神託の悲劇【終】
これでフラグ回収しました。信託のお話はこれで終わりですが、後一話載せます。
因みに今回はマリア視点で語って居ます。
『ソマリ、ありがとう。もう下ろしてくれ』
ソマリはアルカードを降ろした。
本当は下ろしたくなかったのでしょう。でも彼の訴える目には叶わなかった。
ソマリは喉から声が出てしまっていた。
ぬにゃぁ…
アルカードはその後、シオンさんと顔を合わせ、私とルークにも合わせ、
決意をし彼女へと向かった。
アルカードは探る様にゆっくり前に出た。そして少しずつ声を掛けながら…
『ティルミア…』
そう言って口を開けた。彼女の名前だわ。
そして少しずつ近付くの。
『ティルミア…やっと見つけたぞ…どうした、俺だよ…』
彼は語り掛けるように話すの、でも彼女の背中は何一つ反応はしない。
『なんだよ、忘れちまったのかよ…
ティルミア…こっちを向いてくれ、君の顔が見たい…』
そう言ってまた少し、歩む。でも
シュパン
彼が、彼女を求める様に伸ばした指先が切り落とされた。
思わず手で視界を塞いでた。
でも微かに見える隙間から、アルカードは気にも止めずに腕を伸ばしたまま歩いたわ。
『っ…凄いボロボロじゃないか…さぁ早く帰ろう、
それにそんなモノ君が振り回してたら危ないぞ…さぁ…ティルミア…』
彼女は振り回した勢いかコチラに向いていた。そしてアルカードの横顔は何処か嬉しそうに、儚げに微笑んでいた。こんな彼の顔は見た事も無かった。ぶっきらぼうでグイグイくる彼の性格が嘘みたいに思えた。
彼はまた一歩、彼女に歩む。
でも彼女の腕は振り子の様に反対から振るわれた。
シュパン
今度は肩を斬り落とされた…彼の血は吹き出す事は無い。私達が既に銀を盛ったから。
彼は悲鳴の一切をあげなかった。
彼は進む…。
『どうしたティルミア…寒いのか、震えているよ。今…暖めてあげるから…』
彼は残った左手を抱き寄せる様に差し出した。
それでも彼女は…大鎌を振るった。体を振るわせながら。
彼の左腕も又、二の腕から切り取られていた。
バランスが悪くなり転びそうになる。それでも尚、抱き寄せる腕も無く進んだわ。
『そうか…俺じゃ嫌か…
この腕じゃもう、君を抱き締めれないな…』
彼は自分の、両の腕を見てそう言った。
彼女をこの手で護れず、遂には包み込む事も叶わなくなった。
彼女の髪も、頬も、指さへも触れる事が…
彼は…泣いていた。
それでも彼は…歩む…
彼女の手は酷く震えたていた。
手に握る大鎌が音を立て、更に震え出す。
でも彼女は振るう。しかし、震えた出した鎌は何かに掴まれた様に重く、
軸をズレ、彼の脚へと振り切る。
アルカードは倒れ出す。彼女に向かって、前に…欠損し、支えるパーツは既に無い。
これが最後の前進。そして斬撃は……来無かった。
彼女が片腕で包んでいた。
切り伏せる筈の武器は落ち、もう片方でも、そっと包んだ。
『すまない…ティルミア…遅くなった…』
彼女の表情は変わらない。
しかし、目からは涙が溢れ出していたわ。
彼は、彼女の柔らかい胸元に抱き締められ、首だけを動かし、見上げていた。
彼女の涙は彼の顔に滴る。沁みる涙を拭く事も出来ず受け止め続ける。
『なぁティルミア、このまま座れるかい?…娘の顔が見たいんだ』
彼がそう言い、ゆっくりと腰が落ちる。彼女はきっとこれ以上動けないのだと思う。
柔らかい胸元から柔らかい膝へと、膝枕の視線の先には彼女が必死に護ってきた子供が居る。
大木に横たわる少女を見て彼は微笑んでいた。
『気持ちよく寝てるじゃないか、ちゃんと護ってくれたんだな…
ありがとうティルミア…。君のお陰でこうして会えた…』
彼女は前だけを見てアルカードの頬に両手を包んだ。
