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BLACK EATER ―色を喰らう魔王と、四色の英雄―  作者: まーサンタ
第五部 四色の邂逅

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第三十五話 四色、集う


 橋の上。


 白の剣士と赤の武闘家の前に、アミムトが立ちはだかっていた。


 その背後には――


 灰色の兵士たち。


 一体。


 二体。


 三十。


 五十。


 数えるのを諦めるほどいる。


「……百体近くいるな」


 赤の武闘家が呟く。


 白の剣士は周囲を見渡した。


 そして――


「……まずい」


 橋の向こう。


 先ほど助けた村人たちが、まだ遠くへ逃げ切れていなかった。


 壊れた馬車を押しながら、必死に進んでいる。


「どうする?」


 赤の武闘家が尋ねる。


 白の剣士は剣を握った。


「俺たちが囮になる」


「……分かった」


 赤の武闘家が拳を構える。


「村人たちが逃げ切るまで、ここで止める」


「二人で?」


「ああ」


 白の剣士はアミムトを見る。


 巨大な身体。


 鋭い牙。


 そして――


 何より恐ろしいのは、その口だった。


「俺たちが倒れるまでに、少しでも距離を稼ぐ」


 赤の武闘家が頷く。


「それでもやるしかない」


 二人が前へ出る。


 アミムトが笑った。


「逃げればいいものを」


 巨大な前足が地面を叩く。


「二つの色をまとめて喰らえるとはな」


 灰色の兵士たちが一斉に走り出した。


「来るぞ!」


 白の剣士が叫ぶ。


 赤の武闘家が前へ飛び出した。


「おおおおっ!」


 拳が兵士を吹き飛ばす。


 白の剣士がその横を駆け抜ける。


 一閃。


 二閃。


 灰色の兵士たちが次々と倒れる。


 だが――


 数が多すぎる。


「赤!」


「分かってる!」


 背中合わせになる二人。


 前も後ろも灰色。


「ここから先へは行かせない!」


 白の剣士が叫ぶ。


「一人でも多く、あの人たちを逃がす!」


 赤の武闘家の拳が赤く輝く。


 チャクラ。


 その光が身体を巡る。


 白の剣士の身体にも、赤のチャクラによって活性化した白い光が灯っていた。


 二つの色が並ぶ。


 白。


 赤。


 それでも――


 灰色は止まらない。


「くっ……!」


 白の剣士の腕に灰色の線が広がる。


「白!」


「大丈夫だ!」


 剣を握り直す。


「まだ戦える!」


 アミムトがその様子を見て笑う。


「無駄だ」


 巨大な足が地面を踏み鳴らす。


「どれだけ抗おうとも――」


 灰色の兵士たちが二人を囲む。


「色は、いずれ灰になる」


 アミムトが走り出す。


 地面が揺れる。


「来る!」


 赤の武闘家が構える。


 アミムトの巨体が迫る。


 その瞬間――


 ヒュンッ!


 一筋の矢が飛んできた。


 アミムトの目の前をかすめる。


「……何?」


 アミムトが足を止める。


 矢は地面へ突き刺さった。


 白の剣士が振り返る。


「今のは……」


 遠く。


 街道の向こう。


 一人の影が走っている。


 疾風のように。


 灰色の大地を駆け抜ける。


 肩には弓。


 緑の光を纏っている。


「……緑?」


 赤の武闘家が目を見開く。


 緑の弓使いは、一直線にこちらへ向かってくる。


 その速さは、まるで風そのものだった。


 そして――


 反対側。


 橋の下を流れる川。


 激しい水音が響く。


 ザァァァァッ!


 川面から大きな水しぶきが上がった。


 その向こうから、一人の影が現れる。


 青い槍を手にしている。


 激流をそのまま駆け上がるような勢いで――


 こちらへ向かってくる。


「……青!」


 白の剣士が呟いた。


 青の槍使いは川岸へ飛び上がった。


 水滴が舞う。


 青い光が、その身体を包んでいる。


 緑の弓使いが立ち止まる。


 弓を構える。


 青の槍使いも槍を構える。


 そして――


 二人が同時に言った。


「間に合ったな」


「そのようだ」


 白の剣士と赤の武闘家は、しばらく言葉を失っていた。


 アミムトが低く唸る。


「……三つ」


 灰色の兵士たちがざわめく。


「色が……三つ……」


 アミムトの顔から笑みが消えた。


「いや――」


 その視線が、白と赤へ向く。


 そして緑と青へ。


「四つ……」


 四人の英雄。


 白。


 緑。


 青。


 赤。


 世界から失われつつあった四つの色が――


 初めて、同じ場所に揃った。


 白の剣士が剣を構える。


 赤の武闘家が拳を握る。


 緑の弓使いが矢をつがえる。


 青の槍使いが槍を構える。


 四人の前には――


 アミムトと、百体近い灰色の兵士。


 誰も言葉を発しない。


 ただ、それぞれの色が輝いていた。


 赤の武闘家が小さく笑う。


「……これなら」


 白の剣士が続ける。


「ああ」


 緑の弓使いが弓を引く。


「道は開ける」


 青の槍使いが槍を構える。


「ならば、行こう」


 四つの色が――


 灰色の大群を正面から見据えた。


 アミムトが咆哮する。


「喰らええええっ!」


 灰色の兵士たちが一斉に走り出す。


 四人も同時に駆けた。


 ――四色の戦いが、始まった。

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