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BLACK EATER ―色を喰らう魔王と、四色の英雄―  作者: まーサンタ
第五部 四色の邂逅

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第四十一話 それぞれの戦い


 朝。


 黒の森に、薄い灰色の光が差し込んでいた。


 四人の英雄は、それぞれ別の場所で目を覚ました。


 そして――


 それぞれの前には、灰色の狼たち。


 夜の間、一度も離れなかったらしい。


「……まだいるのか」


 白の剣士が立ち上がる。


 狼たちが唸る。


「俺を仲間から引き離すつもりだな」


 一匹の狼が前へ出る。


 白の剣士は剣を抜いた。


「なら、ここから出る」


 狼が飛びかかる。


 剣が閃く。


 一匹を退ける。


 しかし、別の狼が背後から迫る。


 白の剣士は振り返らずに剣を横へ払った。


「……!」


 狼が飛び退く。


 その隙に白の剣士は森の奥へ走る。


 だが――


 狼たちは追ってこない。


「……?」


 白の剣士が振り返る。


 狼たちは一定の距離を保ったまま、こちらを見ている。


「俺がどこへ行くかを誘導しているのか」


 白の剣士は立ち止まる。


 そして、あえて別の方向へ走った。


 狼たちが一斉に動く。


「やっぱりな」


 白の剣士は剣を握る。


「なら、逆に利用する」


* * *


 森の別の場所。


 緑の弓使いは、高い木の枝に立っていた。


 眼下には狼の群れ。


「……数が多い」


 矢を一本つがえる。


 放つ。


 ヒュッ!


 狼の足元へ突き刺さる。


 狼が飛び退く。


 しかし、別の狼が木を駆け上がってきた。


「速い!」


 緑の弓使いは枝から飛び降りる。


 着地。


 すぐに走る。


 狼たちが追う。


「なるほど……」


 緑の弓使いは森を見渡す。


 木々の配置。


 風。


 足跡。


「君たちは僕を殺したいわけじゃない」


 弓を構える。


「追い立てたいんだ」


 矢を放つ。


 木の枝を切り落とす。


 ドサッ!


 枝が狼たちの進路を塞いだ。


「僕をどこかへ連れていきたいなら――」


 緑の弓使いは森の奥へ走る。


「その道を逆に使わせてもらう!」


* * *


 川沿い。


 青の槍使いは水面を見つめていた。


 狼たちは川岸に並んでいる。


「川を渡れないと思っているのか?」


 一匹が唸る。


 青の槍使いは槍を構えた。


「ならば――」


 川へ飛び込む。


 ザブン!


 激流に身体を預ける。


 狼たちが慌てて川岸を走る。


 青の槍使いは流れに逆らいながら進む。


「水の流れは嘘をつかない」


 槍を川底へ突き立てる。


 身体を支え、一気に岸へ飛び上がる。


「お前たちが僕をどこへ追い込みたいのか――」


 狼たちを見る。


「もう分かっている」


 青の槍使いは走り出した。


 狼たちは追う。


 だが、その先には――


 古い橋があった。


「ここか」


 青の槍使いは目を細める。


 橋の向こうに、灰色の霧が集まっている。


「罠だな」


 それでも槍を構える。


「ならば、突破する」


* * *


 森の奥。


 赤の武闘家は、灰色の狼たちと向き合っていた。


「お前たち……」


 拳を握る。


「ずっと追ってくるな」


 狼が一斉に飛びかかる。


「だったら――」


 赤いチャクラが身体を包む。


「まとめて相手をする!」


 拳が炸裂する。


 一匹。


 二匹。


 三匹。


 狼たちが吹き飛ぶ。


 しかし、すぐに立ち上がる。


「しぶといな!」


 再び攻撃。


 だが、赤の武闘家は気づいた。


 狼たちは傷ついても、決して本気で襲ってこない。


「……やっぱり」


 拳を下ろす。


「俺をどこかへ連れていきたいんだな」


 狼たちが動きを止める。


「だったら、俺から行ってやる」


 赤の武闘家は走り出した。


 狼たちも一斉に走る。


 しばらく進むと――


 森の木々が途切れた。


 赤の武闘家の前に、崖が現れた。


「……ここまで追い込むつもりか」


 振り返る。


 狼の群れ。


 逃げ道はない。


「なるほど」


 赤の武闘家は笑った。


「俺をここに閉じ込めて、仲間から完全に離す」


 拳を握る。


「でもな」


 赤いチャクラが燃え上がる。


「俺は、仲間を探しに行く!」


 拳を地面へ叩きつける。


 ドォン!


 地面が震える。


 崖の端に亀裂が走った。


「うおおおっ!」


 さらに一撃。


 岩が崩れる。


 その向こうに――


 一本の細い道が現れた。


「見つけた!」


 赤の武闘家は走り出した。


* * *


 同じ頃。


 白の剣士は森の中を進んでいた。


 緑の弓使いも。


 青の槍使いも。


 赤の武闘家も。


 それぞれが、狼たちの誘導を逆手に取っていた。


 そして――


 森の中央。


 四つの道が、少しずつ一つの場所へ近づいていた。


 偶然ではない。


 ワーグが作った道。


 四人を分断するための道が――


 逆に、四人を再び引き合わせようとしていた。


 白の剣士が遠くを見る。


「……あれは?」


 木々の隙間。


 緑の光が見えた。


 同時に――


 遠くから水音。


 そして赤い光。


「まさか……」


 緑の弓使いも気づいた。


「……みんな?」


 青の槍使いが槍を握る。


「近い」


 赤の武闘家も笑った。


「やっと会えるな」


 四つの色が――


 再び同じ場所へ向かっていた。


 だが、その中央には――


 巨大な足跡が残されている。


 狼たちのものではない。


 もっと大きい。


 そして、その先から――


 低い唸り声が響いた。


「グルルル……」


 四人が同時に足を止める。


 森の奥。


 灰色の霧の中から、巨大な影が立ち上がった。


 ワーグ。


 群れを率いる灰色の狼が――


 四人を待ち構えていた。

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