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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第七章  夏花(真)
61/90

7 - 16

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

「すいませーん、一緒に写真撮っていいですかー?」

 

 女の一人が言って、陽祐の返事も待たず、腕に抱きついてきた。

 もう一人の女が、坊主頭の男に向かって、

 

葉山はやまクンも、マリナと一緒に並んで」

「おう」

 

 にやりと笑って、坊主頭の男が、雪だるまサンタを挟んでマリナと呼ばれた女の反対側に立つ。

 夏花を除いた三人が、スマホのカメラを向けてきた。

 夏花は笑って見ている。

 その耳にピアスが揺れている。

 

「はい、チーズッ」

 

 三つ続けてシャッター音。

 スマホの画面を覗いて、三人がはしゃぐ。

 

「葉山クン、イケメンに映ってんじゃん」

「こいつ外面そとづらだけはいいからな」

「次はユーコとケースケね」

 

 もう一人の女と、茶髪の男の一人が、雪だるまサンタの左右に立った。

 ユーコという女が、雪だるまサンタにキスをするフリをして、ケースケという茶髪も、それを真似た。

 見ている四人が笑って、シャッター音。

 

「夏花も撮ってあげる、そっちに立って」

 

 マリナが言って、夏花は笑って首を振る。

 

「あたしはいいよぉ」

「遠慮しないで、というか、ノブと一緒に写ってあげて」

 

 ケースケが言って、ユーコが、

 

「そうそう、クリスマスを目前にフラれちゃった、可哀想なノブさんのためにボランティア」

「ほら、ノブ、おまえも並べ」

 

 葉山がノブという男を、雪だるまサンタの前に押し出す。

 茶髪が最初に眼が行くけど、そこそこ整った顔立ちの男だ。チャラいけど。

 

「うーん、仕方ないなぁ……」

 

 夏花が苦笑いで、雪だるまサンタの横に立った。

 ケースケが、

 

「夏花ちゃん、もうちょっと前に出て」

「あんまり前に出ると、雪だるまサンタさん、隠れちゃいませんかぁ?」

「だいじょーぶ、その着ぐるみ、頭デカいから」

 

 言ったケースケを、ユーコがたしなめる。

 

「着ぐるみとか言うな、夢を壊すんじゃない、ケースケ」

「いやいや、着ぐるみでしょ、中の人がいるっしょ」

 

 どうやら理解できた。

 マリナと葉山、ユーコとケースケがデキている。

 そして、ノブは別に彼女がいたけど、最近フラれたばかりらしい。

 葉山、ケースケ、ノブは遊び仲間。

 マリナとユーコは、夏花が「最近よく遊んでる子」だ。

 夏花とノブが、雪だるまサンタの前に並んで立った。

 雪だるまサンタは、頭の半分から上が、二人の後ろに見えているかたちだ。

 

「もっと近づけよ、ノブ」

 

 葉山が野次を飛ばし、まんざらでもないようにノブが、夏花の肩に手を回す。

 

「はい、チーズッ」

 

 仲間の四人がスマホのカメラを構えた、瞬間。

 ノブが、夏花の頬にキスをした。

 シャッター音。

 

「──やだぁ」

 

 夏花は笑って、ノブを押しのけた。

 

「最初から、これ狙ってたんでしょぉ、みんなぁ?」

 

 夏花は、くすくす笑っている。

 ほかの五人も、げらげら笑う。

 

「どこかでシャッターチャンス狙ってたんだけど、着ぐるみがいて、ちょうどよかった……」

 

 六人は、笑いながら立ち去っていった。

 

『…………』

 

 黙って見送る陽祐のそばに、鮎川先輩が来た。

 

「ごめん、店の中から見えたけど、お客さん相手してて、すぐ来られなかった」

『いえ……』

 

 陽祐は、着ぐるみの中で首を振る。

 雪だるまサンタの首も、微妙に揺れる。

 鮎川先輩は、立ち去る六人を忌々しげに見やり、

 

「ああいうの、迷惑だよねえ。ケーキ買わないなら、仕事の邪魔だっての」

『…………』

 

 陽祐は、何も答えなかった。


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