第三十六話 四つの色
灰色の兵士たちが、一斉に押し寄せた。
百体近い群れ。
その先頭に立つのは――アミムト。
巨大な身体が、橋を揺らしながら迫ってくる。
「来るぞ!」
白の剣士が叫んだ。
四人が、それぞれの武器を構える。
白の剣。
緑の弓。
青の槍。
赤の拳。
灰色の世界に、四つの色が灯った。
「まずは数を減らす!」
緑の弓使いが矢を放つ。
ヒュッ!
一矢。
灰色の兵士の武器を弾き飛ばす。
二矢。
三矢。
次々と兵士たちの足元へ矢が突き刺さり、動きを止めていく。
「道ができた!」
青の槍使いが駆ける。
槍を横薙ぎに振る。
数人の兵士が吹き飛んだ。
さらに一歩。
突き。
回転。
薙ぎ払い。
激流のような連撃が、灰色の群れを押し返していく。
「すごいな……」
白の剣士が呟く。
「感心している暇はないぞ!」
赤の武闘家が叫ぶ。
その瞬間、左右から兵士が襲いかかる。
白の剣士が剣を振る。
ガキン!
武器を弾く。
赤の武闘家が拳を叩き込む。
「おおっ!」
兵士が吹き飛ぶ。
「なるほど」
緑の弓使いが笑った。
「息が合っている」
「そっちもな!」
赤の武闘家が答える。
だが――
地面が大きく揺れた。
ドンッ!
四人が同時に振り返る。
アミムトが迫っていた。
「雑兵に構っている場合か!」
巨大な前足が振り下ろされる。
「散れ!」
白の剣士の声と同時に、四人が別々の方向へ飛ぶ。
ドォン!
地面が砕けた。
アミムトが顔を上げる。
「小賢しい!」
その口が大きく開く。
「まとめて喰らってやる!」
アミムトが突進する。
赤の武闘家が迎え撃つ。
「俺が止める!」
「一人で大丈夫か!」
白の剣士が叫ぶ。
「やってみる!」
赤の武闘家の全身にチャクラが巡る。
赤い光が強くなる。
「はあああっ!」
拳とアミムトの前足が激突した。
ドォン!
赤の武闘家の足が地面を削る。
「ぐっ……!」
押される。
アミムトの力は、ワーグとは比べものにならない。
「赤!」
白の剣士が駆ける。
「分かってる!」
赤の武闘家が叫ぶ。
白の剣士がアミムトの側面へ回り、剣を振る。
アミムトが身体をひねる。
その瞬間――
「今だ!」
緑の弓使いが矢を放つ。
矢がアミムトの足元へ突き刺さる。
アミムトが一瞬、体勢を崩した。
「もらった!」
青の槍使いが突っ込む。
槍の一撃がアミムトの肩を捉えた。
「グオオオオッ!」
アミムトが吠える。
四人は距離を取った。
「……やったか?」
赤の武闘家が呟く。
しかし――
アミムトはゆっくりと立ち上がった。
「その程度か」
身体から灰色の霧が噴き出す。
「四つ揃ったところで――」
霧が巨大な身体を包む。
「俺を倒せると思うな!」
灰色の兵士たちも再び立ち上がる。
「まだいるのか……!」
緑の弓使いが息を呑む。
白の剣士は周囲を見渡した。
村人たちは、まだ遠くにいる。
このまま戦い続ければ巻き込まれる。
「ここでは戦えない」
白の剣士が言う。
「なら――」
青の槍使いが川を見る。
「場所を変える」
「どうやって?」
赤の武闘家が尋ねる。
青の槍使いは川を指差した。
「橋を渡れば、向こうに峡谷がある」
緑の弓使いが理解する。
「狭い場所なら、敵の数を活かせない」
「その通りだ」
白の剣士が頷く。
「俺たちがアミムトを引きつける」
赤の武闘家が笑う。
「そして村人たちを逃がす」
四人が同時に振り返る。
まだ遠くで、村人たちが逃げている。
「行こう!」
白の剣士が叫んだ。
四人が走り出す。
灰色の兵士たちが追いかける。
その後ろから、アミムトも続く。
「逃がさん!」
巨大な足音が響く。
ドン。
ドン。
ドン。
橋を渡る四人。
その先には、細い峡谷が続いていた。
緑の弓使いが先へ進む。
「ここなら戦える!」
青の槍使いが振り返る。
「来るぞ!」
灰色の兵士たちが橋へ殺到する。
白の剣士が剣を構える。
赤の武闘家が拳を握る。
緑の弓使いが矢をつがえる。
青の槍使いが槍を構える。
四人が横一列に並んだ。
白の剣士が口を開く。
「名前は……まだ聞いていないな」
緑の弓使いが答える。
「今は必要ない」
青の槍使いも頷く。
「戦えば分かる」
赤の武闘家が笑った。
「それでいい」
その瞬間――
アミムトが峡谷へ踏み込んだ。
「まとめて喰らってやる!」
四人の色が、さらに強く輝く。
白。
緑。
青。
赤。
それぞれ違う色。
それぞれ違う戦い方。
それでも――
今は、同じ敵を見ている。
「行くぞ!」
四人が同時に駆けた。
四色と灰色。
峡谷を舞台に、決戦が始まった。




