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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第七章  夏花(真)
59/90

7 - 14

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 十二月上旬。

 陽祐の高校は、期末テストに向けての部活動停止期間に入った。

 それに合わせて水泳部は、三学期の始業式まで長い冬休みとなった。

 普段、練習漬けの日々を送っている水泳部員も、冬休み中は旅行に出かけたり、アルバイトに励む。

 陽祐は期末テストが終わると、鮎川あゆかわという女子の先輩から、ケーキ屋のバイトを紹介された。

 サンタクロースの格好をした雪だるまという奇妙な着ぐるみを着せられる、時給は高いが難儀な仕事だ。

 鮎川先輩はミニスカサンタの格好で、衣装の可愛さで選んだケーキ屋のバイトは今年で三年目だという。

 

「毎年いろいろ男子に声かけるけど、二年続いた子はいないんだよね。わたしも男だったら、やらないけど」

 

 けらけら笑う鮎川先輩も、人が悪い。

 女子は普通の売り子だが、ケーキの予約受付数でボーナスが出るから、みんな張り切っている。

 店の前に設けられた臨時のカウンターから、道行く人々へ元気に声をかけている。

 

「クリスマスケーキ、ご予約承りまーす! いまなら十パーセント割引でーす!」

 

 雪だるまサンタの陽祐は、あまり張り切りようがない、

 頭でっかちの着ぐるみはバランスが悪く、余計な動きをすると転びそうになるからだ。

 おまけに蒸れるし息苦しいし、何か妙な匂いもするしと、時給は高くてもコスパは悪いかもしれない。

 だが、陽祐には短期間で稼ぎたい事情があった。

 夏花にクリスマスプレゼントを買いたかったし、日帰りでいいからスキーにも連れて行きたかった。

 バイトを始めて数日でプレゼント代は稼げたが、給料の振込は月末になる。

 陽祐はタイムカードのコピーをとらせてもらい、家に持ち帰って父親と交渉した。

 

「月末にバイト代が振り込まれたら返すから、一万円、貸してほしいんだけど」

「いますぐ必要なのか? 月末まで待てないってことか?」

「うーん、まあ」

「わかった。二万円、渡しておく。お年玉の前払いってことでいいぞ」

 

 何に使うのかは聞かず、父親は二万円、渡してくれた。

 クリスマス前ということで察しがついたのかもしれない。

 プレゼント代のほかに食事代も必要だったと、あとで気がついたから、余分に借りられて助かった。

 クリスマスの軍資金は手に入ったが、翌日からも陽祐はバイトに精を出した。

 スキーに行くには、もっと金がかかるのだ。

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 夏花へのプレゼントを選ぶには鮎川先輩に助言を乞うた。

 難儀な着ぐるみバイトで稼ぎたい事情は以前に話してあったから、ノリノリで協力してくれた。

 結果、十代から二十代の女性に人気だというブランドのネックレスを選ぶことになった。

 一万円という予算の中で最高の選択肢だと、鮎川先輩は太鼓判を押してくれた。

 

「中学生には、ここまでのお宝、普通は手に入らないからね。年上彼氏の貫禄、見せつけてやって」

 

 あとはクリスマスイブを待つだけだった。


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