異世界から来た小さい奴ら
前川「・・・」
瀬戸「え、えっとー・・・」
ベル「息苦しくてすまないな。だが、正直に答えてほしい。何故スピリットを呼んだ?」
瀬戸「そ、それを話すと・・・長くなるのですが〜」
アリスデルを倒した後、尋問が行われていた。内容は瀬戸が何故スピリットを召喚出来たかについてだ。おかげで今、超ヤバい空気になっている。なんて返せばいいか分からない。しかし、やってしまった事はしょうがない。ありのままに全てを話した方がいいか。
ベル「そもそも、知らない人から貰ったと言ってたがそれは誰だ?」
瀬戸「いやー、私もあんまり覚えてなくて。顔はフードでほぼ見えなかったし。あとは全身が黒ずくめだったって事かな?」
ベル「その人は何と?」
瀬戸「お互いぶつかってきて、鞄の中の荷物を集めたら縁結びのお守りだとか言って、これを渡された。まぁ、また会ったら返せばいいかなって思って」
クロノス「不思議だ。何故僕達の世界の国宝がこの世界の住人が持っているのだ?」
松木「国宝?今国宝って言った!?」
クロノス「あぁ、これには強力な魔力が備わっていて、使えば身を滅ぼす呪物みたいな物でもあるんだ。だが、基本は使わなければ問題はないがそれを盗み出した奴らがいたんだ」
村上「それってまさか!?」
ベル「あぁ、プレシャスファミリアだ。奴らはこれが国宝と知りながら、高く売り捌こうとしていたんだ。金庫の中に侵入し、これと他の国宝も盗んだがこれだけは取り返せた」
ベルは自身の白いペンダントを見せた。今身につけている物が国宝級の物であると言う事に瀬戸は戸惑いを隠せていない。
松木「ならどうして今はないんや?取り戻せたなら今も手元にあるんやろ?」
ベル「それが鞄を開けた時には1つ欠けていてな。他のペンダントは鞄を開けた途端にどこかへ消えてしまった。他の国宝もそれに続き、後を追うように消えてしまったんだ」
瀬戸「なるほど、だから1つしかないんですね。あぁ、しかも追ってる最中にたまたまワールドガーディアンが異世界に行けるパラレルマシンを開けていてな。運良くそこに入って、ここに来た訳だ」
瀬戸「そんなに大変だったんですね」
前川「そう言えば、私も似たような物を拾ったけど、これとかそう?」
前川はポケットから同じ装飾の蒼い宝石が埋め込まれたペンダントを取り出した。これを見た一同は再び驚いた。ここには既に3つの国宝が揃っているのだ。とあれば、残りのペンダントもこの世界のどこかにあるに違いない。だが、それはどこにあるのか、そもそもこの世界にあるのかすら分からない。ただ、これが縁結びの加護が本当にあるのなら、あのペンダントは持ち主を探しているに違いない。だとすると、悪用される前に全て集めなくては。
ベル「だが、スピリットを呼ぶには自分の心の中で何か辺境が起こったという事になる。何か思い当たる節はないか?」
瀬戸「うーむ、何か思い出せそうで思い出せない。記憶が混雑している・・・」
クロノス「無理に引き出そうとしても無理だろう。とにかく、君のペンダントをこちらに渡してくれないか?」
前川「へ?あ、はい」
前川はペンダントをクロノスに渡した。これで安心だとみんなは思った。しかし、彼女達は知らなかった。ペンダントの持つ強力な縁結びの効力をまだ知る由もなかったのである。
§
ドン・リングル「えー願いましては―・・・ぬおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!なんていう事だーっ!!!!!」
キンピアス「どうしたリングル?急に発狂なんかして」
ドン・リングル「見ろおぉぉぉぉぉぉぉぉーっ!!!今月の収支をおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!全部真っ赤っかだぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!!」
