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「……美沙の学校の教室だッ! 連れて行けッ!」
──カシャンッ!
再びスイッチを切り替えたような音がして、次の瞬間、陽祐は学校の教室らしい場所に立っていた。
いままで一度も訪れたことはないが、ここが美沙の通う女子高の教室なのだろう。
ただし、本物そっくりに作られた、夢の世界のニセモノだ。
陽祐の高校の教室と、それほど違うところはない。
窓は割れ、机や椅子の並びは乱れて、机からこぼれ落ちた教科書やノートが床に散らばっていたけど。
「美沙の机はどこだ?」
陽祐は、教室の前方の戸口に立った、コレクターの女にたずねる。
女の背後にはホテルのロビーが見えている。
しかし、戸口の隣の割れた窓からは、学校の廊下が見えていた。夢の世界の空間を捻じ曲げたのか。
「窓側から二列目の、前から三つ目です、美沙さんの記憶では」
言われた机に駆け寄り、中を覗き込んだ。
教科書が何冊か入っている。
引っぱり出してみると、音楽や被服や保健という、予習が必要なさそうな科目ばかりだ。
あとの教科書は家に持ち帰っているのだろう。さすが優等生。
「……ロッカーは?」
「廊下です。扉にネームプレートがついています。ダイヤル錠の番号は『595』です」
後ろの戸口から廊下に出た。
ロッカーは、ほとんど扉が開いて、中のものが割れた窓ガラスにまみれて床に散乱していた。
ジャージに体育館履き、楽譜にスケッチブック、書道道具に水着など。
クラスメートのロッカーの中まで再現したのは、やり過ぎだろう、この世界。
美沙のロッカーは、すぐに見つかった。ダイヤル錠がぶら下がっているところだけ探せばよかった。
番号を合わせてダイヤル錠を外し、扉を開けて、中身を引っぱり出す。
ジャージと裁縫道具セット。違う。
「……俺たちの中学!」
陽祐は叫んだ。
──カシャンッ!
切り替わった先も、学校の廊下だった。しかし、見覚えのある中学校の廊下だ。
並んでいるのは三年生の教室だった。美沙は三年のときは、確かA組だ。
A組の教室を目指して、廊下を駆け出す。
だが、世界が大きく揺れて、陽祐は転んだ。
「──痛てッ!」
窓ガラスの破片の上に手をついてしまった。
手のひらを見る。ぱっくりと二センチばかり傷口が開いて、血が流れ出している。
それで、ようやく気がついた──




