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河原より一段高い駐車場に車を停めて、何度か往復して荷物を運んだ。
まずは二人で浅瀬に石を積んで小さな堰を作り、スイカを冷やす。
続いてバーベキューセットを組み立てて、火を起こす。
火の番は美沙に任せておいて、陽祐はパラソルを立て、その下にチェアを二つ並べる。
クーラーボックスも日が当たらないよう、パラソルの下に置いた。
バーベキューセットのそばにテーブルを広げて、紙皿や紙コップ、焼肉のタレのボトルなどを並べた。
その間、美沙は野菜を焼き始めている。
クーラーボックスから缶ビールを出し、二つのコップに注ぎ、一つを美沙に差し出した。
「美沙はいいや。酔うと動けなくなりそうだから」
「なら、俺が飲んじまうぞ」
「お兄ちゃんも、ほどほどにしてね。あとで美沙に泳ぎを教えてくれるんでしょ?」
そういえば、そういう約束だった。
美沙には代わりにコーラを注いでやり、陽祐は焼き網に肉を並べ始めた。
すぐに、肉が焼けるいい匂いが辺りに漂い始めた。
「お兄ちゃん、食べ始めていいよ」
「おまえから食えよ。ほっといても俺は食うんだから」
「そう……?」
美沙は遠慮がちに肉をとり、紙皿に出した焼肉のタレをつけてから、口に運ぶ。
「……おいしい」
そう言って、にっこり微笑んだ。
「やっぱ、焼きたては最高だよな」
陽祐も笑って、自分の肉をとり始める。
だが、バーベキューに来ても、美沙の少食は相変わらずだった。
「せっかくだから、もっと食えよ」
勧める陽祐に、美沙は恥ずかしげに笑って、
「でも、このあと泳ぐし」
「泳ぐから食わなきゃならねーんじゃんか」
「じゃあ、もうちょっとだけ」
そう言いながら、野菜ばかり何切れか皿にとっている。
陽祐はあきれて、
「ほんとに少食だな。無理に我慢して食わないようにしてるんじゃねーよな?」
「無理してないよ。おなかいっぱいなんだよ、ほんとに」
美沙は苦笑いする。
「それにママを見てると、きっと食べたら太っちゃう体質だと思う、美沙も」
「オフクロの場合はビールのせいだろ。元インカレの女王が見る影もねーやな」
「ママの学生時代の写真を見ると、綺麗だもんね」
「というより、逞しいってやつだろ、ありゃ」
陽祐は笑い、
「とにかく、食わねーで痩せようなんて不健康は許さん。よく食って、よく運動すること。この夏の目標な」
「うーん、どっちも苦手だなあ……」
肉と野菜を平らげたあとは、スイカの登場だった。
「でも、包丁、忘れちゃった。どうしよう……」
「しょうがねーな。ちょいと河原を汚すことになるけど、スイカだし自然に還るだろ」
陽祐はスイカを抱え上げると、大きな石の上に叩き落した。
割れたスイカを手で小さく分けて、ひと切れを美沙に渡す。
「おなかいっぱいで、全部は食べきれそうもないね」
「俺が食うよ。残ったらクーラーボックスに入れて持ち帰ってもいいし」
結局、スイカも陽祐ばかり腹いっぱいに食べたあとは、パラソルの下で休むことにした。
「美沙、いまのうちに着替えてきちゃうね」
ビールも飲まなかったのに、何故だか赤い顔をして美沙は言う。
「どこで着替えんだ?」
「あっちの岩場の陰とか。ずっと話しかけてるから、お兄ちゃん、返事してね」
「了解」
声さえ聞こえていれば、一人になっても安心ということだろう。
岩陰に回った美沙が、さっそく呼びかけてきた。
「お兄ちゃーん、ビーチボールふくらませておいてー」
「あー、わかったー」
まったく注文が多い。
「バーベキューとスイカ、おいしかったねー」
「そうだなー」
返事をするには、いちいち空気を吹き込むのを中断しなければならない。
「泳ぎは、何を教えてくれるのー?」
「まず、バタ足からだな。俺もこっちで着替えちまうから、声かけるまで戻るなよ」
「わかったー。でも、ちゃんと返事してー」
「甘えてるな、こりゃ完全」
「なんか言ったー?」
「なんにもー」




