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15話 新生活

 エキナセアの教会の前に来た。建物を見て私は驚く。

 ――すごい!

 荘厳とはこのことだ。

 私は神を敬ってはいないけれど、あまりの壮大さに、思いがけず神の威光を感じて圧倒される。

 だけど、これより上があることを知っている。

 聖区にある大教会。

 この建物より立派で、神々しいとしか表現できないのだという場所。


 ゲームでこの教会を見た時は『立派な建物だな』と思う程度だった。

 それならば、聖区の大教会を実際に目にした際はどれほどの衝撃を受けるのだろう?

 私はいずれ勇者の仲間として大教会に行くのだから、今の段階でひるんでいてはいけない。



 教会内に入り、近くにいた神官に声をかけて、ジョゼフ様から預かった手紙を渡す。

 待っているように言われて数十分後、アルヴィンと面会できることを知らされた。


 執務室に通され、久しぶりにアルヴィンの姿を見る。

 ……前よりゴツくなってる。

 そんな、ささやかな驚きを表情に出すことなく、私は礼儀正しく挨拶した。

 エキナセアに招いてもらったことについての感謝も伝える。

 「とりあえず座りたまえ」

 そう言われてソファに腰かける。

 このソファ、すごく良い。座り心地が最高だ。


 しばらくの間、アルヴィンと話しをした。

 「以前よりも君が様々な面で成長していることが分かる。期待以上だ」

 嬉しいよ。もっと褒めて。

 「君はこのエキナセアで学ぶに相応しい存在だと確信している。だが……」

 何かあるの?

 「いくら君が素晴らしいとはいえ、大神官が一人の見習い神官に肩入れするのは、君にとっても私にとっても良くないことに繋がるだろう。だから私は、他の見習いに対するよう君に接することにする」

 そうだね。贔屓されると回りに悪く思われるかもしれないから、その方がいい。

 「わかりました。アルヴィン様の心遣いに報いるためにも、修行に励みます」


 そんなやり取りの他に、とある村の駄目神官の話しもしておいた。

 あのような神官がいることに苦しさを感じると。

 「それはいかんな。どうにかせねば」

 アルヴィンは重苦しい表情をした。

 そうだよ。いけない奴だからどうにかしてね。



 その後、見習いのための寮に案内された。

 四人部屋で、私が一番乗りだった。


 荷物を整理して一段落。ふと、王女のことが頭に浮かんだ。

 王女が見習いとしてやってくるのは二年後。

 王女は他の見習いたちと馴染むことが出来ず、辛い修行生活だったらしい。

 世話を焼いて恩を売っておくのもありかな?



 そして、キャロルとの約束を思い出し、さっそく手紙を書いた。

 無事にエキナセアに到着したことや、建築物の素晴らしさ、立派な神官になるため修行を頑張るといった内容に仕上げた。



 翌日、同室の子たちが揃った。

 ミーナとクララとリンダ。

 見習い仲間の中ではこの子たちと過ごす時間が特に多くなるだろう。

 この子たちの好感度も稼ごうと気合が入る。

 この子たちだけでなく、見習い仲間全員に好かれたい。

 私ならきっと出来るはず。



 女子寮と男子寮の間に食堂がある。その日の夕食は四人一緒に食べた。

 今後も、食事をする際は四人で固まることになりそうな予感がする。



 その日の晩は少し夜更かしして、おしゃべりが盛り上がった。

 各々の故郷や家族についての話題になり、私は悲壮感をいっさい感じさせないように、孤児院育ちであることを明かした。

 少しだけ気まずそうな雰囲気が漂ったけど、周囲に恵まれて幸せに育ったということをさらりと話せば、すぐに元の雰囲気に戻った。



 翌日、四人で教会周辺を散策することになった。

 私を含めてみんなおのぼりさんなため、この風景が物珍しくてまたらない。

 最も、私は既に都市に馴染んでいるかのように振舞っているけれど。


 「ソフィー!」

 聞き覚えのある声が私を呼んだ。

 「パメラさん?」

 明るい表情をしたパメラが私に近寄ってくる。

 そして、他の三人に自己紹介をした。

 「こんにちは。わたしはパメラ。ソフィーの友だちよ」

 三人もそれぞれパメラに自己紹介する。

 「この前、ソフィーに聖術で怪我を治してもらったの」

 パメラがそう言うと、三人はとても驚いた。

 「えぇっ!? ソフィーはもう聖術が使えるの?」

 「はい。ベルガモットの教会で教わりました」

 「すごーい!」

 「私も早く覚えたい!」

 同室三人娘の私に対する評価がグッと上がった。

 ありがとう、パメラ。



 それから修行が開始されるまでの三日間、私なりに有意義な時間を過ごした。


 三人娘以外にも見習い内で交友の輪を広げた。

 同輩たちだけでなく、先輩たちの好感度もいくらか上げることが出来た。


 食堂で働く人に頼んで、邪魔にならなければ料理の練習をしてかまわないという許可を貰った。

 食材は自分持ちだからお金をどうしようと思っていたら、教会で雑用をすればささやかながらも給金を得られることを知り、さっそく申し込んだ。



 部屋で自分の聖典を読んでいたら、随分古そうだと言われて、母が遺してくれたものだと話したらしんみりされた。

 こういうことでも『あの子は良い子だ』と思わせることが出来るはず。



 そして、ついに修行が始まった。

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