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22話:初日は小手調べ


ラキュアは噂で集まる主婦達により揉みくちゃにされながらも、中央広場での宣伝を終え開店の為にお店に戻る事にした。


『はぁ…酷い目に遭いましたよ。宣伝になったのかも今一分かりません…』

「そうかい?結構手ごたえあったと思うぞ!?看板やチラシ何か立ち止まって見て貰う事すら中々無いからな。市民に興味が沸くモノが有ってよかったな」

『何ですか、私はモノ扱いだったわけですか…』

「ガッハッハ!!それもこれもヘイソンの思惑通りさ!!可愛くて目立ってて最近噂の情報もしっかり把握している所に目を付けて更に看板持たせて宣伝させたんだからな!!ガッハッハ!!」

『さっき噂なんて知らないとか言ってたじゃないですか!!騙したんですか!!』

「本当に知らなかったぞ?ただヘイソンなら絶対に情報には入ってるだろうって思ってな。主婦の声もしっかり聞き届ける商人の鏡見たいな奴だからな。気が利くし指示は細かいし、アイツは出来る男だ。」


…出来る男というより、癖の有る男ね!!ある意味要注意人物じゃないですか!!知らないうちにハメられた訳ですよ全く!!…


ラキュアは不服と言わんばかりにプリプリと怒りながらお店へ戻った。


「お帰りアゴンとお嬢ちゃん。宣伝はどうだった?」

「いやぁあそこまで人目に付くとは思わなかったぜ!!なぁお嬢ちゃん?」

『ふん!!そんな事知りませんよ!!私はただ揉みくちゃにされてただけ何ですからね!!』

「ふむふむ…流石ですねお嬢ちゃん。主婦達を味方につけれましたか。これなら噂の方は時期に広がりますかね」

「それでよ、そろそろ開店なんだがお嬢ちゃんにお店やらせて良いのかい?」

「大丈夫でしょう。思ってる以上に賢いと思いますので…私達で少し様子を見ながら任せてみましょうか

「そうだな、俺の店も直ぐ後ろだしな」

『…』


…やっぱり私も働くんですね…雑用係でも良かったんですよ?普通新人にお店なんか任せませんよ?…


「ヘイソンさ~ん!!こちらの準備も粗方終わりましたよ」

「有り難うデンク。それではお店を開きますか」


お昼前にお店が開店し、私は早速大鎌ブースの店員として椅子で番をする事になった。

最初の一時間ほどは暇で暇でしょうがなかった。特に何もせずただボーっと椅子に座っているだけなのだ。

当然道行く人達も、大鎌が台に置かれただけのお店を横目で少しみて通り過ぎていく。それを見かねたアゴンがデンクを連れてやってきた。


「どうだいお嬢ちゃん」

『う~ん人が来ないです』

「だろうな、そう思って色々持ってきてやったぞ。デンク、適当に置とけ」

「分かりました」ガタン


デンクが小さな荷車を引っ張って来た。それをブースに停め、アゴンが荷車の中を物色し出す。


「ほれ、これとかこれと…これとか…」

『おぉ…あれ、この前の兵士の鎧とかも有りますね。って事はもしかして…』

「これから大鎌の切れ味を見せる為、様々な物を持って来たんですよ」

「そういう訳だからお嬢ちゃんも手伝えよ」


アゴンは荷車からブースの台に物を乗せて行き、ゴツゴツした何かを手渡された。

ラキュアが首を傾げているとアゴンが道端を行く人達に向かい声を発した。


「さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!今、ココに置いてある大きな鎌が御座います。だが、ただの大鎌だと思ったら大間違いよ!!実はこの大鎌、何でも斬れる優れもの、ただ斬れるのでは無く、力を入れなくとも綺麗に斬れるとんでも無い品物よ!!胡散臭いだぁ?だったら見て行け!!これから始まる大鎌切断ショーを!!」


