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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第六章  夏花(偽)
44/90

6 - 4

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 陽祐はたずねた。

 

「おまえは、その《アーティファクト》を集めて何をする気だ?」

「特には何も。コレクションは、それ自体が目的みたいなものでしょう?」

 

 相手は夏花の姿で、にっこりとする。

 くそっ、やりづれー。

 

「いまの麻生の姿は、この世界にいる俺と話すためのスピーカーみたいなもんだろ?」

 

 陽祐は仏頂面で言う。

 

「だったら、本物のおまえは何者だ? 男か女か、普段は何をしてるんだ?」

「いちおう女ですから、安心してください。それ以上のことは答えられません」

 

 夏花の姿の女は、悪戯っぽく笑った。

 本当に「女」であるかどうか、陽祐に確かめるすべはないが。

 

「そろそろ、おしゃべりは終わりにしないと、美沙さんに負担がかかります」

「こっちは混乱したままだけどな。そもそも、どうして美沙が俺と二人きりの世界を望む?」

「それは私の口から言うべきではないと思います。デリカシーの問題として」

「美沙にきけっていうのか?」

「美沙さんにそれをたずねたら、途端に世界が崩壊するかもしれませんよ? それが罪悪感の源ですから」

「意味わかんねーぞ、くそっ」

 

 陽祐は舌打ちする。

 

「やっぱり宝探しなんて無理だぞ。美沙が俺から離れたがらないのに」

「いまなら探せますよ。美沙さんは朝まで目を覚まさないと言いましたでしょう?」

「この世界自体が美沙の夢なのに、その中で美沙が眠ってるってのは、どういう状況だ?」

「現実世界で無限小の時間しか過ぎていなくても、あなたがたの体感では確実に時間が経過しています」

 

 夏花の姿の女は、微笑む。

 

「つまり、意識はそれだけ活動しているのですから、記憶を整理するために睡眠も必要というわけです」

「《アーティファクト》はどんな格好をしてるんだ? 俺が見てもわかるもんなのか?」

「見た目は平凡ですが、すぐに違和感を覚えるはずです。存在するはずないのに存在するモノですから……」

 

 夏花の姿が、すっと薄らいだ。

 背後の夜の家並みが透けて見える。

 

「それでは、健闘を祈ってます……」

 

 言い残して、夏花の姿は消えた。


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