18話:商人のお宝
私はヘイソンさんのお店に来て大鎌の切れ味を確かめた後、これから使う二階の自室へと案内される事になった。
『あれ?お店の方は良いんですか?』
「今は開店中だからね。お嬢ちゃんの大鎌を持ち込んで準備をするには迷惑になる。だから明日の朝一に準備をしようかと思って居てね」
『それもそうか。こんなお昼過ぎからじゃ準備なんて出来ないですよね』
「ですから先にお部屋に案内をしたいと。念の為お部屋に大鎌も持って来て下さいね。でも床を引きずら無いで下さいね?」
『は、ハイ!!引きずらないで持っていきます!!』
…そりゃそうだよね!!カッコいいからって部屋でまでやるのは…言われ無かったらやってたけどね!!…
私は大鎌を肩に背負い二階の自室になる部屋に案内された。その途中、私を見て少し顔が引き攣っていたヘイソンさんの顔が見えた。
「ハハ…凄いですね…」
…なんとなく分かるよ、こんな小さな子が引きずる訳でも無く軽々と大鎌を持ち歩いてるんだもんね…
でも引きずってる時より酷い顔するのはやめて下さい!!この持ち方をさせたのは貴方なんですからね!!…
「こちらです。部屋が大きすぎても仕方ないと思い狭い部屋を選んだのですが少々埃被ってます…」
『おぉこれは…仕事部屋?』
「そうですね…今は使ってない執務室ですね。ベッドでは無くソファで寝て貰う事に成ると思いますが…」
『この高そうなソファで寝れるんですか?凄いですよ?』
「あはは…そうですかね…」
…何処かのアジトみたいにゴツゴツの床じゃないだけましですよ!!…
…でもミルフィちゃんはフカフカだったけどね!!…
「お嬢ちゃんは眼の事もありますからね…誰かと同じ部屋は避けた方が良いかと思いましてこんな形になってしまいます」
『全然大丈夫です!!むしろ落ち着きます』
「それは良かった。では暫くここで寝泊まりをしてもらいますね。夕食の時に呼びに来ますね」
『分かりました有り難うございます』
ヘイソンさんは部屋から出て私は早々に高そうなフカフカソファに飛び込んだ。
『ぶっはぁぁ!!ッこほっこほ!!埃が…先に掃除が先だったか…』
コンコン
「お嬢ちゃん失礼するよ。掃除の道具を忘れていたから持ってきたよ」
道具を持ち込んだヘイソンが埃と戦ってるラキュアと遭遇した。
『ゴッホゴッホ!!ヘイソンさん!!ありがとうゴホ!!』
「あぁ遅かったですね…顔も服も酷いですね。でも子供らしくて安心しました…。このまま掃除を済ませて後で水浴びでもしましょうか。日が沈まない暖かい内に綺麗にしてしまいましょう」
『す、すみません何から何まで…ゴホ!!』
…私、早速迷惑かけてしまってる気がしてならない!! …
「さぁ行きますよこっちです。着替えはコチラで用意しておきます」
『は~い』
私はヘイソンさんと掃除をした後、汚れた体を綺麗にするべく浴室に案内される。
「一応共同になってますので使う時間は決まってますが、お嬢ちゃんが使いたい時は私に言って下さい。時間を合わせて他の従業員と被らない様にしますので」
『分かりました!!』
…やはり迷惑なのでしょうか!!…ごめんねこの眼が邪魔で…
ジャバー!!
『ふんっふんっふんっふん!!』
私は桶で体を流しタオルでごしごししている。
『あ~あ~~~!!浴槽を期待していた時期が私にもありましたよっと!!でも最初から水浴びとしか言って無かったもんね…お風呂に入りたいよ…この世界ってお風呂は無いのかな…』ごしごしジャバー
私は勝手な期待を込め、勝手に落胆していた所に声が掛かった。
「お嬢ちゃんごめんよ。子供服が無くて布きれで暫く我慢してもうけど良いかな?」
ごしごしザバー
「大丈夫ですよ~!!」
「すみません、着替えとタオルを置いておきますね」
ガラガラ
『フぅ!!すっきりした!!』ふきふき ガサガサ すぽん
…ふむ…確かに布服だ…彼シャツ見たいな感じになってる件…
私はすっきりした身体で自室に戻り、綺麗になったソファーに再び飛び込んだ。
『ふぅ~良いねぇ!!この歳でソファーで寝るとか駄人間だった過去の私もびっくりだわ!!それにしても凄く深みのある部屋。本棚もぎっしりだし狭さと相まって落ち着けるよ!!』
…やっぱり新しいお部屋と言ったら見回る事が礼儀と言うモノよね…ガサガサ…
『なになに…要望書…会計…建築基準の概要…指名手配書…取引先の情報…事業詳細…領主宛て…王国への補助…冒険者の捜索願…裏切り者の噂…荷馬車交通情報…わぁまだまだ沢山ある…』