『ラキュア…幸せに出来なくてゴメン、最後に会えて…本当によかった』
彼は銀が滲み出る二の腕を、届く事の無い娘に向かい伸ばしそう言った。
『ティルミア、ラキュア、愛してるよ』
彼が此方に首を回した。それはその時だと私は分かった。
『シオン、後は頼む』
掠れた声を張り、シオンさんが無言で頷いた。
「最後の詩を読み上げよ!!」
魔方陣は歪な色から段々明るく光出す。
詠唱は始まった。
<<魂に宿る精霊達は我が魂と共に共鳴するだろう>>
<<汝が心に罪は無からん 今こそ我らが1つと成れ>>
<<理を歩みし永久の化身よ 災いの輪廻から逸脱し>>
<<己が魂と乖籬せよ>>
<<刻み込め>>
<<【災魂裁落】>>
おぞましいほどの光が溢れ出した。それは天を一直線に駈け昇り、終わりの無い柱となった。
シオンさんは異常に気付いたのでしょう。私達は難を逃れ光に呑まれずに済んだわ。
光が完全に消えた時、思いもよらない光景を目にしてしまった。
中心である大木は大樹と化し森全体を枝で覆っていた。
大樹の先には夫婦の亡骸、更に学生達全てが倒れ伏せていた。
私達は学生達一ヵ所に運び生きている事を確認した。
「どういう事だ!!何が起きた!!」
「僕にも分からない…こんな事は見たことも聞いたことも…読んだことすらないよ!」
二人が興奮のあまり驚きの感想を述べていたが、途中子供が居ないという事実に我を取り戻した。
すると大樹の中か翡翠色の光が見えた。
「シオン!」
「あぁ分かっている、だがどうする」
「居るなら殺すしかない、悪いが君に窪みを開けてもらうよ。私は詠唱で備える」
「マリア、シオンの援護、それと周囲の警戒」
私達は大樹の膨らみを切り開いた。
中にはアルカードとティルミアの娘が呼吸を荒くして眠っていた。
生きている事は確定、私達三人は
顔を見合せカインが槍で仕留める。
筈が、
少女は眼を開く。
少しずつ、右目から、少しずつ、少しずつ、ゆっくりと、少しずつ、開く。
赤く輝いた綺麗な瞳が。
そして、もう片方の目は我慢が出来なかったかの様に突然見開かれた。
ヌチャ…ギョロ!!
瞼に溜まる黒い血が、唾液が口の中で伸びた様に糸を引き目が開くき、痙攣した瞳が写しだされた。
心臓を握られた。怖い、恐い、恐怖。
それを感じさせたのは少女の惨たらしい眼球であった。
虹彩が赤く、それ以外がどす黒く、瞳の真ん中は真っ白で…
しかし、眼球に赤く浮き上がる血管が脈を成し少女を呼び起こした。
眼を抑え頭を抑え、もがき苦しみながら苦痛の呪文を唱えていた。
痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!
少女は叫び続け、目と目が合う。私達は動けない。ルークの詠唱が止まった。
動けて居るのはシオンさんだけ…。彼の手はカタカタと震えながらも、勇気を振り絞り、少女目掛けて槍を突き放った。
しかし、不気味に漂う白黒の斑蝶がシオンさんと少女の間を憚り、その衝撃で少女は大樹の中へと押し込まれる。それでも動きを止めようとせず、左目をギョロギョロさせながら立ち上がりると、そこには見覚えの有る大鎌が少女の手の中に握られていた。
少女の左眼から更に血が溢れだし、瞳から漏れ出る夥しいほどの魔力が大鎌へと流れてく。それはやがて、黒い光纏い、私達目掛け真上から大鎌を振り下された。
その瞬間、シオンさんは動けない私達を突飛ばし、大鎌から放たれた眩い光と共に、大地を大きく切り裂いた。直撃をま逃れた私達は、底の見えない奈落の谷へと墜ちて行く。
にゃにゃー!!みんなどうしたにゃ!!
にゃにゃー!!みんな顔やばいにゃ!!
にゃにゃー!!みんな谷底に落ちたにゃー!!!!?




