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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第七章  夏花(真)
60/90

7 - 15

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 ケーキ屋の営業時間は夜七時までだが、二十四日と二十五日は一時間延長して夜八時の閉店となる。

 クリスマスイブは八時半に、陽祐は夏花と約束をした。

 場所は、おなじみのカラオケ屋だ。

 満室で入れない可能性も高いけど、待ち合わせ場所として、わかりやすい。

 会える時間が遅いことはアルバイトの都合と説明した。

 

「クリスマスは時給が割増しになるし、冬休み、いろいろ遊びに行きたいだろ?」

 

 陽祐が言うと、夏花も納得した。

 バイトの内容は「クリスマス商戦の販促」とだけ言ったら、

 

「スーパーとかですか? 忙しそうですねぇ」

 

 夏花は同情してくれたが、それ以上、詳しいことはきかれなかった。

 陽祐も、着ぐるみ姿を笑い話にされたくないので、それで充分だった。

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 二十四日は予約客へのケーキの引き渡しと、一般客への販売とで、大忙しだった。

 といっても、実際に忙しいのはミニスカサンタの鮎川先輩たちである。

 店の前の臨時カウンターに山積みされたケーキは一般客用。

 予約客へは店内での引き渡しで、ミニスカサンタも二組に分かれて対応している。

 雪だるまサンタの仕事は、きのうまでと、あまり変わらない。

 

『我が家でクリスマス まだ間に合います 美味しいケーキ販売中』

 

 というプラカードを掲げながら、ときどき子供がちょっかいかけてくるのを、適当にあしらうだけだ。

 

「──すっげー、雪だるまがサンタの格好してるー」

「まじー、うけるー」

 

 なんだかチャラい若者たちの声がした。

 ちょっかいをかけてくるのは子供だけではなかった。調子に乗った若者も、ときどき絡んでくる。

 こういう場合、いつもは鮎川先輩がガードに入ってくれるのだけど、きょうは店内組に回っている。

 ほかの女子アルバイトたちも、客の対応で手いっぱいだ。

 陽祐は仕方がなく、動きづらい着ぐるみ姿で、ちょこちょこと方向転換した。

 着ぐるみは視界も悪く、背中は完全に無防備だ。

 ちょっかいを出されるにしても、見える方向からであれば、なんとか対処できるだろう。

 

「おー、こっち向いたー」

「なんか可愛いー、一緒に写真撮りたーい」

 

 チャラい若者は、高校生らしい男女が三人ずつだった。

 いずれも私服姿だが、一人だけ、黒いハーフコートの下に制服らしいモスグリーンのブレザーを着ている。

 どうやら県立西高の生徒らしい。

 坊主頭で体格が良く、運動部員のようだが、細眉で耳にピアスをしているのは、いかにも西高だ。

 水泳の大会で見かけても、西高生は独特のファッションで異彩を放っているのである。

 私服の男二人は茶髪で、こちらも西高生とみてよさそうだ。

 しかし、女たちのほうは黒髪で、少し幼い印象だった。

 それもそのはずだった。

 一人は、夏花だ。あとの二人は同級生か。


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