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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第七章  夏花(真)
52/90

7 - 7

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 顧問の浜田という教師の立ち会いの下、片瀬たち二年生と夏花は、話し合いをした。

 浜田は、夏花には今後の練習態度を改めること、片瀬たちには夏花に再度チャンスを与えることを求めた。

 片瀬たちも、夏花が謝罪するなら受け入れようという流れになった。

 だが、夏花は悪びれもせずに言ってのけた。

 

「謝れって、誰に対してですかぁ? あたしのマネして一年が練習サボっても、それ本人の問題ですよぉ?」

 

 それで片瀬たちも態度を硬化させた。

 不真面目な部員が所属し続けることは許しがたい。

 夏花が水泳部に残ることを許すなら、主将を辞任させてもらうと、片瀬は主張した。

 やむを得ず、浜田が顧問としての仲裁案を提示した。

 

「まあ、待て、おまえら。そもそも水泳部の活動は、ちょっと特殊なんだ」

 

 スイミングクラブに所属する選手は、学校での水泳部の活動には基本的に参加しない。

 大会の直前に一日、二日ばかり学校のプールに顔を出して、リレーの引継ぎの練習をする程度である。

 それが慣例である以上、スイミングクラブに籍を置く夏花を、退部させることはしない。

 ただし、これまでの夏花自身の態度を考慮して、今後は学校での練習に参加することは認めない。

 練習はクラブでのみ行なってもらいたい。

 大会については、個人種目での出場登録は認めるが、リレーのメンバーからは除外する。

 もしも再び、学校での水泳部の活動に参加を希望するときは、部員全員への謝罪を条件とする。

 それが、学校のプールで真剣に練習している部員たちへのけじめであると、水泳部顧問として考える──

 片瀬たちは、その案で同意した。 

 夏花も承知した。

 

「全中だけは出たいんでぇ、その方向で、お願いしまぁす」

 

 そして、にっこりと浜田に向かって笑い、ぺこりと頭を下げた。

 

「お手間をかけましてぇ、ありがとうございましたぁ」

 

 最後まで悪びれない夏花に、浜田も、片瀬たち二年生部員も、あきれるほかなかった──

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

「──でも、新人戦もエントリーが間に合わなくて結局、個人種目も含めて出場しないことになったんッス」

「…………」

 

 水嶋の話に、陽祐は、黙り込む。

 どうして、それほどの重大事を、夏花は陽祐に告げなかったのか。

 彼氏としてつき合っていても、真面目な相談をするには値しない、頼りない先輩と思われていたのか?

 陽祐は、重い口を開いた。

 

「……落としどころとしては、それが妥当だろうな」

「オレも、そう思うッス。だけど、ここまで揉める前に、オレらでどうにかするべきだったッスよね」

 

 水嶋は、苦い顔で笑って、

 

「先代の主将として、責任を感じるッス。ただ、陽祐先輩の立場では、どう思ってるのか聞いてみたくなって」

「俺は……ごめん。そのへんの話は全然、麻生から聞いてなかった……」

「そうッスか……。なんか余計なこと言ったみたいで、申しわけなかったッス……」

 

 頭を下げる水嶋に、陽祐は、返す言葉が見つからなかった。


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