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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第四章  美沙(三)
25/90

4 - 6

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 非常ベルが鳴っているのは入口付近だけで、店の奥に進めば聞こえなくなった。

 店内は半分明かりが消えていたが、商品を選ぶのに支障はない。

 二人で一台ずつショッピングカートを押して、三階の雑貨とレジャー用品の売場から回ることにした。

 ちゃんとエレベーターが動いてくれて助かった。

 バーベキューセット、ビーチパラソル、折り畳み式のテーブルとチェア、クーラーボックス──

 眼についたものを片っ端から積んでいくと、二台のカートは、たちまちいっぱいになった。

 

「いったん車に戻って荷物を置いて来ようぜ」

 

 一階に降りると、防犯ベルが鳴りやんでいた。

 

「誰か止めたのか、まさか?」

 

 あたりを見回す陽祐に、美沙が、

 

「一定の時間で自動的に止まる仕組みじゃないの?」

「警備員が駆けつけて来るなら、それでも構わなかったんだけどな……」

 

 深く考えないことにした。

 スーパーにはこれから何度も来ることになるだろうし、いつまでもベルが鳴っていては、うるさいだけだ。

 バーベキューセットその他の荷物を車のトランクに積み込み、空になったカートを押して店内に戻る。

 今度は二階の衣料品売場へ向かった。

 

「お兄ちゃん、自分の水着、選んで来て。美沙もちょっと見て来るから」

 

 エレベーターを降りるなり、美沙はその場にカートを置いて、婦人服の売場へ駆け出した。

 シャワーはついて来てほしかったのに、ここではぐれるのは平気なのか?

 いよいよ甘えていただけだな。

 陽祐は美沙のカートをエレベーター前に残し、自分のカートだけを押して、紳士服の売場へ行った。

 水着を選んだついでに、普段着用にTシャツと短パンを何枚か手に入れた。

 棚ごとごっそり頂戴してもいいけど、持って帰るのが邪魔になる。

 近くにサングラスのコーナーも見つけて、一番高いブランド品を自分の分と美沙の分、頂いておいた。

 ドライブには必需品だろう。

 まだ美沙が戻らないので、婦人服の売場へ行ってみた。紳士服売場の倍近い広さだ。

 水着のコーナーはどこか、きょろきょろ見回しながら歩いていると。

 

 ──え?

 

 視界の端を横切る人影があった。

 カーテンが開いたままの試着室の鏡に映ったのだ。

 どこかの学校の制服みたいな紺色のブレザー姿に見えた。

 

 ──麻生?

 

 何故そう思ったのか、自分でもわからない。高校のブレザーは紺ではなくグレーだ。

 鏡に映った人影が通り過ぎたはずの場所を振り返る。

 浴衣姿のマネキンが立っていた。紺色の浴衣だった。

 これを見間違えたのか?

 辺りを見回す。誰も歩いてなどいない。

 もう一度、マネキンを見る。

 紺のブレザーといえば、中学の制服がそうだったけど……


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