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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第四章  美沙(三)
26/90

4 - 7

 

「おまたせー」

 

 手提げ袋を手に、にこにこ顔の美沙が戻って来た。

 

「どうしたの? 浴衣?」

「ああ……、いや……」

 

 陽祐は頭を掻く。きっと錯覚だろう。

 美沙が言った。

 

「浴衣なら、うちにもあるよ、きちんと仕立てたやつ」

「え?」

 

 陽祐は美沙の顔を見る。美沙は、にこにこ笑顔のまま、

 

「ママが若いとき作ったのだけど、美沙にくれるって言ってたの。今度着てみせようか?」

「……そのうち、夏祭りのときでもな」

 

 陽祐は苦笑いで答える。

 美沙なら浴衣姿の見栄えも悪くないだろうけど、それを兄貴なんかに見せつけてどうする気だ。

 だが、美沙は嬉しそうに、

 

「夏祭りって、お兄ちゃん、今年は一緒に行ってくれるの?」

「えっ?」

 

 そういえば、美沙と夏祭りに出かけたのは小学四年生の頃が最後だ。

 それからは毎年、友達と行って、おととしは夏花と一緒だった。

 去年は行かなかった。美沙には一緒に行こうとせがまれたけど、面倒だからと断ったのだ。

 

「……そうだな。世界が元に戻ったら、行ってもいいな……」

 

 世界が元に戻るのならば、あるいは元の世界に戻れるのであれば。

 今年の夏祭りは妹につき合ってやってもいいと思う。

 美沙は小指を立てて、にっこりとした。

 

「約束ね。指切り」

「……ったく、ガキかよ、指切りって」

 

 陽祐は苦笑いしながらも、美沙と指を絡めた。


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