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16話 順風満帆

 初めは座学から。


 見習い神官服を着て、同輩と共に講義室に集まる。


 教師を務める神官から聖典の概要を聞かされ、自分は聖典をどう読み解いたかを数日以内に原稿用紙に書くという課題を出された。

 ベルガモットでジョゼフ様から色々教わったし、自分でもあれこれ考えたから、こんなの余裕だよ。



 聖術の基礎も楽々クリア。とっくに習得済みだからね。

 聖力を手のひらから放出するという内容だったけれど、同輩たちが苦悶の表情を浮かべてどうにか放出させたり、まったく放出できない者がいる中、私は眩い光を発して周囲の注目を集めた。

 内心では自慢に思っている事を表に出さず、慎ましい態度をとった。



 木彫りのお守り作成のレクチャーも受けた。

 実はベルガモットで練習して、お守り作成スキルもマスターしてるんだよね。

 私には木彫りの才能もあった。

 だけどあえて、ゆっくりと時間をかけて掘ることにした。

 そのほうが心を込めているような感じがするし、周囲の好感度が上がりそう。



 杖を使った戦闘訓練は初めてだった。

 聖杖術といい、杖に聖力を通して魔物に打撃を与える技術。

 腕力を上げるのではなく、いかに聖力を杖に通せるかが重要だ。

 もちろん、どのように動くかや、杖を使った殴り方も学ぶ。


 これをマスターするのは難しそう。

 けれど邪神討伐に参加するのだから、この技術も習得しておかなければいけない。

 治癒聖術を発動しつつボコれるようになりたい。




 一日に行う正規の修行はあらかじめ決まっている。

 その後は自由に行動して構わない。


 私も自由時間を好きなように使っている。


 三人娘や他の見習い仲間と聖杖術の自主特訓をしたり、課題をやったり。

 図書館に行ったり、教会でバイトをしたり。

 食材を買いに行ったらパメラが現れて一緒に行動したり。


 パメラは私が教会の敷地外へ出ると必ず姿を現す。

 監視しているのではと思う程、タイミングが良い。

 もしかして、魔術か何かで本当に監視してる?

 魔術について詳しくないし、ゲームにそのような設定はなかったけど。

 まぁ、パメラなら別に構わないけどね。

 私は四六時中、気を抜くことなくロールプレイを続けている。

 それはちっとも負担にならず、『ステキな私』でいることが心地良い。

 常に見られていると思えば、むしろ気分が良い。

 もっとも、これがパメラではなく、邪まな目的をもった男性ならば気持ち悪いだろうけど。


 一応、話題に出してみる。

 「私が外に出ると、いつもパメラさんとお会いしますね?」

 「そうね、偶然ね。きっと私たちは相性がいいのよ」

 そういうことにしておこう。



 料理の練習を始めたけれど、手の空いた料理人が教えてくれることもあり、無事に肉じゃがを作れるようになった。

 この調子でレパートリーを増やしたい。



 キャロルから手紙が届いた。

 弓の修行を頑張っていることや、両親や鍛冶屋も元気で過ごしていること、いつかエキナセアに行きたいこと等が書かれていた。


 私も手紙の返事を書く。

 内容は、肉じゃがを作れるようになったことや、魔術師のパメラと仲良くしていること等。


 キャロルとパメラはいずれ仲間になるのだから、今の内からそれとなくお互いの存在を知らせることにした。

 既にパメラにはキャロルという文通相手がいることを話している。



 木彫りのお守りが完成!

 ゆっくり作ったつもりでいたけど、完成させたのは私が一番目だった。

 教師に見事な出来だと褒められ、見習い仲間からもすごいと言われてとても嬉しい。



 「ねぇ、ソフィー。自分がモテてるのって知ってる?」

 三人娘のリンダからそう言われた。

 知っているけどそ知らぬふりをする。

 「モテていますか?」

 「うん。すっごくモテてる」

 そうなんだよね。男子たちからの熱い視線を感じている。

 しかも、男子だけでなく、女子たちからも良い意味で注目されているようだ。

 「男子だけじゃなくてさ、女子にもソフィーのファンが多いんだよ」

 やっぱり、そうだよね。

 ミーナやクララも話しに参加してきた。

 「ソフィーって可愛いし、キレイだし、優しいもんね」

 「私さ、ソフィーと相部屋だから羨ましがれちゃったよ」

 「私も。部屋を変わってって言われちゃったよ」

 こんなにちやほさされるのって嬉しいな。

 私は恥かしがるふりをする。

 「そう言われているなんて……照れてしまいます」

 みんな、ありがとう。

 「男子たちはさ、鉄の掟を作ってるんだって」

 え? 何それ?

 「それは、どのようなものなのですか?」

 「用もないのにソフィーに近づいちゃ駄目だとか、コクっていいのは神官になってからだとか」

 それって高嶺の花扱いなんじゃないの? 私すごい。

 


 治癒聖術のレクチャーが始まった。

 神官になるには治癒聖術の取得が必須条件だ。


 練習のために、特別な道具が用意された。

 それは一見すると人間の腕のように見える。

 教師がそれにナイフを使って傷を作ると、血のように赤い液体が流れ出した。

 そして教師が治癒聖術をかけると、傷口が塞がり液体も消える。


 見習いたちにもそれが配られ、訓練が始まる。

 私は一発で治癒して、またも注目を集めた。

 「本当だったんだ……」

 そんな呟きが耳に届いて、少し気になった。


 この日の修行が終わった後、丁度いいところでクララを見つけて、それとなく聞いてみた。

 「あぁ、そのこと。ソフィーはもう治癒聖術が使えるって、他の子たちに言ってたんだけど、信じてない子もいたから」

 そうだったのか。

 まぁ、いくら私に人気があっても、その手の話を信じない子はいるだろうな。

 「さっき、ソフィーが先生の手伝いでいなかった時、すごかったよ。ソフィーはすごいって、信じてなかった子もはしゃいでさ」



 私の見習い生活は順調だ。

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