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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第七章  夏花(真)
54/90

7 - 9

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 翌日の水曜日。

 陽祐は、いつも利用しているカラオケ屋の前で、夏花と待ち合わせた。


「──セ・ン・パイッ♪」

 

 現れた夏花は、にこにこ笑顔で、屈託のない様子。

 

「……おう」

 

 陽祐は、ぎこちなく笑ってみせ、

 

「ドリンクバー付きでいいよな?」

「フリータイムには、しないんですかぁ?」

「二時間も歌えば腹が減って、あとは何か食いに行きたくなるだろ」

「センパイのおごりですかぁ? ごちそうさまでぇす♪」

 

 夏花は嬉しそうに笑っている。

 受付で手続きを済ませ、ドリンクバーで飲み物を手に入れてから、部屋に入った。

 さっそくソファに腰かけて、慣れた手つきでリモコンを操作する夏花に、陽祐は言った。

 

「……あのさ、ちょっと話、いいか?」

「なんですかぁ? マジメな話っぽいですねぇ」

 

 くすくす笑って、夏花は選曲をキャンセルし、リモコンをテーブルの上に置いて、姿勢を正す。

 

「はい、お聞きしまぁす」

「……片瀬たちと、揉めたらしいな」

 

 陽祐が言うと、夏花は、わずかに表情を強ばらせた。

 だが、誤魔化すように、すぐにまた、くすくすと笑い出し、

 

「揉めたっていうか、一方的に絡まれたんですよねぇ。センパイ、心配してくれちゃいましたぁ?」

「俺が心配する前に、話が全部、終わったんだろ。おまえが何も言わないうちに」

「だって、カッコ悪いじゃないですかぁ。一人で全中に出てるの嫉妬されて、退部を迫られちゃうなんてぇ」

「……おまえ、それ本気で言ってんの?」

 

 陽祐は眉をしかめた。

 

「片瀬たちが、そんなしょーもない理由で、おまえを退部させようとしたと本気で思ってんの?」

「ほかに何があるんですかぁ? 片瀬さんが、あたしを追い出そうとする理由?」

 

 夏花は小首をかしげてみせ、

 

「学校のプールで泳いだあとにクラブで練習するとか、あり得ないことしてる人に、嫉妬されてもねぇ?」

「それの何が、わりーんだよ? 部活もクラブも一生懸命で、人一倍、練習してるってことじゃねーか」

 

 陽祐は夏花を睨んだが、夏花は「だって……」と、冷ややかに笑い、

 

「本気で全中、目指すなら、専任のコーチもいない学校のプールで、いくら泳いでも無駄ですよぉ?」


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