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用を済ませて男子トイレを出た陽祐は、あとについて来た美沙に、
「おまえはいいのか?」
「うん。それより、お兄ちゃん」
美沙は、売店を指差した。
「おみやげ見ていこうよ」
「みやげなんて、誰に持って帰るんだよ?」
「自分たちにでも、いいじゃない。せっかく来たんだから、ね?」
そんなの帰りでいいだろうと思ったが、帰りは遊び疲れて余計に面倒くさくなっているだろう。
仕方なく、妹の思いつきにつき合うことにした。
売店に入って、置き物やマスコットの類を、美沙は興味深そうに見て回る。
そんなもので嬉しそうにしているのは、やっぱり子供だと陽祐は思ったけど、口には出さない。
陽祐は菓子のコーナーで、どこのサービスエリアでも売っていそうなクッキーやまんじゅうを物色した。
「牛もニワトリもいなければ、牛乳や卵も手に入らないから、クッキーなんか食えるのも、いまのうちか」
そう考えると、ありったけの菓子を持って帰りたくなった。
妙に可愛くデフォルメされた、牛乳瓶を抱えた牛のぬいぐるみを手にした美沙が、
「菜食主義者になるしか、なさそうだね」
「あしたは図書館でも行って、農業の研究するか」
「入口は閉まってると思うけど……またガラスを割って、入る気だよね?」
美沙は苦笑いする。
陽祐は一通りの菓子を一箱ずつ持ち帰ることにした。
美沙は蕎麦と、うどんを選んだ。
「さっきのぬいぐるみは、いいのか?」
「うん。あの子は、元の世界に戻ったときに、また機会があれば」
「いま連れて帰っても、いなくなっちまうってのか?」
「わかんないけど……ここがお兄ちゃんの言うような実験空間なら、そうかなって」
おみやげを抱えて車に乗り込み、再び出発した。
高速を降りたところにセルフのガソリンスタンドがあったので、満タンに給油した。
支払いは父親の財布から借りてきたクレジットカードで済ませた。
ここからは地図の出番だった。残念ながら父親の車にはカーナビがついていない。
「おまえは地図……読めないよな?」
たずねる陽祐に、美沙は苦笑いして、
「ごめん。美沙が見てもお兄ちゃんを怒らせるだけだと思う」
「どこかのカー用品店から頂いて来ればよかったな、カーナビ」
「すっかりタダで手に入れる発想になってるね……」
美沙には地図を広げるだけの役目をさせて、陽祐は実際の風景と見比べながら車を走らせた。
迷いかけたときには、すぐに車を停めて引き返す。
ほかに車がいないので、ふらふら走っていても文句は言われない。
目的地が近づくにつれて、子供の頃に来たときの記憶が甦ってきた。
山に入ってからは一本道になり、急カーブに気をつけるだけでよかった。
周囲は鬱蒼とした森で、ここが動物が消えた世界でなければ、熊でも出そうだ。
目的地の沢の入口を知らせる案内標識があった。
陽祐は標識に従って、細い脇道に車を入れ、徐行運転で坂を下った。
やがて視界が開けると、目の前に渓流があった。




