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第五章 美沙(四)
「──お兄ちゃん、朝」
「あ……、ああ」
美沙に声をかけられて、陽祐は布団の上で、渋々と眼を開けた。
外が明るかった。
美沙が自分の布団を畳みながら、
「きょうもいいお天気。バーベキューには、ぴったりだよ」
「そうだな……」
妹の寝起きの良さが、陽祐には不思議である。
目覚ましもセットしていないのに、よく起きられるものだ。
自分のほうが、よほど受験勉強の疲れが溜まっているのかもしれないけど。
「美沙は朝ごはんの仕度するから、お兄ちゃんは、お洗濯をお願い。ごはんとお洗濯が済んだら、出発ね」
「……思ったんだけど、洗濯なんかやめて、毎日新しい服を着るのはどうだ?」
「普通の生活するんでしょ? だめだめ」
「そう言うだろうと思ったけど……」
あくびしながら体を起こし、頭を掻く。
「お兄ちゃん。二度寝はしないでね」
あきれた顔で言い残し、美沙は和室を出て行った。
「ふぁ……、ねむ……」
ここが夢の中の世界だという仮説も捨てたわけではない。
しかし、夢の中で、これほど眠いということがあるだろうか。
布団を畳み、洗濯機をセットしてからダイニングへ行く。
ごはんと卵スープとハムサラダの朝食が用意されていた。
「スープはインスタントだけど我慢して。美沙はバーベキューの下ごしらえするから、先に食べていいよ」
「了解」
「あと、きょうは土曜日で、本当は燃えるゴミの日なんだけど……」
「そっか、そういう問題もあったか」
近所のゴミ捨て場に出しても、回収車が来ないので、いつまでもそのままだ。
「河川敷に穴でも掘って、埋めるか?」
「もう二、三日、貯めておけるから、まとめて捨てに行くのがいいかも」
「そうだな……」
食事が済んで洗濯物を干し終えたが、まだ美沙の準備がかかりそうだった。
陽祐は自分の部屋へ行き、ドライブに持って行くCDを選ぶことにした。
きのうの約束の風呂掃除は夜に回すことにした。
選んだCDを十枚ばかり抱えてダイニングへ戻ると、美沙も仕度ができていた。
泥棒が入ることはないだろうけど、いつもの習慣で家中の戸締りを確かめてから、車に乗り込んだ。
缶ビールはクーラーボックスに入れて用意した。もちろん、スイカも積み込んだ。
バーベキューセットやパラソルは、きのうから車に積んだままだ。
サングラスをかけた兄妹は、顔を見合わせ、にやりと笑う。
美沙は白いワンピースに着替えていた。夏らしくて悪くない格好だと陽祐は思う。
陽祐自身はTシャツと短パンという普段着だった。それが一番楽なのだ。
カーステレオにCDをセットして、陽祐と美沙は、出発した。




