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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第六章  夏花(偽)
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43/90

6 - 3

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

「……結局、おまえ何者だ?」

 

 陽祐はたずねた。

 

「美沙がおかしな魔法の道具を手に入れたとして、おまえ自身にも魔法の力があるみたいじゃねーか?」

「《アーティファクト》のコレクターと考えてください」

 

 相手は答えて、にっこりとした。

 夏花の姿であることを割り引いても胡散臭い笑顔だ。

 

「私もいくつか《アーティファクト》を所有していて、その力を借りているんです」

「それで美沙の記憶を覗いて、あいつがどうやって《アーティファクト》とやらを手に入れたか知ったのか」

 

 陽祐は、ふんっと鼻を鳴らす。

 気に入らない。ひとの妹の夢を覗き見するなんて。

 

「だが、美沙が《アーティファクト》を手に入れたことは、どうしてわかった? それは現実世界の話だろ」

「世界のどこに別の《アーティファクト》が存在するか、教えてくれる《アーティファクト》があります」

「都合がいい設定だな。でも、それなら簡単じゃねーか」

 

 陽祐は相手をにらみつけた。

 

「おまえは魔法の道具で、美沙が隠したお宝の場所がわかるし、美沙の記憶も覗ける。宝の山はどこだ?」

「そう単純ではないんです。宝探しの《アーティファクト》は現実世界でしか効果がありませんし」

 

 相手は夏花の顔で、苦笑いする。

 

「美沙さん自身、肝心の隠し場所を記憶していませんでした」

「自分で隠して忘れてるってのか?」

 

 陽祐は、あきれるほかはない。

 几帳面な優等生の美沙が、自分で隠したお宝の在処ありかを忘れるなんて考えられないことだ。

 相手は首を振り、

 

「忘れたわけでもないでしょう。夢の世界に《アーティファクト》を隠したのも無意識のことのようです」

「この世界を作ったのも無意識なら、お宝を隠したのも無意識ってか」

 

 説明としては都合がいい。

 だが、陽祐にとっては都合が悪すぎる。

 この世界が崩壊するとか、そうでなければ永遠に閉じ込められたままだとか、相手の話を信用すればだが。

 相手はまた、にっこりとして、

 

「でも、それほど遠い場所ではないはずです。美沙さんにとっては夢を叶えてくれる大事なお宝ですから」

 

 どうも胡散臭い。

 こいつ、ほかにも何か知っていながら、隠していることがありそーだ。

 そう勘ぐってしまうのは、相手が夏花の姿をしているからかもしれないけど。

 陽祐は、ため息をついた。

 

「おまえに美沙が隠した《アーティファクト》とやらを引き渡せば、美沙と俺は助かるって言うのか?」

「この世界から、あなたも美沙さんも解放されます。この世界自体が美沙さんを苦しめる罪悪感の源なので」

「俺がおまえの言うことを信用していい理由が、どこにある?」

「信用してもらえなければ、あなたは永遠に現実世界には戻れません」

 

 相手は軽く肩をすくめて見せる。

 夢の世界に閉じ込められる前の学校帰り。

 本物の夏花に会ったときも、そんな芝居がかった仕草をしていたと思い出す。

 夏花の姿で、夏花の声で──でも夏花とは違った喋り方で、相手は言った。

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 この世界が崩壊すれば、美沙さんの《アーティファクト》は、もろとも消滅するでしょう。

 私としては、それでも構わないのです。

《アーティファクト》を自分が手に入れられなければ、消滅させることが私の目的ですから。

 でも、手に入るものなら手に入れたいですし、そのために私たちは協力し合えるはずです──


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