アゴンがそう言って両手で何かを持つラキュアに向かい、指を伸ばした手の甲を横に動かした。


…あ、これを斬れって言う合図ですよね?はいはい分かりましたよっと…


『じゃ、じゃあ行きますね~…』スパ ボト

「……!!」「!!?」「まぁ!!?」「…!!!?」『おおこれ…』


ラキュアは台から横にはみ出た大鎌の刃に上下に押さえて持った物を横にスライスする様に移動させた。

横に動かしたソレは真っ二つに斬れその場に落ちた。

それを偶々居合わせた通行人達が一瞬驚き立ち止まる。


…あれ、このゴツゴツした奴ってカボチャかい!!私も驚いたったよ!!…


「どうでしょう、この切れ味!!この儚げな小さな子供でもあっさり切れてしまうのです!!」

「だがこんなのは序の口だぜ!!次はコイツを楽々斬って見せるぜ!!」


…うお、これは兵士の兜ですね、次はこれを斬れと…


うんしょ、うんしょ

『それでは行きま~す!!』スパ ガランガラン

「おおぉ!!?」「こ、これは…」「きっとガラクタさ…」

「どうだい?見たか?まだまだ行くぜ!?次はこの彫刻石だ!!」スパ おおお!!!

「次はこのブヨブヨで斬りにくい脂肪の肉だ!!」スパ おおお!!


 次はこの スパ おおおお!!! 次は… おおお!!


気が付けば大鎌ブースには人だかりが出来て居て、通行人は観客と化していた。

硬い物から斬りにくい物等を次々と両断していく大鎌のお披露目会場である。


「流石に信じて貰えたか?そんな大鎌の切れ味を味わえるキャンペーンを期間限定でやってるんだ。詳しくはこの壁に立て掛けた看板を見てくれ。それとそこのお嬢ちゃんにも看板を持たせる」

