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神様と結婚と朝ちゅんの第42話

 結婚は人生の墓場だ、なんていうけれど、いろいろな世界で墓場に直行してきた俺には、そうは思えない。墓場は、いつもの場で、いつもの女神が表情を変えずに「次の世界ですが」という場所だ。


 今回もだめかぁ、と残念な気持ちになるのが俺にとっての墓場。


 だとするならば、これは墓場ではないな、と大きなドアが開いて、会場が見渡せたときに思った。ここサンスース大聖堂のメインホールは煌びやかだ。


 天井から、壁から、そして床からも光があふれる。自然光であったり、魔力の光であったり、反射光であったり。そしてそれらは確実にメインの存在を浮き立たせる。師匠の意匠であろう。


 しかし、一切音がしない。人はいる。ぎっちりと人が入っているが、声を出す者、音を立てる者が皆無――。まさに息を殺して俺を見つめている。マントも羽織らされたが、これで笑い出す人はいないらしい。俺の感覚とは少し違った。


 俺は侯爵杖をトーン、トーンと、床を突き鳴らしながら、赤じゅうたんの上を歩いた。


 そして赤じゅうたんの右側に立つイルお婆様のところまで来ると、ドンっと最も強く侯爵杖で床を突いた。そして、そのまま杖を高く掲げ、イルお婆様に差し出した。お婆様は膝をついて受け取る。その瞬間、素早く評価で40代まで若返らせる。


 お婆様――いや、もうすでにお婆様と呼べるほどの人はいなかった。せいぜい、おば様、むしろおねえさまといってもいい。円熟した美人がそこに現れる。


 おぉぉぉぉぉぉぉ、と地鳴りのような声が響き渡る。


 ――はい。奇跡1つっと。


 これくらいわかりやすい方がいい。イル様には、まだまだ実務面を頑張ってもらわなければならない。


 俺は続いて師匠の元まで歩いていく。師匠の前まで来ると、俺は刀を腰から外した。そして一気に抜刀して剣先を天に掲げる。


 美しい波紋に流麗なフォルム。まさにドワーフ大公エンリケの大業物。ざわついていた聴衆が再び息をのんだ。視線が剣先に集まったところで、評価を発動し、剣先で拡散させる――評価の修正:人族換算で年齢-5歳、下限域20歳。


