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家に戻って、車は門の外に停めた。車庫入れは手間だし、正直なところ自信もない。
夕食は陽祐も協力してハンバーグを作り、今夜はビール抜きで食べた。食後は再び車で出かけるからだ。
デザートは桃が出てきた。スイカはバーベキューに持って行くことにした。
全て平らげたあと、美沙が、
「お兄ちゃん、お皿を洗うのお願いしちゃっていい?」
「いいけど……」
陽祐が引き受けると、美沙はそそくさとダイニングを出て行った。
何するつもりだ?
皿を洗い終えたが、美沙は戻らない。見てない隙に、ビール飲んじまうぞ。
パソコンを立ち上げ、地図のサイトで、あした出かける川への道順を調べた。
子供の頃に父親の運転する車で出かけたきりで、うろ覚えだったからだ。
国道から高速に乗るまでは簡単だけど、高速を降りてからが難しかった。
車に道路地図が積んであったはずだ。ネットの地図を印刷するより、わかりやすいだろう。
ついでに発電所の仕組みについても調べた。
この世界で怖いのが停電だった。冷蔵庫が使えなくなった場合、食料の保存が困るのだ。
当然のことだが、火力発電所や原子力発電所は、燃料が切れれば停止する。
問題は、それまでどのくらい余裕があるかだった。
しかし、燃料の残量がネットで公開されているはずもない。
頼みの綱は水力発電や太陽光発電だが、それもいつまでも正常に働き続ける保証はない。
もっとも、この世界が美沙の言うように「神様がくれた夏休み」であるのなら。
停電の心配なんて取り越し苦労だろう。
リアルに思えて、この世界は嘘だらけなのかもしれない。
兄と妹が二人きりで取り残されたこと自体、すでに嘘のような話なのだ。
「──お待たせ、お兄ちゃん」
声をかけられ、振り向いた。
浴衣姿の美沙が立っていた。
白地に紺で朝顔を描いた、落ち着いた雰囲気の浴衣だ。
綺麗に結んだ赤い帯も、当然、自分一人で着付けたのだろう。
「帯の結び方を思い出すのに時間かかっちゃったけど、せっかく花火だから」
照れたように笑う美沙を、思わず見つめてしまう。
悪くない、と思う。
兄貴なんかじゃなくて、誰かいい男がいれば、そいつに見せたほうが絶対いいだろう。
世界が元に戻ったら、いい彼氏を見つけることを勧めてやろう。
そんな空想を振り払うように、陽祐はパソコンに向き直って電源を切りながら、
「さっさと出かけるぞ。花火は山ほどあるからな」
「うん」
素っ気ない態度にも、美沙が気を悪くした様子はなかった。花火がよほど楽しみなのだろう。




