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BLACK EATER ―色を喰らう魔王と、四色の英雄―  作者: まーサンタ
第四部 赤の旅

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第二十七話 火口の試練


 朝。


 赤の武闘家は、寺院の前に立っていた。


 夜の戦いで荒れた境内。


 折れた柱。


 砕けた石畳。


 それでも、寺院そのものは残っている。


 赤の武闘家は火山を見上げた。


 火口から、赤い光が漏れている。


「……行くか」


 昨夜の戦いで、分かったことがある。


 チャクラは強くするだけでは足りない。


 自分の中にある赤を、自在に扱わなければならない。


 そのためには――


 もう一度、修行するしかない。


 赤の武闘家は火山の斜面を登り始めた。


 途中から、地面が熱くなる。


 岩の隙間から煙が上がる。


 それでも歩みを止めない。


 やがて、火口近くの平らな岩場へ辿り着いた。


 そこには古い石碑があった。


 赤の武闘家は、その前に座る。


 目を閉じる。


 呼吸。


 吸う。


 吐く。


 チャクラを感じる。


 胸の奥。


 小さな赤い光。


 それを腕へ。


 脚へ。


 背中へ。


 全身へ。


「……焦るな」


 昨夜、ワーグに言われた言葉が頭をよぎる。


 ――お前の赤は、喰えば喰うほど強くなりそうだ。


 赤の武闘家は目を開けた。


「違う」


 拳を握る。


「喰われるための赤じゃない」


 立ち上がる。


「守るための赤だ」


 その瞬間。


 ゴゴゴゴゴ……。


 火山が大きく揺れた。


「……!」


 火口から赤い炎が噴き上がる。


 赤の武闘家は拳を構えた。


 炎は襲ってこない。


 ただ、目の前で燃えている。


 赤の武闘家はゆっくり拳を前へ突き出した。


 炎に触れる。


 熱い。


 だが、手を引かない。


「……この熱も」


 チャクラが赤く輝く。


「俺の力にする」


 炎の光が、少しずつ身体へ流れ込んでいく。


 赤の武闘家の身体を巡るチャクラが強くなる。


 しかし――


 次の瞬間。


 ズキン!


「ぐっ……!」


 胸に痛みが走った。


 チャクラが暴れ始める。


「くっ……!」


 赤い光が全身から噴き出す。


 怒り。


 焦り。


 恐怖。


 さまざまな感情が一気に押し寄せてくる。


「落ち着け……」


 だが、収まらない。


 炎がさらに激しくなる。


 赤の武闘家は拳を地面についた。


「俺は……」


 息を整える。


「何のために戦う?」


 答えを探す。


 魔王を倒すため。


 色を取り戻すため。


 それだけではない。


 昨夜、寺院を守った。


 あの場所を守りたかった。


 そこに残された小さな赤を。


 そして――


 これから出会う誰かを。


「……守るためだ」


 チャクラが静かになった。


 赤い光が、炎のように身体の内側を流れていく。


「これが……俺の赤」


 拳を握る。


 今度は痛みがない。


 炎も暴れない。


 ただ静かに燃えている。


 赤の武闘家は目を開けた。


「分かった」


 そのときだった。


 山の麓から声が響く。


「助けてくれ!」


 赤の武闘家は振り返った。


 人々が火山の麓へ逃げている。


 その後ろから――


 灰色の兵士たち。


「また魔王軍か」


 赤の武闘家は立ち上がった。


 火口を振り返る。


 そして――


 一気に駆け下りた。


 山道を駆ける。


 灰色の兵士が剣を振る。


 赤の武闘家は拳で受け止める。


 ガキン!


「邪魔だ」


 拳を振る。


 兵士が吹き飛ぶ。


 別の兵士が迫る。


 蹴り。


 さらに一撃。


 次々と兵士を退けていく。


「逃げろ!」


 人々が走る。


 赤の武闘家は最後尾に立ち、兵士たちを食い止める。


 そのとき。


 遠くから、低い唸り声が聞こえた。


「……!」


 赤の武闘家が振り返る。


 灰色の霧の向こう。


 二つの目が光っている。


「……ワーグ」


 巨大な狼が姿を現した。


「ようやく、その赤を使えるようになったようだな」


 赤の武闘家は拳を構える。


「また来たのか」


「ああ」


 ワーグが牙を剥く。


「今度こそ――」


 灰色の霧が周囲を覆う。


「お前の赤を喰らう!」


 赤の武闘家の拳が燃えるように輝く。


「なら、今度は――」


 ゆっくりと構える。


「俺の全部を見せてやる」


 火山の炎が、二人を照らす。


 赤と灰。


 再び激突する――。


 そして遠く離れた場所では。


 青と緑の二人が、黒の居城へ向かって歩いていた。


 まだ互いに知らない。


 自分たちと同じように――


 別の場所で、もう一人の英雄が戦っていることを。

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