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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第七章  夏花(真)
53/90

7 - 8

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 家に帰ると、エプロン姿の美沙が、パタパタとスリッパで駆けてきた。

 

「お帰りなさい、お兄ちゃん」

「たでーま。おまえが晩メシ作ってんの?」

「おかずはママが作って、美沙はお蕎麦を茹でるだけだけど。ママ、いまお風呂だから、お兄ちゃんは先にごはんで」

「オフクロに言ったんだけどな。俺が帰る時間は決まってんだから、風呂に入るなら、その前にしてくれって」

「でもお兄ちゃん、きょうはいつもより遅かったでしょ」

「…………」

 

 陽祐は気まずく口をつぐむ。きょうは本屋に寄り道したのだ。

 美沙は笑って、

 

「ママもさっきまでテレビ観てたから、お兄ちゃんの言ったこと忘れてたと思うけど。美沙からママに言っておくよ」

「いや……、自分の都合があるのは、お互い様だよな。オフクロには、そのまま忘れさせておけ」

 

 本屋といえば、イヤな話をもう一つ、思い出した。

 夏花が学校で広めているという噂を、美沙も知っているのだろうか。

 

「……おまえ、学校でさ」

「え?」

 

 キッチンへ戻ろうとした美沙は、振り向いて、

 

「なあに、お兄ちゃん?」

「……なんでもねーや」

 

 確かめたところで、どうなるというのだ。

 兄が夏花とつき合っていることを、美沙が知ったところで、どうということもない。


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