ネクシース「リングル、あなた家計簿なんかつけてたの?」
その頃、プレシャスファミリア内ではリングルが眼鏡を掛けて、そろばんと電卓を使いながら家計簿をつけていた。隣には請求書の山がどっさりと積まれていた。ブランド品の領収書に高級エステの請求書など、ほとんどがネクシースの豪遊に関するものばかりであった。おかげで襲撃した際に手に入ったお金は今や、1万円札1枚だけになってしまった。おかげで頭からいつも火花が飛び散っていた。
キンピアス「なら、また銀行でも襲えばいいじゃないか」
ドン・リングル「駄目だっ!!ドカンと収入があったらその分派手に使っちまう!!!今の俺達に必要なのは安定した収入だ!!!」
ネクシース「ならいい奴がいるわ。さっき新たな能力者を作ったのよ!!」
キンピアス「いつの間に作ったのか?まあ、新たな能力者が丁度欲しかったところだ」
ドン・リングル「よーし!!ならそいつを送って黒字回復させてやるぜ!!!」
こうして、プレシャスファミリアではまた新たな能力者が生まれてしまった。リングル達も安定した収入を得る為に立ち上がったのであった。
§
その頃、瀬戸は家に帰り、そのまま自室へ戻った。ベルから沢山の話を聞いて頭が働きすぎたのか、あのボロアパートでえっと・・・誰と戦ったんだっけ?何故か思い出せなかった。何だか思い出せそうで思い出せない。頭の中から何かが抜けていくようだ。顔すら頭から消えていく。派手な姿をした女性だったという事は覚えているような、いないような。いや、そんな事を考えるとまた頭が痛くなる。しばらくは安静にしたい。そう考えているとスマホに電話の着信音が鳴っていた。相手はベルからであった。
ベル『瀬戸、そちらに青のペンダントはなかったか』
瀬戸『青のペンダントって、前川さんが持っていたあれ?ないけど?』
ベル『なくなった』
瀬戸『えぇっ!?』
内容はクロノスに預けていた青のペンダントが突然消えたというのだ。確かにクロノスの背中にペンダントを入れたのは覚えているが、みんながいるあの状況でどうやってなくなったのか?!国宝級の宝がまたなくなってしまった!?
ベル『こっちの方でも探してみる。見つかったら連絡してくれ』
瀬戸『わ、分かりましたっ!!皆さんにはメールで送りますっ!!!』
瀬戸はそう言って電話を切り、みんなにメールを送った。みんな既読がついたが、誰も知らないという。一体どこでなくなったのか、今となっては分からない。今日は色々あったせいか、そのまま寝てしまった。翌日、いつも通り学校に向かい、昼休みに屋上にてベル達と合流した。
瀬戸「ベルさん、何だか眠たそうですね」
ベル「すまない。昨日あちこち中探し回ったから寝不足になってしまった。結局、見つからなかった」
前川「私も家中探したけど、ペンダントはなかったわ」
村上「ペンダントがひとりでに消えたってか?そんな訳あるわけないやろ」
前川「でも、見つからなかったのは事実よ」
ベル「ありがとう、みんな。今日、また探しに行く。心配かけてすまなかったな」
前川「いいのよ、それより休憩しましょうね。あんまり無茶をしてはダメよ」
ベルがみんなの気遣いに気づいたのか謝り出したが、前川は空気を和ませた。その後、みんなが購買に行ってる間、瀬戸はペンダントを見つめていた。昨日、ベルが言った事を思い出していた。こんな物が世界を変えてしまう代物とは思えない。一体どんな力が秘められているのか?そんな事を考えている時だった。いきなり瀬戸の顔に何かがぶつかった。それによりお互いびっくりし、思わず叫んでしまった。
瀬戸「な、何っ!?」
???「プチプチッ!!!」
