7 - 16
* * *
「すいませーん、一緒に写真撮っていいですかー?」
女の一人が言って、陽祐の返事も待たず、腕に抱きついてきた。
もう一人の女が、坊主頭の男に向かって、
「葉山クンも、マリナと一緒に並んで」
「おう」
にやりと笑って、坊主頭の男が、雪だるまサンタを挟んでマリナと呼ばれた女の反対側に立つ。
夏花を除いた三人が、スマホのカメラを向けてきた。
夏花は笑って見ている。
その耳にピアスが揺れている。
「はい、チーズッ」
三つ続けてシャッター音。
スマホの画面を覗いて、三人がはしゃぐ。
「葉山クン、イケメンに映ってんじゃん」
「こいつ外面だけはいいからな」
「次はユーコとケースケね」
もう一人の女と、茶髪の男の一人が、雪だるまサンタの左右に立った。
ユーコという女が、雪だるまサンタにキスをするフリをして、ケースケという茶髪も、それを真似た。
見ている四人が笑って、シャッター音。
「夏花も撮ってあげる、そっちに立って」
マリナが言って、夏花は笑って首を振る。
「あたしはいいよぉ」
「遠慮しないで、というか、ノブと一緒に写ってあげて」
ケースケが言って、ユーコが、
「そうそう、クリスマスを目前にフラれちゃった、可哀想なノブさんのためにボランティア」
「ほら、ノブ、おまえも並べ」
葉山がノブという男を、雪だるまサンタの前に押し出す。
茶髪が最初に眼が行くけど、そこそこ整った顔立ちの男だ。チャラいけど。
「うーん、仕方ないなぁ……」
夏花が苦笑いで、雪だるまサンタの横に立った。
ケースケが、
「夏花ちゃん、もうちょっと前に出て」
「あんまり前に出ると、雪だるまサンタさん、隠れちゃいませんかぁ?」
「だいじょーぶ、その着ぐるみ、頭デカいから」
言ったケースケを、ユーコがたしなめる。
「着ぐるみとか言うな、夢を壊すんじゃない、ケースケ」
「いやいや、着ぐるみでしょ、中の人がいるっしょ」
どうやら理解できた。
マリナと葉山、ユーコとケースケがデキている。
そして、ノブは別に彼女がいたけど、最近フラれたばかりらしい。
葉山、ケースケ、ノブは遊び仲間。
マリナとユーコは、夏花が「最近よく遊んでる子」だ。
夏花とノブが、雪だるまサンタの前に並んで立った。
雪だるまサンタは、頭の半分から上が、二人の後ろに見えているかたちだ。
「もっと近づけよ、ノブ」
葉山が野次を飛ばし、まんざらでもないようにノブが、夏花の肩に手を回す。
「はい、チーズッ」
仲間の四人がスマホのカメラを構えた、瞬間。
ノブが、夏花の頬にキスをした。
シャッター音。
「──やだぁ」
夏花は笑って、ノブを押しのけた。
「最初から、これ狙ってたんでしょぉ、みんなぁ?」
夏花は、くすくす笑っている。
ほかの五人も、げらげら笑う。
「どこかでシャッターチャンス狙ってたんだけど、着ぐるみがいて、ちょうどよかった……」
六人は、笑いながら立ち去っていった。
『…………』
黙って見送る陽祐のそばに、鮎川先輩が来た。
「ごめん、店の中から見えたけど、お客さん相手してて、すぐ来られなかった」
『いえ……』
陽祐は、着ぐるみの中で首を振る。
雪だるまサンタの首も、微妙に揺れる。
鮎川先輩は、立ち去る六人を忌々しげに見やり、
「ああいうの、迷惑だよねえ。ケーキ買わないなら、仕事の邪魔だっての」
『…………』
陽祐は、何も答えなかった。




