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BLACK EATER ―色を喰らう魔王と、四色の英雄―  作者: まーサンタ
第四部 赤の旅

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第二十九話 赤い道標


 火山を離れてから、数日。


 赤の武闘家は、一人で北へ向かっていた。


 道の両側には、灰色の大地が広がっている。


 かつては赤い花が咲いていたらしい。


 今は、枯れた茎だけが残っている。


「……ここにも、赤があったのか」


 赤の武闘家は足を止めた。


 しゃがみ込み、枯れた地面に手を触れる。


 ほんのわずか。


 指先に赤い光が伝わってきた。


「まだ消えていない」


 立ち上がる。


 その瞬間だった。


 遠くから鐘の音が聞こえた。


 カン――。


 カン――。


 赤の武闘家は音の方向へ走った。


 丘を越える。


 すると、灰色の町が見えた。


 町の入口には、大勢の人々。


 その先には――


 灰色の兵士たちがいた。


「また魔王軍か」


 赤の武闘家は拳を構える。


 兵士たちが町へ入ろうとしている。


「赤を探せ!」


「赤い物を全部集めろ!」


「魔王様へ届けるのだ!」


 赤の武闘家の目が鋭くなる。


「……なるほど」


 自分だけではない。


 魔王軍は、この町に残った赤まで探している。


 赤の武闘家は走った。


「そこまでだ!」


 兵士たちが振り返る。


「赤の英雄!」


「捕らえろ!」


 一斉に襲いかかる。


 赤の武闘家は拳を振る。


 ドンッ!


 一人。


 さらに一人。


 蹴りで二人をまとめて吹き飛ばす。


 兵士が剣を振り下ろす。


 身体を沈めてかわす。


 そのまま懐へ入り、拳を打ち込む。


「ぐっ!」


 兵士が倒れる。


「この人数を一人で……!」


 兵士たちが怯む。


 赤の武闘家はゆっくり拳を構えた。


「一人だから何だ」


 拳に赤いチャクラが集まる。


「守るものがあるなら――」


 一歩踏み出す。


「一人でも戦える」


 赤い衝撃が走った。


 兵士たちが次々と吹き飛ばされる。


 最後の一人が逃げ出す。


「待て!」


 赤の武闘家が追う。


 しかし――


 兵士は町の外へ出ると、灰色の煙になって消えた。


「……逃げたか」


 赤の武闘家は町へ戻る。


 人々が集まってくる。


「助けてくれてありがとう」


「もう駄目かと思った」


 赤の武闘家は首を横に振った。


「俺は通りかかっただけだ」


「それでも、助かった」


 そのとき。


 一人の老人が、赤の武闘家へ小さな箱を差し出した。


「これを持っていけ」


「これは?」


「昔から、この町に伝わっているものだ」


 箱を開ける。


 中には――


 赤い石が入っていた。


 小さな石。


 だが、消えかけている世界の中でも、鮮やかな赤を保っている。


「……きれいだ」


「この石には、古い伝承がある」


 老人が言う。


「四つの色を持つ者たちが、黒へ向かうとき、その道を示す石だと」


 赤の武闘家は石を見る。


「四つの色……」


 白。


 緑。


 青。


 そして赤。


「他の英雄のことを知っているのか?」


「詳しくは知らん」


 老人は首を振る。


「ただ、昔からそう言い伝えられている」


 赤の武闘家は石を受け取った。


「……ありがとう」


 石を握る。


 すると――


 赤い光が一筋、北の空へ伸びた。


「これは……!」


 光は山々を越え、遠くへ向かっている。


 赤の武闘家は、その先を見る。


「黒の城へ続いているのか?」


 老人は静かに頷いた。


「行きなさい」


 赤の武闘家は町を振り返る。


 灰色の世界。


 それでも、町の中央には小さな赤い旗が立っていた。


 風に揺れている。


「……分かった」


 赤の武闘家は歩き出す。


 赤い石を握りしめて。


 しばらく進むと、道の先に大きな谷が現れた。


 その谷底には川が流れている。


 そして――


 川岸に、何かが落ちていた。


 赤の武闘家は近づく。


 それは一本の青い槍のような――


 青い光を残した石だった。


「……青?」


 拾い上げる。


 微かな青い光が、赤い石へ反応する。


 赤と青。


 二つの光が重なった。


 遠く離れた場所で――


 青の槍使いも、突然槍の光が強くなったことに気づいていた。


 そして緑の弓使いも。


 三つの色が、まだ見えない糸で繋がっていく。


 赤の武闘家は谷の向こうを見る。


「待っていろ」


 誰に向けた言葉なのか、自分でも分からない。


 ただ――


 初めて、一人ではない気がした。


 赤い石を握る。


 チャクラが強く脈打つ。


 ドクン。


 ドクン。


 その鼓動は、まるで遠くの誰かに応えるようだった。


 そして夜。


 黒の居城。


 最も高い塔の中で、黒い影が静かに立っていた。


「……三つ目の色が動いたか」


 黒の魔王は、遠くの赤い光を見つめる。


 その口元が、わずかに笑った。


「ならば――」


 城の奥から、低い声が響く。


「最後の色も、もうすぐだ」


 灰色の世界に――


 赤い光が走った。

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