新婚旅行にはいかずに一人旅の第43話
はーい、教皇でーす。こんにちはー、みんな、げんきー?今日もみんなを若返らせちゃうよー!ならんでー!
やったら面白そうだし、盛り上がるとは思うが、もちろん、世界のなにかを壊してしまいそうなのでやらない。
こんなあほなことを考えてしまうほどに、今の俺は暇人だ。
俺は、ニートだ。
今現在の俺の立場はこの国の象徴たる教皇なわけだけれども、実際はニートみたいに、仕事がない。ただプララと肉欲に溺れる日々だ。
結婚して何度目かの朝を迎えた。
まだ眠っているプララの真っ白なふわふわのお尻を撫でてみた。俺たちは、教皇の部屋で寝るときは、基本全裸だ。すべすべで気持ちがいい。
「んっ、あっ……」
寝起きは悪いが、感度は大変よろしい。
プララは眠ったまま身をよじって仰向けになる。ぷるんっと、それなりにボリュームのある胸が上を向いてあらわになる。上を向いても崩れない弾力と、指で押すとふわりと得も言われぬやわらかさを兼ね備えたパーフェクトな胸である。
肋骨の間をなぞりながら、おへそ周りを一撫でして、本命をやさしくやさしく撫でまわす。
「もうぅ……起きましたよぉ」
目を覚ました彼女と朝から軽く一ラウンド――。
それはいい。これをここ数日、ほぼ毎日繰り返して、楽しく肉欲に溺れながら過ごしている。
――なにもやることがないからね。
そう、教皇には仕事がない。この国の絶対権威になってしまったはいいものの、もともと存在しない階位であり、文字通り「空前絶後」の役職で俺自身がすでに「唯一無二」の存在なので、仕事がないのである。
実務は若返ってバリバリ働き始めたイル様が、各国とのバランス調整などは枢機卿たちが行っている。基本、俺は俺に会いに来たお客さんの相手くらいだが、その選定は大司祭会議とプラローロ師匠が行っている。
そして今現在、新婚だから、という理由で面会なども入っていない。しかし、戴冠式と結婚式の話を代理から聞いた各国の首脳や富豪はこぞって面会を申し出てきているという。政治的な権威付けを考えている者、若返らせてほしい者、その理由は様々だが、それらは基本、カットされている。
会わなくてもどうということはないからだ。
仕事のない俺たちは必然的にベッドの中で魚になるしかない。
「ああ、つまらない――」
「え?そうですか?私はあなたとこうして過ごすのも気持ちよくて――いえ、楽しくていいですけど」
なんてことを言うのかしら。この子、エッチだわ。
俺たちは起き上がり、二人でお風呂に入ってさっぱりとして――また、したけれど――、
寝室のテラスで朝食を食べていた。俺たち専属のメイド、イクナさんが用意してくれている。
「う、うん、俺も気持ちがいいけれど、あまりもにも回数重ねすぎじゃない?」
「――いや、ですか?」
「まさか!」
俺は頭を振った。事実、彼女の体は合わされば合わさっただけ発見があり、体になじんでいくような気がする。
あえて言おう。大好きだ。
「私としては、早くあなたの子が産みたいですし――」
もう少しゆっくりでもいいけれど、プララにはプララで考えることもあるのだろう。
「それも含めて考えると、なんか働きたいんだよな。仕事がないのは生活のリズムが作れないし、なんだか不安だ。」
「それは分からなくもありませんけど――」
「まぁ、ほかの国との折衝に関しては、プロに任せて俺は俺ができることで楽しくお金を儲けたい。冒険者稼業は楽しかったけれど、今やらせてもらえるかというと難しい」
止められることはないだろうけれど、みんな嫌な顔をするだろうな、とは思う。ワギュウあたりは喜んで冒険者ギルド、イルス支社作ってしまうかもしれないけど。
ちなみにワギュウは今や冒険者ギルド魔国方面長として、多大なる影響力を発揮し、樹海龍ラトーガがいなくなった樹海にも冒険者ギルドを中心とした街をつくり、そこに豪邸を構えているという。
いいなぁ。
俺も今のイル教のシステムに乗っかって金を貰うのではなく、俺の裁量でうまく稼げないかなぁと思う。