 そのまま納刀。そして師匠に刀を預ける。周囲は、まだ何が起こったかわからない。


 次の瞬間、互いに顔を見合わせて――驚く。5歳の若返りは確実に顔が変わる。成人以降、あまり変わらないように感じるが、5年の月日は確かに肌や髪に刻むものがある。


 ――奇跡2つ目。


 あまり下げてもありがたみがないのでやめた。別に10歳でも下げられるが。


 師匠は少し苦笑いをする。俺のアドリブに対する苦笑いであろう。


 俺はそのまま赤じゅうたんが切れる場所、プララが待つ、階段の手前のところまで歩く。師匠とイル様はその場で立ち止まり、俺たちに視線を送る。


 俺の左側でプララが腕を組んで、2人で階段を上がり始める。同時に鳴り響くオルガンの荘厳な曲。途端に光が俺たちの周りにあふれる。


 この階段を上りきったところ。それが俺たちのたどり着く場所である。


 俺はゆっくりと階段を踏みしめて上る。


 ――あとは、祭壇にある冠に手を伸ばして被ればいい――


 と、思った瞬間だった。


 会場中から「ひゃあぁあっぁぁ」といった恐れにも似た声が上がる。先程までとは全く違う、声。


 俺はすぐさま顔を上げ――おどろく。


 大聖堂のメインホールの天井に大きな大きな、陽炎のようなあの女神の顔が現れたのだ。


 あの女神は、俺が死ぬたびに現れた、女神。


 俺は警戒した。


 瞬時に振り向いて師匠を見ると、師匠ですらも呆然としている。そして、自然と跪き、祈りをささげる姿を取る。それに倣いだす周囲。


 俺は震えるプララの肩を抱き、祭壇の前まで進む。それに合わせるかのように女神は徐々に収束し、最後には人の形をとって祭壇の前に降り立った。


「15年ぶり――ですか」と、女神は小声で言った。


 俺とプララは声をかけられて息を飲んだ。ちなみに女神は薄衣1枚である。息をのんだのは全裸に近いからではない。その時にしっかりと実体化した女神を見たからである。


「これが、神理解の極み――」


 理解した。確かに神理解の極みというほどのものである。


「我が名はサンスース。神託の御子、ライト=サリスよ――」


 女神サンスースが聴衆に聞こえるように言った。けして大きな声ではないが、確実に、ここにいるものすべてに聞こえる声だった。


「はっ」

「そなたに冠を授ける。幾久しく、この世界を守るのですよ」

「はっ、その命を拝受いたしました」


 俺は恭しく頭を下げると冠を頭に載せられた。


「最後に――二人の結婚を、この女神サンスースの名のもとに祝福する!!」


 まばゆい光が会場内を温かく照らし満ちた。


 次の瞬間、にこりと笑って、女神は霧散するかのように実態を失っていく。


「レティ――」


 俺は女神サンスースであり、双子の妹であるレティを掴もうと手を伸ばした。が、すでにそこにはいない。


 動悸がおさまらない。そういえば、昔師匠がレティに言っていた。「きみの怒りは怖いんだよ」と。あれは――これか。確かに、怖い。


 しかし15年ぶりというからには、レティと記憶の共有まではしていない。


 俺の中に様々なことが渦巻く。


 だが、と、俺は自分の心を評価した。今は高ぶる時ではない。冷静になり、戴冠の言葉を述べなくてはならない。


 この会場で、実体化した彼女の顔を見ることができたのは、俺たち二人だけであろう。ならば、それを押し通すまで――。


 そのまま俺は振り向いて大きな声で宣誓した。


「私は今、見ていただいた通り、女神サンスースからこの世界の教皇として冠を戴いた。勘違いをしてほしくはない。私は世界を統べるものにあらず。拝命せしはこの世界の守護者たることである。心正しきものは恐れるに値しない。私はそなたらの味方であり、守護するものである」


 俺は一息を吐いた。


「そして心悪しきものは私を恐れよ。私はそなたらの天敵であり、討滅するものである」


 おおおおお、と大きな声が地鳴りのようにホールを埋め尽くし、俺の教皇就任を祝っていた。


 俺は内心それどころではなく、プララの耳元に呟くように言った。


「こんな結婚式になってすまん」

「いいえ、サンスース様にお祝いされて最高ではないですか――」


 いや、そうだけれど。


<><><><><><><><><><><>


 俺は控室で頭を抱えている。結婚は嬉しい。だが妹が最高神だった衝撃が勝る。


「ああ、教皇、レティちゃんにサンスースの記憶と人格はないから――というか統合されてないから安心してほしい。女神の一部というか、この世界の出先機関みたいなものというか」

「そうか――確かに、これは神理解ですね」


 師匠たちは教主になる時に、神託の御子(ライト)とその妹――神の巫女(レティ)について理解したという。突発的な出来事で、まさに神託そのものであった。そして、神の巫女については、禁忌事項とされたことも付け加えたられたという。


「そうなると、私まで神理解を果たしたということなのでしょうか」

「そうだね。サンスースの加護がついているだろうし、神聖魔法も使えるはずだよ!これで我々はそろって賢人の資格を得たんだよ!」


 俺は確認する。確かに俺にも――プララにもついている。


 ん、いや、それよりも――プララが評価できる!今までできたことがなかったのに。


「ちょっと失礼します――」


 俺は断って評価で2人の中を覗いた。なんの抵抗もなく、覗ける。


「簡単に乗り越えられちゃったな……」


 師匠が頭をポリポリと掻いている。


 俺はプララも師匠もイル様も評価で覗くことができなかったのだが、あの女神サンスースとの邂逅を経て、覗けるようになった。


「すみません。しかし、あの時、サンスースであったレティはまだ覗けませんでした――」


 相変わらず、色がついているだけだ。


「キミは女神サンスースの眷属みたいなものだろ!!上司は評価する相手じゃないからじゃないかな」

 師匠が手をポンっと叩いた。


「眷属ですか――」

「君はこの世界の神様みたいなもの――そういう理解でいいと思う。うん、というかさ、この世界はたぶん女神サンスースがキミのために作った世界だと思うんだよ――お、神の禁忌が出てこない!話せる!」


 サンスースが俺のために作った世界?なんのために?