『ひぇぇ私またこれやるんですか!!』

「つべこべ言わずに顔をだせ!!」スル


…嫌な予感しかしないよぉ…


「ふむふむ」

「今までに無いな」

「この鎌ただで貰えるって本気かよ」

「切れ味が半端なかったぞ。こんなの欲しくなって当然だ」

「この小さな子供でも斬れちゃう何て不思議ね」

「私はこの子の方が欲しいですわ」

「そうね、確かに欲しいわ」

「息子の嫁に来てもらえないかね」


…途中からベクトルが私に向くのやめて欲しいのですが!!だから看板持ちたく無かったんですよ!!…


「こらこら、その子は売り物じゃないんだぞ。でもまぁ、ある意味その子も期間限定だがな!!ガッハッハ!!」

「あらまぁ!!この子はココで働いてる子供さんじゃないの?」

「コイツはある意味借り物だ、大鎌と一緒で暫くしたら無くなるぜ?この店に来るなら今だけだぞ!!」

「何てことなの!!」

「あら!!この子よく見たら噴水少女だわ!!」

「これが妻から聞いた例の子供か…確かに可愛いな」

「どれどれ…おお…」

「この限定期間は見逃せないわね!!」

「そうね!!ならせっかくだし毎日硬い物でも持ってこようかしら」

「息子の嫁に来てもらう為に毎日通わせてアピールでも催促させようかな」


…あれ、何か可笑しくない?ここ大鎌のお店ですよね?趣旨が違ってきてる様な…

…キャバクラ見たいな事になってませんかね?嫌ですよ私、そんな接待できませんからね!!?…


そんな中、チケットを持った女性がラキュアの前に現れた。


「こんにちはラーちゃん♪早速で悪いんだけどこれ、斬って貰っても良いかしら?」

『ら、ラーちゃん!?」

「衣類店のお姉さんがそう言ってたわよ?ラーちゃんのお店で切断活動してるって。此処じゃ無いのかしら」

『あ、いえ!!ここで合って居ますよ!!それよりこれ…良いんですか?それに危ないかも…』

「勿論よ。実はね、他界した夫の指輪が取れなくて困ってるのよ。新しい夫から指輪を受け取りたくてね…力も入れずに斬れるなら力を入れて壊すより遥かに安全だと思うの」


…まぁ確かに。何でも斬れるから指まで斬り落とす可能性もあるけど、力の入れ方が分からないのに、力を込めて指に嵌めた指輪を壊す方がよっぽど危ないよね…

…それより結婚指輪が呪いの指輪って…ある意味そのままだね…


『分かりました、くれぐれも慎重にお願いしますね…』

「えぇ勿論よ♪」ササ スポン

「ラーちゃん、本当に有り難うね。はいこれお代よ。これでやっと笑顔に出来そうだわ♪」


切れ目が入り緩くなった指輪を抜き取り、嬉しそうに笑って見せた女性は、ラキュアに小物サイズ用のお題を渡した。

お代は1銀貨 25銅貨 5銅貨 の3種類で、大中小でそれぞれ価格を付けているが、一品に付き切断回数は無制限にしてある。


『こちらこそ有り難う御座います!!』

「それとね、このチケットなんだけど、私には武器は要らないしちょっと使い道に困ってしまうのよね…でも折角ですし大鎌持たせて貰えるかしら?」

『は、はいどうぞ!!試しに握って見てください』

んぐぐ~!!ふぅ…

「私には駄目だった見たいね♪私はこれで帰りますわ。ラーちゃん有り難う、またね♪」


その後、買い物を済ませ、その場で斧を試しで持つ人は後を絶たなかった。しかし初日という事か、何でも斬れると言う噂が広がる前に15時を回ってしまい閉店した為、切断しに来るお客は来なかった。


「やっと終わったか~」

「ラーちゃん朝からよく頑張ったね」

『うん、大分疲れたよ…』

「お嬢ちゃんお疲れさま。垂れ幕下げるから斧を持ち運んでくれるかな?」

『はーい分かりましたヘイソンさん。それにしても商売という程売り上げになりませんでした…』

「なあに、気にする事はないですよ?本番は明日からですからね。今日はその小手調べと言った所です」

『こ、小手調べ…』

「そうです、明日からはもっと忙しくなりますよ。皆期待してますからね」


…いやぁ~期待しないで頂きたいです!!それに今日以上に揉みくちゃにされたくもないよ!!…


『そう言えばチケットに関して少し気になる事が有るのですが良いですか?』

「おや、なんでしょうか?」

『あのですね、今日来たお客様の中に大鎌に興味が無かった人が居まして、そう言う人達は余り嬉しい特典にならない様な気がしたんですよ』

「……ふむ、確かに…兵士達の反応ばかりを気にしてましたからね…」

『それで何ですが、このチケットに別の使い方も用意して老若男女が楽しめるサービスに出来たらなと思いまして、例えばこのチケットで食堂の食べ物か飲み物を無料で提供できる様にするとか、大鎌の切断料を枚数に応じて大中小の料金を無料にするとか』

「…!!!?」「ん?」「…」


…あれ、なんか驚いた顔をしているんだけど…


「ラーちゃんって商才あったりするんですかね…」

「既に計算も出来る…普通の商人の子供よりはるかに利口だぞ。売り上げに関しては何とも言えないが客にとっては嬉しいサービスに違い無いな」

「子供とは思えない発案力…良いですね。ちょっとした軽い物と一緒に食堂で何か食べて貰えるかも知れませんね。明日からはそれで行きましょうか。デルクは各コーナーにチケットの仕様変更を伝えて明日からお客にも伝え直す様に言っておいてください」

「わかりましたヘイソンさん!!」

「お嬢ちゃん…益々期待が出てきましたよ。私は楽しくて仕方ありません」

『は、ハハハ…』


…余計に滾らせてしまい私のハードルが上がってしまったぞ!?良いのかそれで!!…


初めての店番は終わり、明日の期待を込められたラキュアは、忘れたいと思いながらも早々に食事と身支度を済ませ眠りに着き、この日を終わらせる事にした。

「どうしたヘイソンそんな顔をして、悩みごとかの?」

「いえ、その…ラキュアのお嬢ちゃんが余りに多才でして…利口で商才もありカリスマも持ち合わせて居ます…それに小さいながらもアイテムポーチも持ち合わせておりました…」

「そ、それは本当か!!?それにあの子はきっと美人に育つだろうな…孫の伴侶に…いや流石に無理か」

「ですよね…私もデキの良い息子であればしがみついてでも…ですが恩人にそんな事は出来ません」

「何処かの貴族か大商人の娘なのかのう…小さいとは言え収納ボックスなんぞ子供に普通持たせんぞ…」

「私達は凄い子供に出会ったのかもしれませんね…バカ息子に才能が有れば…」


その日、一人の青年が夜な夜な大きなクシャミをしでかし、一部の住居人が目を覚ましたと言う。


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