客が並んでも追い返されてしまう様になっていた。
不服そうに見ている別のお客に対しては食堂からの差し入れとして、待っている列の人達に薄めた果実水を配り気を紛らわせていた。
「エールは無いのか!!ワシはその方が嬉しいぞ!!」
「お酒はダメだ。よく斬れる刃物での切断作業はご本人にやってもらう事になってるからな。お酒で酔って手でも斬り落としたいのかい?そんなんでオヤジの責任にでもされたら困るんでこれで我慢してくれ」
「ぐぬぬ…」
フィルソンが飲み物を配りながら客の不満をいなしていた。
…フィルソン君、自ら客の罵声に飛び込むなんてある意味凄いじゃん。ちょっと見直したよ…
列に並ぶお客と奮闘する久々に見たフィルソンの姿に関心していると、一般客の長い人の列が動き出していた。自分で斬る訳では無いラキュアはひたすら椅子に座りながらお代を頂いていた。
『アゴンさん、私、超暇です』
「バカな事言ってんじゃねーよ!!お嬢ちゃんが楽なのは皆が手伝ってくれてるからだろうに…それとも列に並ぶ主婦達の相手でもしてくるか?」
『あ、私、凄い忙しい様です!!それは無理見たい!!』
「ガッハッハ!!都合が良すぎるってもんだろ!!飛んだひねくれ少女だな!!」
『それにしても客層が変わりましたね…先ほどから兵士っぽい方がお見えに成りますよ?昨日は一人も来ませんでしたのに』
「それは噂が兵舎の方にも届いたからだろうな…ほら、並ばずに切れ味だけを見てる奴もいるぞ」
…わぁ本当だ…何か兵士に取り囲まれている見たいで怖いのですが…
『怖いです…どうにか成らないんですかね…』
「どうにも成らないな、自分の目で見て確かめて諦めてもらうしかないわな。さっさと商品かってくれりゃ良いのによ!!」
『ケチなんですかね』
「まぁケチだろうな、主婦などの一般市民と比べたら財布の紐が硬いと来たもんよ。まぁそんな彼等に俺達は守って貰ってるんだがな」
そんな事を言いってる間に、何人もの兵士達が手にしたチケットを渡し大鎌にチャレンジして帰っていく。
すると変わった鎧を付けた兵士と馬車がやって来た。
ガラガラガラガラ キィ カチャ ドスン!!
「コチラです」
「随分賑やかだな。武器一つでこんな人だかりとはな」
「副団長殿、それは私達も含まれていますよ」
「ハッハッハ!!そうだったな!!噂通りならこの列に並ばなくてはならんな」
「しかし、副団長殿であるならこれ位…」
「バカか、民衆を敵にしてどうする。ワシ等は民有っての騎士団だ。守る物が居なくなったらどうするのだ?只の武力組織に成り果てるでは無いか」
「ハ!!失礼しました!!」
「それで、ニコラスも試しにやってみたらどうだ?お前の様な戦闘凶にはあの様なイカした武器は好みであるだろ」
「お恥ずかし…ですが宜しいのですか?万が一にも」
「持ち帰れるだけでも収穫が有るってものだ。誰の手に渡ってもだな」
「それでは私と私の部下にもやらせてみます」
「ならまずは買い物をしなくてはだな」
ラキュアはそんな彼等のやり取りなど知らず、変わった兵士の集団がお店に入ってくのを横目で見ていた。
…お偉いさんの専属騎士かしら…真っ白で綺麗な鎧でしたよ…
すると店内が荒正しくなり従業員達が走り回る音がラキュアに伝わっていた。
『アゴンさん何か凄い事になってますね?ってあれ?アゴンさん!?』
「はいお嬢ちゃんお代じゃよ」
『ああああ毎度アリィ!!』
…アゴンさん居ないし!!…
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「おい聞いたかドド。最近やけに兵士が多いと思ったら聖騎士が到着してたらしいんだ」
「あぁ聞いたぞ。ガーデル…もしかしてお前達を追ってここまで来たのかも知れないな」
「くそっ!!…助け出す前に詰みそうだぜ…俺達じゃ水門は通れないしな…」
「奴らが引くまで大人しくした方が良いのかもな…それに彼等は人族だ。捕まったら時は脅された事にする算段だし、殺される事は無いさ」
「だと…良いがな…」
「それとな、例の嬢ちゃんだが何やら噂に成ってるらしいぞ」
「なんだよ、何かやらかしたのかよ!!折角匿ってやって知り合いだかにも引き渡したってのに!!」
「いやぁそれがよ」
ガランガラン
「はぁ今日もラキュアさん見つかりませんでしたね」
「やっぱりあの露店街には居ないのかもにゃ…」
《だがあそこで居なくなったんだろ?最悪誰かに連れ去られた事になるぞ…》
「そもそも数日は経ってますしね…どこに行ったのでしょうか…」
「んしょ、マスターいつものマタタビ風味サワー頼むにゃ」
「どうやらヴィンティーニ商会の看板娘に成ってるらしくてな、小さい女の子が主婦に人気でドイツもコイツもその話題ばっかさ」
「それ本当にあのお嬢ちゃんなのか?眼帯でもしてれば間違いないんだろうが」
「間違いないらしいぜ、だが服は俺達がみた赤ドレスとは違うらしいから…」
《おい!!なんだその情報は!!ヴィンティーニ商会に眼帯の女の子って言ったか!?》
「おぉおおぉ!!?ビックリしたぜ大賢者様よ!!珍しいな、お前さん達もその噂知ってるのかい?」
「噂?噂は初耳だにゃ」
「メイビス様…」
《すまぬ、マスタ―その話もう少し詳しく聞かせてくれ》
「あ、あぁまぁ良いが…噂の話しか話せないからな?」
「にゃ?」
「いや何でも無い、言い間違えだ」
《あぁそれでいい頼む!!》
メイビス一向がラキュアである噂を耳にしたのは昨日の夜での酒場であった。
翌日、彼女達はラキュアへ会いにヘイソンのお店に向かう。
「おいおい余り変な事言うなよ」
「すまんすまん…口が滑る所だったぜ…まだ酒が入って無くて良かったわい」
「それにしてもあの冷静な賢者様があんなにもなるとはな…まさか探し人って…まさかな」
「だよな…まさかな…」
「あのマスター何か意味深な言い方してたにゃ」
《ん、何のことだソマリ》
「い、いやぁ何でも無いにゃ。賢いメイにゃんでも疑問に思わなかったならきっと間違いだにゃ」
「なんですかその言いぶりは…まるでメイビス様が今日は…」
「カイン、それ以上はダメだにゃ!!」
《良く分からんが失礼な奴等だな!!》
ラキュアの情報に我を忘れたメイビスはバカでも分かる違和感に気づけなかったのであった。
「むにゃむにゃ~!!バカって何だにゃ~!!」すぴ~
「ソマリさんまた酔い過ぎて食器に頭浸けて寝てますよ…」