「再来週くらいから、向こうに行かれるのでしょう?そこで気分転換しながら、なにができるか考えられたらいかがです?」
「――そうだなぁ」
「私もついていきたい――とは思いますが、さすがにアッティラ帝国の皆さんが嫌な顔されますでしょうから、待ってます――」
花嫁を貰いに正妻がついていく、というのは確かにシュール。
「私は後宮の制度をちゃんと整備したいと思っています。この雰囲気ですと、ほかの国からもあなたと婚姻を結ぼうと考えるでしょう。致し方ありません。あなたが恥ずかしくないようにします」
まぁ、実際、どうなるかはわからないが、たとえばアッティラ帝国の次、もしくはその次くらいにはエンデとの間の子を皇帝にするように動くつもりだ。まぁ、俺の人生がほぼ無限であるならば、各国の姫を娶ってその間の子に国を継がせることを考えてもいい。いずれ世界の国のトップがすべて俺の子で占められることになる。
とするならば、後宮はしっかりとしてもらわなくては困るわけだ。学問的にも思想的にも肉体的にもしっかりと教育を施したい。
「ありがとう。俺が大切なのはいつだってプララだから――もし、いやというなら――」
「言わないでください。私はあなたを世界の柱に据えると誓ってもいるのです。ですから、大丈夫。でも、もし、そういう思いをお持ちでしたら――のこり一週間と少し、私をすごく可愛がってください、ね?」
「もちろん」
プララから軸足をずらすわけにはいかないな、と思う。
それからの一週間と3日ほどは全力で彼女と子作りに励んだ。俺の望みよりも彼女の望みをここは優先させたかったのだ。
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さて、今、俺がいるのは大陸間にある内海だ。だが、魔道船ではない。魔道車をアレンジして水陸両用にしたものだ。アッティラ帝国の第三王女エンデとの結婚に臨むために、1人で海を走らせていた。
この内海を魔道船が走ると、隣接するオゴタ=ハン国とチャガタ国に緊張が走るが、小舟一隻で俺一人ならばさほど問題はない。
本来は魔道船で北部の港町のリンドや、故郷であるゼナを目指すのが、正しいルートであるが、しかしどうしても一人で行きたかった。
もちろん、猛烈な反対にあった。この国のトップが、自分で魔道車を運転して海を渡るなどということがあっていいのか、と言われた。
「守るのがめんどくさい」
俺は単刀直入に言った。俺は自分の身一つならばまず死なない。傷もつかない。伝説の樹海龍ラトーガですら、傷1つ付けられないのだ。人が増えればそれを守らなければならないし、気も使う。
「めんどくさい、と言われましても――」
「足を引っ張られるのは好きじゃないんだ。その代わり、師匠に通信機と俺を召喚する魔道具を作ってもらったから、問題があれば召喚してもらえればいい。俺の魔力使っていいからさ」
師匠が660年前に作った召喚のナイフを、俺を召喚するようにして数本作ってもらってある。一本は師匠に。一本はプララに。一本はイル教に。後は実家にこれから届ける予定。どれも通信機で俺に了解さえ得られれば、この世界のどこからでも俺の魔力で俺を呼びつけることができる仕様だ。
「わかりました――くれぐれも、お気をつけて」
「まかせておいて」
そんなやり取りの後、俺は無事一人旅に出ることができた。ちなみにアッティラ帝国についてからは、教会や暗部の皆さんがかなり気合を入れて待ってくれているらしいので、それに乗っからなくてはならない。
魔道車の底にはマブチモーターのようなスクリューがたくさんついており、俺の無尽蔵の魔力を吸い上げて走っている。水面との摩擦を抑えるための仕掛けもあり、若干前が浮いている。速さは40ノット強。当然大量の魔力を消費する。評価によって俺の魔力が固定されているためにできる芸当だ。
海風が気持ちよく、初夏の空気が気持ちいい。
こうして、俺のこの人生における初一人旅はなんとなく緩やかにスタートした。
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