「しかし、プラローロ様、まさか女神様ご本人が登場されるとは思いませんでしたね」

「ふふん、じゃあ、イル、衆目の中で若返ることは想定していたの?」


 師匠が意地悪そうに笑っていった。


「あら、全然していませんでしたね。でも、あの奇跡を多くの人が見たので、これでのびのびと若返られます」

「イル様は30台中盤で止まっていてくださいよ。教会の権威そのものなのですから」


 俺はそういって評価の修正をしておく。年齢は32歳、と。


「はーい」とまた少し若返ったイル様が、舌を出して笑った。チャーミングである。


「まぁ、そういった冗談はさておくとして、レティちゃんのことはそっとしておくよ!いらぬ虎の尾を踏むことはないし、必要もない。それよりも――!」


 師匠はプララの頭をぎゅっと抱きしめて、「結婚おめでとう、プララ!」といった。


「お母様!ありがとう、ございます――」


 そう、俺たちはこうして結婚することができた。これまで8年の間、お互いを支えあい、助け合ってきた。命の危機もあった。悲しみも共有した。困難を乗り越え、互いの絆を深めあってきた。


 そして、今日、この日が来た。


「師匠、イル様、俺たちは幸せになりますね――」

「はい!ライトとともに――私も」


「ああ、幸せになるんだよ」と二人の声が重なった。


<><><><><><><><><><><>


「――あらためて、というと少し恥ずかしいな」


 結婚式が滞りなく終わり、来客に簡単な挨拶をすると2人きりの夜が来た。


 教皇としての家はまだできていない。まぁ、別に必要性もあまり感じていない。立って半畳寝て一畳。本来、人が必要とするスペースというのはたいして広くない。


 それに聖都イルスのサンスース大聖堂には、教皇の寝所がすでに完成していた。完全なるパーソナルスペースを作り上げており、防音や防犯対策はしっかりされていた。俺が評価しても、漏れは見つからない。ハウスキーパーのメイドも専属の人間がおり、情報は決して漏らされることはない。


「ライトがそういうと、私も恥ずかしいんですけど――」

「ごめんごめん」


 俺はそういって彼女の頬に軽くキスをした。そしてそのまま唇にキスをする。軽く舌を入れると、彼女はおずおずとそれを受け入れて、舌をぎこちなく絡ませてくる。


「ン――」


 口を離すと、プララの口から吐息が漏れる。そのまま瞼にキスをし、外耳部分に舌を這わせる。エルフ特有の耳の形に添って舌を這わせると、彼女の息遣いが湿っぽさを帯びた。


「もうっ――私だけドキドキしている……」

「俺も、ドキドキしているけれど――」


 何百回目かの初体験だから、とは言わなかった。しかし、彼女は言いたいことを理解したようだ。


「前世に嫉妬するのは、バカげているのでやめますよ」


 と言って、俺の首に手を巻き付けて自分から唇を寄せてくる。少し震えているのを見るとプララは緊張しているのだろう。俺はそのままゆっくりと彼女をベッドに押し倒し、彼女の胸元のボタンを一つ一つ解いていく。


 きれい。


 きめの細かな肌にしっかりとしたふくらみ。余分な肉がない研ぎ澄まされた体。俺とともに冒険者稼業にも手を出していたから、お嬢様というよりはアスリートの身体に近いが、さりとて柔らかで滑らかだ。


 これだけ長く過ごしてきたので彼女の裸を初めて見たわけではない。しかし、俺は今、ここに美の集積を見る。


 汗ばむ彼女の桃色に染まる肌。かすかに漏れる湿り気の帯びた吐息。震える唇も含めて、愛おしく、美しい。


 ゆっくりと手を伸ばし、触り、抱き、含み、包み込む。


 ゆっくりと、柔らかに。


 幾度も、何度でも――




 ということで、朝である。スズメもちゅんちゅん啼いている。


 俺は隣で寝ている彼女にそっとシーツをかけて頬にキスをした。実はプララは昔から朝が弱い。疲労とか、そういうことに関わらず、朝の起きることが大変だ、と言っていた。そこに輪をかけて、昨日そこそこ張り切ってしまった。


 初体験は評価を切ってという話だったので、互いに評価を切って「こと」に臨んだ。そして、神理解の果てに得た神性魔法で痛みを癒して、またチャレンジ。貪るようにお互いの身体を求めあった。


 気がつけば朝の白みが訪れるほどに、何度も何度も繰り返してしまった。15歳の性欲おそるべし、である。


 まぁ、これは起きてこれないだろうなと思い、全裸でベッドから出ると、プララが俺の手をつかんだ。


「もう少し、一緒に」


 そういって、頬を染める彼女に、もちろん、と、俺は頷いてまたベッドに戻った。

朝チュンを多様しますが、個人的にはエロエロ官能小説を書くのは好きです。


少し場を整えたかったので、展開を急ぎました。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


ツイッタはじめました。

https://mobile.twitter.com/heugamori

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