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神罰を与えていたのは誰?な第41話

 結婚式はイル教国の聖都イルスで行われる。俺の望みが通るならば、こじんまりした式にしたいとは思うが、これでも神託の御子にして次期イル教主。サンスース大聖堂のメインを使って行われることとなった。


 しかし、見事に俺とプララの意見は無視である。


「仕方ありませんよ、エンデさんの方も同じなのでしょう?」


 と、プララが探りを入れるように聞いてくる。正妻であるプララとの挙式の後には、アッティラ帝国の皇女エンデ=アッティラとの挙式が待っている。そちらもアッティラ帝国の威信をかけて行われるために大規模だ。あちらの国で行われるので、当然、俺は蚊帳の外。


 プララとの式は人族のヨハン=セバスティアン枢機卿をはじめとする4枢機卿が一堂に会し、意見の取りまとめを行っている。まぁ、好きにしてもらえばいい。


 俺たちはお茶を飲むことしかできない。


「ときにライトくん、この婆に何かしていますね?」

「イルお婆様どういったことでしょうか?」

「最近、少し若返った気がするのだけれど。具体的には65歳くらいに」


 たしかにあって8年がたち、80歳になっているイルお婆様は、会った時よりも若く見える。


「ああ、私も思ったよ!イル、若返ってるって」

「――ばれましたか?」


 師匠まではごまかせない。俺は笑いながら言った。


「少し若返ってもらいました」

「――もう少し若返らせてくれてもいいのですよ?」

「具体的には」

「60――いえ、50――ちょっと若返り過ぎかしら?」

「じゃあ、60くらいでいったん落ち着きましょうか」


 俺は評価を発動させ、イルお婆様の評価データを修正する。60歳、と。結果はそんなに早く収束しない。肌の張りは少しでた。髪はもう1カ月程度経つと60歳らしくなる。


「ふふふ、恐ろしき御子様ですこと」

「でも誰も不幸になってないからいいじゃないですか。数万人に施せと言われたら冗談じゃないですけれど」

「もう人外ここに極まれりだね!このプラローロ、アンチエイジングの道具はずいぶん考えてきたけれど、こんなに無節操に人の年を弄繰り回せる人間がいたら、商売あがったりだよ!!」


 師匠はあきれたように言う。この頃は師匠の怒りを買わなくなってきた。樹海龍ラトーガを討滅したころからだろうか。


「師匠である私が言うのもなんだけれど、私はとんでもないものを育ててしまったよ――」

「お母様、それは心配のし過ぎというもの。ライトは道を踏み外したりはしませんから、どうぞご安心なさって――」


 プララは微笑んでいった。師匠は俺が樹海龍ラトーガになることを恐れている。誰も手を出せない、不可侵の暴君。あれは樹海の中だけであったが、俺にその制約はない。


「まぁ、さっさとイル教のトップについてほしいもんだね――イルはそのまま据えておくとしても」

「そうね、ライト君にはさっさと神理解の極みを身に着けていただいて、この世界の枠組みに組み込まれていただかないと」


 めんどくさいなあぁ。


<><><><><><><><><><><>


 俺の結婚は戴冠とともに行われることとなった。組織の枠組みはそのままに、俺が一段上の存在――教皇となることが決定した。ちなみに俺の戴冠に反対した枢機卿と大司祭十数人がイル27世と国母プラローロの名において破門されたらしい。


 その枢機卿と大司祭らはレジスタンス活動に身をやつしたり、テロリストとして育っていったりするかと言ったらそうはならなかった。


 この世界の神は実在しており、顕現している存在である。それゆえの神聖魔法であったり、神託であったり、奇跡や禁忌が存在したりするわけだ。その神の神性を否定するということが破門であり、否応なく神の裁きがその身に落ちる。


 身を隠しても、どこかに閉じこもっても関係なかった。ある一定の期間がたつと、何がどうであっても待っているのは死である。


 この世界は緩やかに様々な神が存在しているが、どれも異端ではなく、どれも実在している。裏を返せば、それが多神教イル教の在り方であった。そのイル教から破門されることはめったになく、特に平民レベルでは皆無なのだ。教会に石を投げても、戒律を破っても、極端なことをいえば俺やイルお婆様を殺そうとしても破門されない。


 だが、教会の職にあり、その位が高位であればあるほど、神性の否定は許されなくなる。今回枢機卿と大司祭らは、ほんの軽い主導権闘争程度のつもりであったが、神託の御子の神性を否定をした、という一点において破門となった。


 つまりそれが師匠プラローロが作り上げたイル教の在り方だった。神託の御子に仕えるために作られた教団の幹部が、神託の御子を蔑ろにしてどうする、というのが師匠とイルお婆様2人の一致した意見である。


「俺はそれほどのものでもないんだが、な」


 俺は眼下に土下座する十数名の元枢機卿と元司祭を見ながらつぶやいた。今、広場が一望できる大聖堂の一室で、俺と師匠とプララの3人でランチを食べているところだが、土下座している彼らは朝からピクリとも動かない。


