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いい汗を流して、部屋に戻った。
夕食の前に風呂を済ませることにして、バスルームの造りを確かめる。
ビジネスホテルのようなユニットバスと違い、思いのほか広かった。
バスタブと洗面台の間にガラスの仕切り壁があり、トイレはタイル張りの仕切り壁に隠れている。
しかし、それぞれ個室になってはいない。
「そこそこ広いんだから、風呂とトイレは分けてほしかったな」
陽祐がぼやくと、美沙が笑って、
「基本は一人部屋の造りなんだろうね。美沙が先にお風呂入ってもいいかな?」
「構わねーけど」
「お兄ちゃん、バスルームの外で待っててね。何かあれば、すぐ声をかけるから」
「何かって、何があるんだよ」
「いいから。すぐ声が届くところにいてくれなきゃ、イヤだからね」
「相変わらず甘えてるな……」
「何か言った?」
「なんでもねーです」
陽祐は、バスルームのドアに寄りかかり、家から持参した歴史小説の文庫本を読んだ。
美沙が使うシャワーの音がBGM代わりで、相変わらず色気のないことだ。
窓の外は日が傾いている。街並みが黄色く染まっている。
やがて、シャワーの音が止まる。
しばらくして、美沙の声がした。
「お兄ちゃん、出るよ……」
「おう」
陽祐はドアの前を離れて立ち上がる。
かちゃりと、ドアが開き──
「……おい」
陽祐は、ぎょっと眼をむいた。
美沙はシャワーで上気した肌に、バスタオル一枚巻いただけの姿だった。
心細げな華奢な肩。
白い素脚が、タオルの裾から伸びている。
「おまえ、その格好、ふざけすぎだろ」
苦笑いする陽祐に、美沙は眼を伏せながら、
「お兄ちゃんも、シャワー、浴びて来て」
「おう、わかった、行ってくるから、ちゃんと服は着ておけよ。俺が出たら、ロビーで晩メシだから」
「ううん……このまま待ってる」
美沙は眼を伏せたまま、首を振って言う。
そして思いきったように顔を上げ、美沙は、微笑んだ。
「お兄ちゃん……。美沙は、お兄ちゃんが好き。大好き……愛してる」
* * *
──それが、美沙がこの世界を作った理由なのか。




