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非常ベルが鳴っているのは入口付近だけで、店の奥に進めば聞こえなくなった。
店内は半分明かりが消えていたが、商品を選ぶのに支障はない。
二人で一台ずつショッピングカートを押して、三階の雑貨とレジャー用品の売場から回ることにした。
ちゃんとエレベーターが動いてくれて助かった。
バーベキューセット、ビーチパラソル、折り畳み式のテーブルとチェア、クーラーボックス──
眼についたものを片っ端から積んでいくと、二台のカートは、たちまちいっぱいになった。
「いったん車に戻って荷物を置いて来ようぜ」
一階に降りると、防犯ベルが鳴りやんでいた。
「誰か止めたのか、まさか?」
あたりを見回す陽祐に、美沙が、
「一定の時間で自動的に止まる仕組みじゃないの?」
「警備員が駆けつけて来るなら、それでも構わなかったんだけどな……」
深く考えないことにした。
スーパーにはこれから何度も来ることになるだろうし、いつまでもベルが鳴っていては、うるさいだけだ。
バーベキューセットその他の荷物を車のトランクに積み込み、空になったカートを押して店内に戻る。
今度は二階の衣料品売場へ向かった。
「お兄ちゃん、自分の水着、選んで来て。美沙もちょっと見て来るから」
エレベーターを降りるなり、美沙はその場にカートを置いて、婦人服の売場へ駆け出した。
シャワーはついて来てほしかったのに、ここではぐれるのは平気なのか?
いよいよ甘えていただけだな。
陽祐は美沙のカートをエレベーター前に残し、自分のカートだけを押して、紳士服の売場へ行った。
水着を選んだついでに、普段着用にTシャツと短パンを何枚か手に入れた。
棚ごとごっそり頂戴してもいいけど、持って帰るのが邪魔になる。
近くにサングラスのコーナーも見つけて、一番高いブランド品を自分の分と美沙の分、頂いておいた。
ドライブには必需品だろう。
まだ美沙が戻らないので、婦人服の売場へ行ってみた。紳士服売場の倍近い広さだ。
水着のコーナーはどこか、きょろきょろ見回しながら歩いていると。
──え?
視界の端を横切る人影があった。
カーテンが開いたままの試着室の鏡に映ったのだ。
どこかの学校の制服みたいな紺色のブレザー姿に見えた。
──麻生?
何故そう思ったのか、自分でもわからない。高校のブレザーは紺ではなくグレーだ。
鏡に映った人影が通り過ぎたはずの場所を振り返る。
浴衣姿のマネキンが立っていた。紺色の浴衣だった。
これを見間違えたのか?
辺りを見回す。誰も歩いてなどいない。
もう一度、マネキンを見る。
紺のブレザーといえば、中学の制服がそうだったけど……