…あれ、これ私、絶対読んじゃダメな奴だよね…翌々考えたらここ執務室じゃん?良いのかな?こんな所に住んでても…
『あれですね、分からない振りでもすれば良いのだろうか…きっと私が幼女だからこそこの部屋にしたんだよね…そうだと思う。なんか楽しそうな本でも無いかと思ったけど…流石に商売に関する機密性あふれるモノしかないし遠慮しようかな…ん、これは…【魔蔵空間】因子の名簿と収納ボックスについて…なにこれ少し気になる…』
私はついそれを手に取り読んでしまった。
【魔蔵空間】とは種族対戦にて人族が手にした神秘の力で有り、劣勢であった人族から突如現れ、後に伝説の勇者と成った人間達が保有していたとされる。
その伝説達の子孫の一部が稀に能力を受け継ぎ【魔蔵空間】を開花させ、常人よりも強い人として生まれてくる。そんな勇者因子を持つモノを種馬の様に扱う国も存在するのだとか。
しかし勇者因子は薄れていくばかりで勇者候補として生まれる事が殆ど少ないと言う。
この名簿とはそんな勇者因子は有るが開花しなかった家族や捨てられた子供達の情報であり商人の可能性を少しでも考えた買い取り名簿の様だ。
…やばいカオスじゃないですかね…勇者の種馬って…この国ってもしかして…
収納ボックスとは通称アイテムポーチと言われ、様々なアイテムを自由に仕舞い、取り出す事が出来る商人の宝と言われている。
形は様々で、背中に背負う鞄やハンドバックや服のポケット等で、その殆どが実に珍しい色や形、装飾が施されているのだとか。
しかし、収納出来る容量は決まっているらしく無限に仕舞えるモノでは無い。
存在自体が希少で製造工程は全くの未知らしく、発見者は殆どが魔物の巣であるダンジョンで見つけたと言う。
代々的に受け継がれ所有するモノも居るらしく、希少性及び実用性が非常に高い為、所有者は命を脅かす呪いのアイテムとも言われている。しかし富を生み不自由な暮らしが無くなる為、商人はおろか、冒険者達からも喉から手が出るほど欲しいお宝なのだとか。
一部の説にこのアイテムポーチとは【魔蔵空間】保有者の死骸のマナが蓄積して、出来たのでは?と言う仮説を思い付き、富豪が勇者因子を持つモノを殺したり、死体を買い取ったりと言った残虐的な行為が一時期広がり、種馬として広がった命が途絶えてしまった時代もあったとか。
しかしこの実験の様な行為は実らず因子を持つモノではポーチは生まれない と書かれていた。
他にも容量の調査方法や、何が入るのか、どの程度まで入るのが確認されているか、などの様な事も書かれていていた。
ポーチには生物は入れられなく、魔法などの現象も入らない。しかし宿る物は収納でき、例えとして精霊が宿った宝石等の魔法のアイテムは収納が可能らしい。
勇者の持つポーチは規格外であり、城塞を囲む水堀の水を全て呑み込んだと言われており、国宝として守られているモノもある。
…深いですね…私のカバンもアイテムポーチなんだよね…どのくらい入るのかな…でも私の大鎌入らなかったよね…どういう事だろう…
『へっくしょん!!ヤバい風邪ひくかも!!水浴びして彼シャツって結構寒いね…この服じゃ…あ、そう言えばアイテムポーチにあれがあった筈だ!!』
私はアイテムポーチからあれを取り出す。そうアレだ、不覚にも変態神様が私に着せていた服である
ガサガサ
『じゃじゃーん!!え~ん~じ~ふ~く~』
『ふふふ!!あ、でも私が着てたのって16歳の身長で着てたから結局合わないか…まぁ寒いし取りあえず着ようかな…』
ササッササササ ガバ スポン ピタ!!
『えちょ、どう言う事ですかね…サイズがぴったりに成ったんですが…何で出来てるんですかこれ!!』
私は思わず、服の裏にあるラベルの確認をしてしまった。
ワシ特性、伸縮自在のすーぱー園児服 (ブルー)
耐久性100%
防水性100%
防炎性100%
防弾性100%
防刃性100%
防魔性100%
防衝性100%
小さいラベルにぎっちり書き込まれていた。
『なんじゃこりゃっ!!!!!!!!!!!?』
私はドスの効いた声で、着ている服を両手で掴み叫んでいた。
ガサゴソ
『おお…引き出しに皺くちゃに丸めた様な跡が残ってる手紙が…なになに…』
ぱぱへ
僕も大きくなったら立派な商人になって沢山の人に笑顔を届けたいです。
だから僕が15に成ったら、ぱぱ達と一緒に荷馬車の旅に出ることを許して下さい。
僕もパパや爺と一緒にお仕事がしたいです。僕の夢を否定しないでください。
ヘイソンぱぱ見たいに成りたいのです。
『…』
私はそっと引き出しに戻した。




