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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第五章  美沙(四)
33/90

5 - 2

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 国道をしばらく走ると、高速のインターがあった。ETC搭載車なので、すんなり通過できた。

 ほかの車がいないので、本線への合流も問題なかった。

 片側三車線の真ん中に入り、陽祐はアクセルを踏み込んだ。

 

「お兄ちゃん、安全運転」

「わかってる。制限速度は百キロだろ」

「百キロ?」

 

 美沙は眼を丸くした。

 

「高速って、そんなに飛ばしていいの? 嘘ついてないよね?」

「オヤジもいつもそれくらい出してただろ」

「パパはスピード違反してるもんだと思ってた」

「娘に信用ねーな、オヤジのやつ。営業だから免停が怖いんで、道交法厳守だぞ、うちのオヤジは」

 

 ほかに一台の車もいないところを走っているとスピード感がなくなる。

 陽祐はときどきメーターに眼をやって、いまの速度を確かめた。

 美沙が何も気づかないようなので、こっそり百十キロまで上げていたけど。

 やがて、周囲が田園風景に変わった。

 青々とした水田を見やって、陽祐は言った。

 

「これ、誰も刈り取りに来ないんじゃ、もったいねーな」

「秋になったら二人で日本中、稲刈りして回る?」

 

 美沙が真顔で言って、陽祐もうなずき、

 

「俺たちが食う分だけでも刈り入れたいな。肉や魚がなくなれば、米と野菜で腹いっぱいにするしかねーし」

 

 目的地まで半分来たところのサービスエリアで、休憩することにした。

 車を降りてサングラスを外し、「んーっ」と伸びをした陽祐は、

 

「便所行って来るから、待っててくれるか」

「……美沙、ついて行っていい?」

「は?」

 

 あきれてきき返す陽祐に、サングラスを手に握った美沙は、恥ずかしそうにうつむき、

 

「入口のところで待って、お兄ちゃんのほうは見ないようにするから」

「勘弁しろよ。家ではそんなこと言わねーじゃん」

「家とは違うよ。こんな遠いところに来たんだもん。それに……」

 

 美沙は泣きだしそうに、顔を赤くした。

 

「本当は、家にいるときも、一秒だって離れていたくないんだよ」

「…………」

 

 陽祐は、ため息をついた。

 

「わかった。ついて来い。その代わり、俺がションベンしてる間、うしろ向いてろよ」

「……うん」

 

 美沙は、うなずいた。


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