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14話 紫髪の女の子

 エキナセア・シティに到着した。


 この都市(まち)の第一印象は『なんだかすごい!』


 見える範囲の地面全てがレンガで舗装されており、優しいふうあいがする。

 建物の多くは落ち着いた色合いで、そこがまたオシャレだ。


 エキナセアってすごい!


 今の私っておのぼりさんだな。ちょっと恥かしい。

 気を引き締めて、地図を確認する。教会があるのは都市の中心部だ。


 地図から顔を上げようとした丁度その時、歩いて行く男性が何かを落したが目に映る。それは財布の様に見えた。

 拾って届けようと思ったけれど、私が動き出す前に、黒いフードローブを纏った子供が財布を拾って男性を追いかけた。

 何となく、それを見届けることにする。

 「あのっ……」

 女の子の声だ。

 それを聞いた男性が振り返り、女の子を見て怒りの表情を浮かべた。

 「盗んだのか!? このクソガキ!」

 えっ!? 何でいきなり疑うの? あいつ、ゲス野郎だ!

 「ちがっ……」

 「このっ!」

 女の子が駄目野郎に蹴飛ばされてしまった。

 「待ってください!」

 ゲス野郎はなおも女の子を足蹴にしようとするから、私は慌ててその足にしがみついて阻止した。

 「……何だよ?」

 ゲス野郎の勢いが少し削がれたようだ。

 きっと私の可愛さのおかげだろう。

 この勢いで女の子の冤罪を解くことにする。

 「この子はあなたが落した財布を拾って届けようとしたのです。私はそれを見ていました。どうか疑わないでください!」

 「……分かったよ」

 そう言ってゲス野郎は、この子に謝ることもせず立ち去った。

 「……あ……あの」

 この子か細い声で何か言おうとしたけど、言葉は続かなかった。

 何を伝えたいのか後で聞くから、この子を治すことにする。

 さっきのゲス野郎の蹴り具合だと、身体にダメージを負っているはずだ。

 素早く診察聖術を発動して、思わず息を呑んだ。

 さっきゲス野郎に蹴られた痕だけではない。

 身体のあちこちに痣がある。フードで隠された顔にも……胸糞悪い。

 だけど重傷というわけではないから、これなら直ぐに直すことが出来る。

 「今からあなたを癒します」

 そう宣言して治癒聖術をかける。


 予想していた以上に早く完治させることが出来た。

 そして、相応に聖力を消費したはずなのに、聖力の残量が想定よりも余裕がある。

 もしかして、聖力の最大量が増えたのかな?

 修行を積むことで聖力の最大量を増やせるのだと聞いたことがある。

 ここ最近、死にかけの重傷者を聖力が空になるまで治癒することが2回もあったから、それが修行になったのかもしれない。 


 「お加減はいかがでしょうか?」

 完治していると分かっているけど、あえてそう聞いた。

 他者と接することが苦手らしいこの子と、会話の糸口を掴むため。


 何やら問題ありげだから、教会へ一緒に連れて行き、保護してもらうのが良いかもしれない。


 この子がようやく顔を上げて私と視線を合わせた。

 紫色の髪に金色の目の可愛い女の子だ。


 このカラーリングに心当たりがある。

 もしかして、仲間になる魔術師?


 幸運続きで未来の仲間と出会ってきたけど、まだ幸運が続いてる?

 それともさすがに今回は特徴が同じ別人?


 とりあえず名乗ろう。

 「私はソフィーです」

 この子はたどたどしい口調で答えた。

 「わたしは……パメラ」


 大当たり! 魔術師のパメラだ!



 孤児のパメラはある魔術師に引き取られ、一応弟子として魔術を教わりながらも、奴隷のようにこき使われて育った。

 高い才能を持つパメラは10歳にして師匠を越えてしまう。

 それに嫉妬した師匠はパメラを追い出してしまった。

 パメラの師匠は才能だけでなく、人格もしょぼいやつだ。


 その後のパメラは4年間、まるで呪われているかのごとく他者から虐げられて生きることとなった。


 今のパメラはしょぼい師匠に追い出され、他者から苛められ始めた時期なのかな?

 さっきの駄目野郎のことを思うと、もしかしたら本当に呪われているのではと錯覚しかける。

 だけど診察聖術で確認した時、呪詛にかかってはいなかった。

 診察聖術ではそういうことも分かるんだよね。



 ゲームでは、パメラがとある村で誤解を受けて迫害されていたところを主人公に救われ、旅に着いてくることになる。

 それまでは警戒心が強く怯えていたのに、性格ががらりと変わって、積極的に仲間と関わるようになる。

 パメラとキャロルと王女が、三人で女子会のようなものをするサブイベントはすごく良かったな。私も混ざりたい。



 とりあえず、今のパメラは教会で保護されたほうが良いだろうな。

 可愛くて賢い子だし、引き取りたい人が直ぐに現れるかもしれない。

 そうなると、4年後に旅の仲間となることはないかもしれない。

 わりと惜しいけど、『良い人間』としてはそうするべきだ。

 戦力が減ることについては、私が治癒聖術でがんがん回復させつつ、杖で物理攻撃もしてカバーしよう。

 エキナセアでは見習い神官に杖を使った対魔物用の戦闘訓練もさせるんだよね。



 「パメラさん。私は教会を目指しています。パメラさんも一緒に行きませんか?」

 「……行かない」

 え? 行かないの?

 「わたしのことを心配してくれているんでしょ? だけど、わたしは自由がいい」

 そうか。ベルガモットの孤児院はわりと緩かったけど、教会内ではきちんとした態度をとらなければならなかった。私は楽勝だったけど。

 エキナセアの教会がどのような環境なのかは分からない。



 「ソフィーはこの都市で暮らすの?」

 「はい。見習い神官となり、教会に付属する寮に入ります」

 「……あのね、わたしと友だちになってほしい」

 おぉ! パメラから嬉しいお誘いだ!

 「はい! 私もパメラさんとお友だちになりたいです」

 「ありがとう、ソフィー!」

 パメラが明るい笑顔を見せた。

 『仲間になったら性格ががらりと変わる』ことを連想する。

 「わたし、ソフィーに会いに行くから。またね!」

 そう言ってパメラは立ち去った。


 パメラは今後、どうやって暮らすのかな?

 ゲームでは、4年間どうやって暮らしていたかは具体的に語られなかった。

 多分、大丈夫なんだろうな。



 ジェイク、キャロル、パメラと出会い、キャロルとパメラとは友だちになれた。

 ものすごくラッキーだ。

 まるで色々な出来事が私の都合の良いように動いているかのようだと思う。


 私すごい!

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