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掃除のあと、二人でネットで調べて、都会のオフィスビルの上層階にあるホテルを選んだ。
三十二階建てのビルの二十六階から上がホテルであるらしい。
ロビーの天井は七フロア分、吹き抜けで、それを取り巻くかたちで各階に客室が並んでいるという。
ホームページに掲載されたロビーの写真が、いかにも都会的でお洒落で、ここがいいと美沙が決めたのだ。
地図サイトで道順も調べた。都市部の道はややこしいけど、なんとかなるだろう。
一泊分の着替えを用意してバッグに詰め込んだ。
昼食と夕食は、美沙が弁当を用意していた。最初からそのつもりで早起きしたのだという。
二人で車に乗り込んで、出発した。
「普段行けないところなら、セレブの豪邸とか、テレビ局や映画の撮影所でもよかったんじゃねーか?」
陽祐が言うと、美沙は「うーん」と、首をかしげ、
「他人の家なんて行っても落ち着かないし、鍵もかかってるでしょ。テレビ局はどうせ誰もいないし」
「そりゃそーか」
高速のインターまで来て、きのうとは逆の都会方向に進んだ。
「遊園地も営業してねーし、動物園や水族館は空っぽだし、遊び場は限られてるかもな、この世界」
「山とか海なら、いいんじゃない? ほかに人間がいないから、思いきり自然を味わえるよ」
「そうだな。ついでに温泉も貸切で」
「旅館に泊まっても、お食事は出て来ないけどね」
「調理場に入り込んで、二人で作ろうぜ。食材はそのへんの山菜になりそうだけど」
二人で笑い合う。
やがて、行く手に都会のビル群が見えてきた。
道は片側二車線になったが、ほかに車がいないので混み合うことはない。
目的地まで、もうすぐだろう。
美沙は陽祐がセットしたCDの曲に合わせて口ずさんでいる。
去年くらいのヒット曲。
「……おまえ、人に見せたくない秘密の宝物とか、あったりするか?」
何げないふうを装って、きいてみた。
「え? いきなり何よ、お兄ちゃん?」
美沙は笑って、
「お兄ちゃんこそ、秘密のお宝をベッドの下とかに隠してない?」
「ベッドの下? なんだそりゃ?」
「きのう読んだ漫画にあったでしょ、男の子の部屋のベッドの下は、宝の山だって」
「エロ本かよ」
陽祐は苦笑いして、
「そんなもん隠してなんてねーよ、だいたいベッドの下とか、オフクロが掃除に入ったらバレるだろ」
「どこならバレないの?」
「知らねーよ、そんなん家では読まねーし」
陽祐は笑うしかない。うまくはぐらかされてしまった。
そう思っていたら、美沙が言った。
「……美沙だったら、誰にも渡したくない宝物は、どこかに隠すんじゃなくて、肌身離さず持ち歩くよ」
「そっか……」
《アーティファクト》も、そうしているのだろうか。
だとすれば、それを美沙の手から取り上げることは不可能なんじゃないか?




