第四十四話 四色の牙
灰色の霧と、四色の光が正面から激突した。
――ドォォォン!
森全体が震える。
白い光が剣を包む。
緑の光が大地を走る。
青い光が激流のように渦巻く。
赤い光が身体の内側から燃え上がる。
「グオオオオオッ!」
ワーグが吠えた。
巨大な口から灰色の霧が噴き出す。
「すべて喰らってやる!」
霧が四色の光へ絡みつく。
「くっ……!」
白の剣士が踏み込む。
白い剣が灰色の霧を斬り裂く。
しかし、その隙間から狼が飛び込んできた。
「させない!」
緑の弓使いが弓を引く。
矢に緑色の光が集まる。
放たれた矢は地面へ突き刺さった。
次の瞬間――
地面から緑の蔓が伸びた。
「なにっ!」
蔓は瞬く間に成長し、飛びかかってきた狼の脚へ絡みつく。
さらに周囲の草木が一斉に芽吹く。
灰色に染まっていた森の中に、緑の命が広がっていく。
「植物は、まだ死んでいない!」
緑の弓使いが叫ぶ。
「色が残っている限り、僕はこの森の力を借りられる!」
弓を引く。
その背後で木々が揺れた。
緑の光が枝から枝へ走る。
蔓が地面を這い、灰色の兵士や狼の足を絡め取っていく。
「今だ!」
白の剣士が走る。
緑の蔓に足を取られた狼の群れを突破する。
「道を作る!」
緑の弓使いが次々と矢を放つ。
矢が刺さった場所から、草が生え、蔓が伸び、枝が広がる。
まるで森そのものが、四人を守ろうとしているようだった。
「すごい……」
白の剣士が呟く。
「これが緑の力か」
「まだ終わっていない!」
緑の弓使いが叫ぶ。
「青!」
「任せろ!」
青の槍使いが駆け出す。
槍を地面へ突き立てた。
「――流れろ!」
その瞬間。
足元の地面から青い光が湧き上がった。
水。
一本の細い流れが生まれる。
それは瞬く間に太くなり、川となって走り出した。
「おおおおっ!」
青の槍使いが槍を振る。
川の流れが呼応する。
激流が渦を巻き、灰色の狼たちをまとめて押し流した。
「水は止まらない!」
青の槍使いが走る。
「どれだけ塞がれても、道を探して進む!」
槍を突く。
その動きに合わせるように激流が方向を変える。
岩を避ける。
木々の間を抜ける。
灰色の霧を押し流す。
青い水流が森の中を駆け巡った。
「これなら!」
緑の弓使いが叫ぶ。
青の激流が、緑の蔓へ触れる。
すると――
蔓が一気に伸びた。
「水が、植物を活性化させている!」
緑の光がさらに強くなる。
草木が芽吹く。
蔓が太くなる。
枝が伸びる。
灰色の森の中に、緑の道が生まれていく。
「いいぞ!」
赤の武闘家が笑う。
「俺も行く!」
赤いチャクラが燃え上がる。
白の剣士の背中へ手を当てる。
「チャクラを送る!」
赤い光が白へ流れ込む。
白い光が一気に強くなる。
「いける!」
白の剣士が剣を振り上げた。
その横を青い激流が走る。
さらに緑の蔓が大地を覆う。
四色の力が、初めて完全に噛み合った。
しかし――
「くだらん!」
ワーグが吠える。
「植物も、水も、すべて色だ!」
ワーグの身体から灰色の霧が噴き出す。
「ならば、すべて喰らう!」
霧が緑の森へ広がる。
緑の蔓が灰色に染まり始める。
「そんな……!」
緑の弓使いが息を呑む。
「緑が……!」
ワーグが笑う。
「喰らえ!」
灰色の霧が緑へ迫る。
その瞬間――
「させるか!」
青の槍使いが槍を振る。
激流が緑の森の周囲を走る。
灰色の霧を押し流す。
「水は、命を運ぶ!」
さらに赤のチャクラが緑へ注がれる。
「そして、チャクラは色を活性化する!」
赤の武闘家が叫ぶ。
緑の光が再び輝く。
灰色に染まりかけた蔓が、鮮やかな緑を取り戻していく。
「ありがとう……!」
緑の弓使いが笑う。
「今度は僕が返す!」
弓を引く。
巨大な一本の矢に、緑の光が集まる。
「大地よ――!」
矢を放つ。
地面へ突き刺さった瞬間、巨大な樹木が一気に成長した。
枝が広がる。
幹が伸びる。
根が大地を掴む。
ワーグの身体へ絡みつく。
「なにっ!」
ワーグが動きを止めた。
「今だ!」
青の槍使いが叫ぶ。
槍を振る。
巨大な激流がワーグへ突進する。
「グオオオッ!」
ワーグが押し流される。
しかし――
「まだだ!」
白の剣士が駆ける。
白い剣が輝く。
赤のチャクラが背中から流れ込む。
「行け!」
赤の武闘家が叫ぶ。
「四人の力を――!」
白の剣士が剣を振り下ろす。
「一つに!」
白い斬撃が走る。
緑の根がワーグを縛る。
青い激流がその身体を押さえ込む。
赤いチャクラが三つの力を活性化する。
四色の光が、ワーグを包んだ。
「グオオオオオオオオッ!」
ワーグが絶叫する。
灰色の霧が吹き飛ぶ。
巨大な身体が地面へ叩きつけられた。
ドォン!
静寂。
四人は息を切らしながら立っていた。
やがて――
ワーグがゆっくりと顔を上げる。
「……四色……」
その声は弱々しい。
「これほどの力を……」
身体が灰色の霧へ変わっていく。
「だが……魔王様は……」
赤い目が黒の居城を見つめる。
「お前たちを……待っている……」
最後の灰色の霧が消えた。
そこには、小さな灰色の牙だけが残った。
緑の弓使いが周囲を見る。
灰色だった木々。
灰色だった草。
その一部に――
小さな緑が戻っていた。
「……戻ってきた」
青の槍使いも川を見る。
灰色に濁っていた水が、少しずつ透明になっていく。
「水も……」
赤の武闘家が笑う。
「俺たちの色が、世界に戻ってきている」
白の剣士は黒の居城を見つめた。
「でも、まだ終わっていない」
遠くから――
地鳴りが響いた。
ドン……。
ドン……。
ドン……。
四人が同時に振り返る。
地面に巨大な足跡が刻まれていく。
その先から、低い咆哮。
「グオオオオ……」
緑の弓使いが弓を構える。
「この足跡……」
青の槍使いが槍を握る。
「知っている」
赤の武闘家が拳を構えた。
「アミムトだ」
白の剣士が剣を抜く。
灰色の森の奥から――
巨大な獣の影が姿を現した。




