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「…………、どうして……?」
じっと見つめてたずねる美沙を、陽祐は真っすぐ見つめ返し、
「世界中の人間の中で、俺たち兄妹だけ選ばれたみたいに、この世界に残るなんて偶然は考えられないだろ」
「それは……そうかもしれないけど」
「だとすれば、誰だか知らないが俺たちをいまの状況に放り込んだ奴がいるってことだ」
陽祐は『平凡な日常』と書いた文字に向かって矢印を引き、その反対端に『退屈』と書いた。
「そいつの目的はわからん。世界で二人きりという状況に置かれた俺たちに何を期待してるのか。……でも」
矢印の横に『観察』と書き添えて、
「一つ言えるのは、そいつがいま俺たちを観察してるだろうってことだ。だったら裏を掻いてやるんだよ」
「裏を掻く……?」
「俺たち二人で全く普通の日常を演じてみせるんだ。観察してる奴には、さぞ退屈だろうが、それが狙いだ」
「…………」
美沙は、ぽかんと口を開けて陽祐の顔を見た。
「……お兄ちゃんって、ホントにいろいろ思いつくね」
「まーな、俺たちが観察対象として役立たずとわかれば、元の世界に戻してもらえるかと期待してるんだが」
陽祐は眉をしかめて腕組みをする。
「だけど、あまりに退屈で逆ギレした相手が天変地異とかイベントを押しつけてくる可能性も否定できない」
「いや、でも……うん、それが一番だと思う」
うんうんと美沙はうなずいてみせ、
「ママたちも、そのうち帰って来るかもしれないんだから、なるべく普通にして待ってたほうがいいよね」
「ま、ほかにもう一つ選択肢はあるんだけど」
陽祐は用紙に『世界の終わり』と書いた。
「俺たちのほかに誰もいない世界だ。町中のガラスを割ろうが火をつけようが、やりたい放題できるだろ」
「お兄ちゃん、それ本気で言ってるの?」
あきれた顔をする美沙に、陽祐は肩をすくめ、
「いや。それじゃ観察野郎を楽しませるだけだし、それに俺だってオヤジたちが帰って来ると思ってるんだ」
用紙の余白に、わざと乱暴な字体で書いてみせる──『陽祐参上★夜露死苦』
「暴走族が暴れたみたいにガラスが割れたりペンキで落書きしてあるのをオヤジに見せられねーだろ」
「そうだね」
美沙は、くすくす笑う。
「だったら答えは決まりだね。美沙たちは、できるだけ普通に生活する」
「そーゆーことだ」




