第三十四話 白赤の連携
朝。
白の剣士と赤の武闘家は、街道を歩いていた。
黒の居城は、昨日よりも大きく見える。
だが、その道は平坦ではなかった。
灰色の兵士たちが、街道を塞いでいた。
「……またか」
白の剣士が剣を抜く。
赤の武闘家も拳を構えた。
「数は多い」
「ああ」
「どうする?」
白の剣士が少し考える。
「正面から行く」
「分かりやすいな」
「お前が後ろから来てくれ」
「了解」
兵士たちが一斉に走り出す。
白の剣士が前へ出た。
剣が閃く。
一人。
二人。
三人。
白い剣閃が兵士たちの間を走る。
だが、左右から別の兵士が迫る。
「白!」
赤の武闘家が叫ぶ。
「分かっている!」
白の剣士がしゃがむ。
その頭上を――
赤の武闘家の拳が通り抜けた。
「おおおっ!」
衝撃で兵士たちがまとめて吹き飛ぶ。
白の剣士が立ち上がる。
「助かった」
「こっちもだ」
今度は赤の武闘家が前へ出る。
拳で兵士を弾き飛ばす。
その背後から別の兵士。
白の剣士が剣で武器を弾いた。
「後ろは任せろ」
「頼もしいな」
二人は互いの死角を補いながら戦った。
剣。
拳。
剣。
拳。
まるで最初から一緒に戦っていたかのように、動きが重なっていく。
やがて――
最後の兵士が灰色の霧となって消えた。
「……終わったか」
赤の武闘家が息を吐く。
白の剣士も剣を収めた。
「二人だと、戦いやすいな」
「ああ」
だが、そのとき。
遠くから子どもの泣き声が聞こえた。
「……!」
二人は顔を見合わせる。
「行こう」
白の剣士が走り出した。
街道の先には、小さな馬車が倒れていた。
その周囲を灰色の兵士たちが囲んでいる。
「まだいたか!」
赤の武闘家が飛び込む。
拳で兵士を吹き飛ばす。
白の剣士は馬車へ駆け寄った。
「大丈夫か!」
中には数人の村人がいた。
怯えている。
「早く、こちらへ!」
白の剣士が手を差し出す。
村人たちが馬車から降りる。
しかし――
一人の兵士が背後から迫る。
赤の武闘家が振り返った。
「させるか!」
拳が兵士を吹き飛ばす。
白の剣士が頷く。
「ありがとう」
「礼は後だ」
二人は同時に前を見る。
灰色の兵士がまだ残っている。
「行くぞ」
「ああ!」
白の剣士が駆ける。
兵士の攻撃を剣で受け流す。
その隙に赤の武闘家が懐へ入り込む。
拳。
白が続く。
剣。
赤が続く。
拳。
最後に白の剣士が大きく剣を振る。
灰色の霧が吹き飛んだ。
静寂。
村人たちは助かった。
「ありがとうございます……」
白の剣士は頷く。
「無事でよかった」
赤の武闘家が倒れた馬車を見る。
「車輪が壊れている」
「このままでは動けないな」
「俺が直す」
赤の武闘家が車輪を調べる。
「こういう作業は得意なんだ」
「武闘家なのに?」
「武闘家だって、旅をする」
しばらくして。
馬車は動くようになった。
村人たちは何度も二人へ頭を下げた。
馬車が去っていく。
白の剣士と赤の武闘家は、その後ろ姿を見送った。
「……俺たちは、魔王を倒すために旅をしている」
白の剣士が呟く。
「ああ」
「でも、その途中で助けられる人がいるなら……」
「助ける」
赤の武闘家が即答した。
「それでいい」
白の剣士は少し笑った。
「ああ」
二人は再び歩き始める。
夕暮れ。
街道の先に、巨大な橋が見えてきた。
その向こうには――
黒の居城。
これまでよりもはっきりと、その姿が見える。
「近い」
白の剣士が言う。
「かなりな」
赤の武闘家も頷く。
しかし、橋の中央には――
巨大な灰色の影が立っていた。
狼ではない。
ワニのような顔。
ライオンの前足。
カバの後ろ脚。
二人は足を止めた。
「……あれは」
赤の武闘家が拳を握る。
白の剣士が剣を抜く。
巨大な魔獣が二人を見つめる。
そして――
「白……」
低い声が響く。
「赤……」
その巨体が、ゆっくりと口を開いた。
「二つの色が揃ったか」
灰色の魔獣――
アミムト。
橋の上で、二つの色と一匹の魔獣が向かい合った。