プチプチ・・・?そんな鳴き声の動物なんていたかな?瀬戸は確認する為に顔を上げた。犬より小さく、翼が生えて飛んでいる動物(?)みたいな見た目の・・・何これ?見た目からして虫でも鳥でもない。ただ、動物にしては見た事がなさすぎる。体中ピンクで翼の生えた動物など見た事がない、いや実在すらしないだろう。だが、ここにそれがいる。額に薄ピンクの玉が入っているし。
瀬戸「・・・誰?」
???「プチプチ?」
お互い顔を傾げ、じっと見つめ合っていた。動物の方は逃げる事も怯える事もなく、ただキョトンとした顔でこっちを見ていた。その後、動物は何かを見つけるとこっちへ飛び寄った。飛び寄った場所はペンダントの方だった。どうしてこの動物がこのペンダントに近づいたのかは分からない。ただ、興味を示しているのは確かである。このペンダントに惹かれるとは、一体何なんだろう。それにしても・・・可愛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!こんな小動物が実在するなんて!!ほっぺた、プニプニしたい。お腹をこしょりたい。肉球触りたい。これは犬や猫以上に愛くるしい。
瀬戸「そ、そう言えば、あなた名前は?・・・て分かる訳ないか」
???「プチプチ♪♪」
瀬戸「プチプチ?」
???「プチプチ♪♪♪」
案の定、プチプチとしか言わなかった。そもそも分かる訳がない。見た事ないから。そんな時だった。クロノスがいきなり空から現れた。ペンダントを見つけた訳ではないが、何かを見てまっしぐらにここに来たようだ。
???「プチプチ?」
クロノス「これは!!」
瀬戸「クロノスさん、知ってるの?」
クロノス「あぁ、これは妖精、しかも僕達の世界の妖精だ。数が減っているという情報はあるが、この世界に来ていたのか!?」
妖精「プチ?」
クロノス「だが、この子に異世界へ行ける力はない。誰かと一緒にここに来たのか!?」
妖精「プチプチ・・・プチーッ!!!!プチプチプチプチプチプチプチプチーッ!!!」
すると妖精は驚き、慌てふためいていた。恐らくその人と逸れたのであろう。とはいえ、また異世界から生き物が現れるとはベルやプレシャスファミリアなどと色んな人がやってくる。いや、ベルはともかくプレシャスファミリアや妖精は人じゃないか。すると、屋上の扉が開き、ベル達が帰って来た。
ベル「ただいま戻った。この超カロリークリームパンってのを買って来た。一緒に食べるか?」
前川「私は炭水化物たっぷりナポリタン&焼きそばパンを買ったわっ!!!」
松木「私は野菜たっぷりカツサンドよ!!」
村上「みんな、なんちゅう変な物買っとんねん?うちはおにぎり唐揚げセットやけど」
妖精「プチプチ?」
4人「・・・ん?」
4人は瀬戸とクロノスの場所にいる妖精に気づいた。そして、一瞬固まってしまった。しかし、すぐに気を取り直して妖精の方へ駆け寄った。
前川「可愛いっ!!!写真撮っていい?!」
松木「きゃーっ!!!可愛いーっ!!!持っていい?!」
村上「こ、こんな生物がいたのか?触っていいか?いや、触らせてくださいっ!!」
ベル「これは・・・クロノス、まさかっ!!!」
クロノス「あぁ、この子は赤ちゃんだが妖精だ。」
前川「よ、妖精ですって!?」
ベル「あぁ、私達の世界にも妖精は存在する。ただ、最近は数が減っていって、見かけなくなってしまった」
村上「おいおい、また異世界か?」
松木「でも私はいいと思うよっ!!!可愛いしっ!!!」
みんな色んな意味で妖精に釘付けになっていた。妖精もみんなから這い寄られて、少し困惑していた。それを見かねた瀬戸は妖精を抱いて
「ちょっとみなさん、この子怖がっていますよ。怖かったですね」
と慰めた。するとそれが良かったのか笑顔になり、瀬戸の周りを飛び始めた。妖精はすっかり瀬戸に懐いてしまったようだ。
妖精「プチプチプチーッ!!!!!」
瀬戸「あわわわっ!!!すごい周りますね!!」