「それほどのものです、ふふふ」


 プララがその枢機卿やら司祭やらを見て微笑んでいる。


「はっはっは、許してやるかい!?ライト!」

「師匠、許してやってください。俺をちょっと政争の道具にしようとしただけで、あの人が達が死んだら寝覚めが悪い」

「おっけー」


 師匠がその場で片手をあげると、『赦免』を表す鐘がなった。


 全員が一瞬顔をあげ、涙を流しながら再び土下座に入った。


 彼らはそれぞれの故郷の助祭からやり直すことになる。教会組織から抜けることも許されない。抜けた時点で破門が待っている。


「怖いですね、破門による神の怒り」


 プララが席を立った時に俺が師匠につぶやくと、師匠は「内緒だよ」と周りに誰もいないことを確認していった。


「あれ、私の固有スキル『神罰』さ。落とそうと思えば、この世界のなんにでもいけるスキルさ」

「――詐欺ってる!」

「人聞きが悪いなあ。つまり神託の御子であるキミを迎えるために、神が与えた力だよ」

「……なるほど」

「だから比喩ではなく、正確な意味合いにおいて、私は君の保護者で師匠で――従者なのさ」


 これまで師匠は、この一方的な鉾でもって、イル教の敵を打ち滅ぼしてきたのか。

 たしかに父さんが言うところの世界を変える固有スキルというやつだ。


「いいんだよ、これで。おそらく何かであろうキミが顕現している。神託も教義もすべて内容をクリアしているのだから。だから、戴冠して、さっさと神理解の極みを果たしてほしい」

「わかりました――」


 戴冠式ならびに結婚式の手順が決まった。打ち合わせと軽いリハーサルを何度も繰り返させられた。しかも枢機卿会も混乱しているのか、リハーサルをするたびに少しずつ修正されたり、訂正されたり、省かれたりする。


「さすがに……」

「私は平気ですよ?」


 プララは終始ニコニコしている。何度も違うドレスに着替えさせられて、花やコサージュの種類や位置を変えさせられて、最善を尽くそうというスタッフの心意気に答えていた。たまに自分の趣味や主張を織り交ぜているのだから立派だ。


 俺は何でもよいのだけれど、例えば愛刀モノサシをもって入場するのか、アッティラの侯爵杖をもって入場するのか、など事細かに修正が入った。どうも立場的に俺が意見を言うとすべて決まってしまうらしく、師匠から言われるままにしろとのお達しがあった。


 返事も「はい」といった時点で、それが決定項になるらしく、うかつに相槌も打つことができない。

 最初の何も考えていなかったときに「御子様は剣士でいらっしゃるので、刀はいつもお持ちなのですね」「はぁ、はい」の一言で「御子様は刀をもって入場されることを望んでいる」とまで曲解され、「侯爵杖は大切なのですか?」「ええ、まぁ、そうですね」と答えたら「御子様は侯爵杖こそが大切だ、と」ということになった。そこで実際にやってみてしっくりくる方を、となって何度もリハーサルを繰り返されてゲロを吐きそうになった。


 あやうく刀派と杖派で派閥ができそうになり、ついに師匠が「御子に意見を求めないこと、御子の御心を推測して語らないこと、御子の権威を利用しないこと」を通達し、刀を腰に差し、杖を右手に持つで決着した。


 正直、結婚式にどうかと思う。こいつらみんなあほだよな、という感想があるが、口に出そうものなら自殺者が出そうな勢いなので、受け入れた。どうしても格好が悪いので「途中で、刀は師匠に渡し、杖はイルお婆様に渡したい」と、そして手が空いたところで、プララの手を取り戴冠と結婚式に臨む、という筋書きだけを付け加えた。


「鉾の国母、守りの教主を表しているのだ――」


 そんなわけのわからないことをしたり顔で分析をする輩がいたが、御子の心を推測して語ってはならないというお達しのためか、表立ってその推測は広まらなかった。逆を返せばそういったものに縛られない聖都イルスの市民の間では、この頓珍漢な推測が爆発的に広がった。


 嘘を嘘と見抜ける人が現れてほしかった。


 大聖堂の大ホールは左右が大きくすり鉢状に広がっており、3000人は収容できるコンサートホールのような形をしている。俺の親族はもちろん、各地の教会関係者や各国首脳やその代理も参加することになる。


 式は俺が一人で入場、レッドカーペットの道の左右に控える師匠とイルお婆様に刀と杖を渡す、2人は俺の後ろに付き従い、カーペットの先にいるプララのところまで付き添う。俺がプララの手を取って階段を上る。階段上に祭壇があり、そこにある冠を被る――そして、振り向いて戴冠とともに結婚の言葉を述べる。それが一連の流れ。


「神理解の極みはいつですか」

「脳に突き刺さるから問題ないよ」


 俺の問いに怖いことをいう師匠。


「それこそが神がこの地に顕現している証拠となるだろうし、キミにとっては何か新しい指針ができるかもしれない」

「神がこの地に顕現している、か――サンスースに愛されし世界なんですね」

「世界が愛されているならいいんだけどねえ」


 師匠はため息交じりにつぶやいた。


「なんにせよ、まずは結婚式だよ!世界の守護者としてよりも、まずはプララの母親としての思いが優先するのさ!」

「そうですよねえ。プララはだいぶ着替えさせられたりしてたけれど、大丈夫かい?」

「もちろんです!とても楽しく着せてもらいました!」


 そういうところが女の子なんだな、と思う。


 まあ、さりとて、結婚式。気合を入れていこうか!

結婚式回の前編です!

ええ、そういうことにしてください。


ここまで読んでいただきありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願いします。


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