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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第七章  夏花(真)
48/90

7 - 3

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 地元の夏祭りは、夏休みの最後の週末にあった。

 陽祐は土曜日の練習後の夕方、夏花と待ち合わせた。

 神社の鳥居の前である。屋台が並ぶ参道は、すでに賑わい始めている。

 夏花は浴衣姿で現れた。紺色で赤い金魚が描かれている。

 髪はアップにまとめ、かんざしを挿している。

 

「浴衣、可愛いでしょ? おばあちゃんに作ってもらったんですよぉ」

 

 得意げな夏花に、陽祐は笑って頷き、

 

「おばあさん、そういうの得意なんだな。金魚が夏っぽくて、いいじゃんか」

「かんざしの飾りも金魚鉢のかたちのトンボ玉ですよぉ、浴衣に合わせて選んだんです」

「ああ、うん、可愛いんじゃね」

「似合ってます?」

「うん……ああ、似合ってる似合ってる」

 

 陽祐は苦笑いするほかない。

 確かに、かんざしも浴衣も可愛いし、よく似合っている。

 それはつまり、夏花自身が可愛らしいということだ。惚れた贔屓目も込みで。

 

「混んできたから……はぐれないようにしないとな」

 

 そう言って陽祐は、夏花と手をつないだ。

 照れ隠しの台詞が、わざとらしいと自分でも思った。

 とはいえ、陽祐にとって夏花は初めて作った彼女で、デートの回数もまだ片手で数えられる程度だ。

 格好つけるには経験値が足りない。

 

「もしはぐれちゃっても、ちゃんと見つけて下さいねぇ? 金魚鉢のかんざしが目印ですよ?」


 夏花は笑って言いながら、ほんの少し力を込めて手を握り返してきた。


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