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* * *
「……結局、おまえ何者だ?」
陽祐はたずねた。
「美沙がおかしな魔法の道具を手に入れたとして、おまえ自身にも魔法の力があるみたいじゃねーか?」
「《アーティファクト》のコレクターと考えてください」
相手は答えて、にっこりとした。
夏花の姿であることを割り引いても胡散臭い笑顔だ。
「私もいくつか《アーティファクト》を所有していて、その力を借りているんです」
「それで美沙の記憶を覗いて、あいつがどうやって《アーティファクト》とやらを手に入れたか知ったのか」
陽祐は、ふんっと鼻を鳴らす。
気に入らない。ひとの妹の夢を覗き見するなんて。
「だが、美沙が《アーティファクト》を手に入れたことは、どうしてわかった? それは現実世界の話だろ」
「世界のどこに別の《アーティファクト》が存在するか、教えてくれる《アーティファクト》があります」
「都合がいい設定だな。でも、それなら簡単じゃねーか」
陽祐は相手をにらみつけた。
「おまえは魔法の道具で、美沙が隠したお宝の場所がわかるし、美沙の記憶も覗ける。宝の山はどこだ?」
「そう単純ではないんです。宝探しの《アーティファクト》は現実世界でしか効果がありませんし」
相手は夏花の顔で、苦笑いする。
「美沙さん自身、肝心の隠し場所を記憶していませんでした」
「自分で隠して忘れてるってのか?」
陽祐は、あきれるほかはない。
几帳面な優等生の美沙が、自分で隠したお宝の在処を忘れるなんて考えられないことだ。
相手は首を振り、
「忘れたわけでもないでしょう。夢の世界に《アーティファクト》を隠したのも無意識のことのようです」
「この世界を作ったのも無意識なら、お宝を隠したのも無意識ってか」
説明としては都合がいい。
だが、陽祐にとっては都合が悪すぎる。
この世界が崩壊するとか、そうでなければ永遠に閉じ込められたままだとか、相手の話を信用すればだが。
相手はまた、にっこりとして、
「でも、それほど遠い場所ではないはずです。美沙さんにとっては夢を叶えてくれる大事なお宝ですから」
どうも胡散臭い。
こいつ、ほかにも何か知っていながら、隠していることがありそーだ。
そう勘ぐってしまうのは、相手が夏花の姿をしているからかもしれないけど。
陽祐は、ため息をついた。
「おまえに美沙が隠した《アーティファクト》とやらを引き渡せば、美沙と俺は助かるって言うのか?」
「この世界から、あなたも美沙さんも解放されます。この世界自体が美沙さんを苦しめる罪悪感の源なので」
「俺がおまえの言うことを信用していい理由が、どこにある?」
「信用してもらえなければ、あなたは永遠に現実世界には戻れません」
相手は軽く肩をすくめて見せる。
夢の世界に閉じ込められる前の学校帰り。
本物の夏花に会ったときも、そんな芝居がかった仕草をしていたと思い出す。
夏花の姿で、夏花の声で──でも夏花とは違った喋り方で、相手は言った。
* * *
この世界が崩壊すれば、美沙さんの《アーティファクト》は、もろとも消滅するでしょう。
私としては、それでも構わないのです。
《アーティファクト》を自分が手に入れられなければ、消滅させることが私の目的ですから。
でも、手に入るものなら手に入れたいですし、そのために私たちは協力し合えるはずです──