ベル「妖精がここまで人に懐くとは驚いた。君は何か特別な力を持っているのか?」
瀬戸「いえ、特別な力がある訳では・・・」
その時だった。空から再び何かが飛んで来た。しかも今度はジェット機級な素早さでこっちに来ており、その勢いのまま、瀬戸の背中にどついてしまった。
瀬戸「ぐはっ!?」
村上「瀬戸はんっ!?」
松木「うわぁっ!?今度は何っ!?」
前川「む!!あれは・・・!!!」
瀬戸は痛みがまだ響くのか、背中をずっと摩っていた。鉄よりも硬い何かにぶつけられ、ただの痛み程度で済んだのが不思議なくらいだ。その飛んで来たものはすぐさま妖精の場所へ駆け寄った。
???「プチモンっ!!!大丈夫かっ!?怪我はないか!?」
妖精「プチプチプチプチプチプチプチプチッ!!!」
???「へ?さっきの人が痛がっている?うん?あ、お前かっ!?」
瀬戸「な、何なんですか!?急に?!」
???「お前が俺のプチモンをたぶらかしたのかっ!?」
瀬戸「別にたぶらかしてなんか・・・て、その子プチモンって言うの?」
妖精「プチプチッ!!!」
妖精の名前はプチモンと呼ばれるようだ。プチプチと鳴いていれば、そう名付けてもおかしくないか。一方で飛んで来た正体に瀬戸達は驚いた。赤い体に赤いスカーフ、手に翼や尻尾、極め付けに全身が鉄で出来たドラゴンのおもちゃが喋っていたからだ。特に内蔵されたものではない。そして、最も驚いたのは普通に会話している事だ。それよりその妖精はプチモンというのか。
プチモン「プチプチプチッ!!!」
???「貴様らっ!!!この俺様がいる限り、大事なプチモンに手出しはさせねぇぜ!!!」
瀬戸「いや、私達はたぶらかしてなんかいませんけど!?」
前川「それよりも!!実在したんだ!!喋るおもちゃって!!付喪神系かな?」
村上「絶対ちゃう。それになぜ付喪神?」
クロノス「まさか、君が妖精をここへ連れて来たのかっ!?」
???「おうっ!!俺様は"アカゴン"って名だ!!赤子じゃねぇぞ!!!」
クロノス「どういう事だ?」
アカゴン「へ?」
クロノス「異世界のありとあらゆるデータを蓄えた僕でさえ、君についての情報がない」
アカゴン「お前、何でも知ってんのか!?実はさ、俺も分かんねぇんだよ」
前川「分からないって?」
アカゴン「気づいたらこんな姿になっちゃってな。おかげで結構苦労したぜ」
ベル「だが、妖精ではないのか。それより、お前は何しにここへ来た?」
アカゴン「ああ、ちっと探し物を探しにな。プチモンを一緒に連れてここへ来ただけだ」
松木「探し物って?」
アカゴン「ペンダントだよ。ある10色のペンダントを探しにな」
ベル&瀬戸「ぺ、ペンダントッ!?」
その言葉を聞いて鳥肌がたった。ここへ来た目的はあのペンダントを探しに来たのだという事に。しかもここに丁度2つある。そう言えば、プチモンがこれに近寄ったがこれを探していて、偶然これを見つけたというのか!?まさか、なくなったらペンダントも彼が持っているのか!?
ベル「貴様、ペンダントを探してると言ったな。まさか、ペンダントがなくなったのは!?」
アカゴン「いや、まだ全然見つけられなくてさ。この世界にあるのをプチモンが感知して、あちこち探したけど全然見つからなかったんだよ」
プチモン「プチプチプチッ!!!」
アカゴン「どうした?・・・何っ!?1つ見つけただって!?しかも、あの女が持っていたのか!?」
瀬戸「げっ!?何で喋っちゃうのよっ!?」
アカゴン「おい女っ!!今すぐ寄越せっ!!!」
瀬戸「ちょっと!?離してって噛まないで!?」
アカゴン「渡すまで噛み付くからな!!!」
かくして、異世界から来たアカゴンとプチモンと呼ばれる生き物はペンダントを探しにここまで来たのであった。一体何故ペンダントを探していたのか、このペンダントの正体はなんなのか、彼女達はその真実を少しずつ知る事になっていくのであった。




