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「おまたせー」
手提げ袋を手に、にこにこ顔の美沙が戻って来た。
「どうしたの? 浴衣?」
「ああ……、いや……」
陽祐は頭を掻く。きっと錯覚だろう。
美沙が言った。
「浴衣なら、うちにもあるよ、きちんと仕立てたやつ」
「え?」
陽祐は美沙の顔を見る。美沙は、にこにこ笑顔のまま、
「ママが若いとき作ったのだけど、美沙にくれるって言ってたの。今度着てみせようか?」
「……そのうち、夏祭りのときでもな」
陽祐は苦笑いで答える。
美沙なら浴衣姿の見栄えも悪くないだろうけど、それを兄貴なんかに見せつけてどうする気だ。
だが、美沙は嬉しそうに、
「夏祭りって、お兄ちゃん、今年は一緒に行ってくれるの?」
「えっ?」
そういえば、美沙と夏祭りに出かけたのは小学四年生の頃が最後だ。
それからは毎年、友達と行って、おととしは夏花と一緒だった。
去年は行かなかった。美沙には一緒に行こうとせがまれたけど、面倒だからと断ったのだ。
「……そうだな。世界が元に戻ったら、行ってもいいな……」
世界が元に戻るのならば、あるいは元の世界に戻れるのであれば。
今年の夏祭りは妹につき合ってやってもいいと思う。
美沙は小指を立てて、にっこりとした。
「約束ね。指切り」
「……ったく、ガキかよ、指切りって」
陽祐は苦笑いしながらも、美沙と指を絡めた。




