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「……で、お次は『超常現象』だが」
陽祐は用紙にそのままの言葉を書いた。
「人が原因不明のまま突然消えるといったら、普通はこれだけど」
「つまり、この世界は美沙たちが元いた世界だけど、ほかのみんながいなくなったって可能性だね?」
美沙が言って、陽祐はうなずき、
「乗員全員が姿を消した『マリー・セレスト号』が有名だが、世界中の人間が消えるのとは規模が違う」
もっとも……と、陽祐は言い添えて、
「常識じゃ説明つかないことが起こるのが超常現象だ。どんな規模で起きてもおかしくないとは言えるけど」
「そうだね……」
言ってから美沙は、はっと気づいたように、うつむき、
「……ごめんなさい」
「いいって」
陽祐は笑って、
「超常現象の場合だけど、消えた人間がどうなるか、二通り考えられるな」
そう言うと、用紙に書き加える。
・別の世界で生きている
・ブラックホール? に飲み込まれて消滅
それを見た美沙が眉をしかめた。
「やだ……」
「……すまん、俺のほうは謝ってばかりだ」
陽祐は『消滅』の字を棒線で消した。
美沙が陽祐を、じっと見つめて、
「お兄ちゃんは、ママやパパがいなくなって平気なの?」
「まだ現実感がない。とか言ってる場合じゃねーけど、オヤジやオフクロが完全に消えたとは考えられない」
陽祐は棒線で消した字を、さらに黒々と塗り潰しながら、
「そのうち何でもない顔して帰って来るんじゃないかと思う。だったら消滅なんて書くなって話だけど……」
「美沙も、ママたちはどこかで無事にいると思う。そう思いたいよ。でなきゃ美沙、普通でいられないよ」
「ああ……、俺だってそうだ」
陽祐は二枚目の紙を脇によけて、三枚目を引き寄せた。
「今後のことだが、一つは、この世界を徹底的に調べるって選択肢がある。世界中を飛び回る覚悟で」
「……それでママたちが帰って来ると思う?」
美沙が陽祐を見つめながら言って、陽祐は首を振り、
「わからん。世界中の人間を消すとか世界をコピーするとか、とんでもない超常現象だか超能力が相手だし」
「でも……何もしないよりは、いいのかも」
「いや、何もしないのも一つの選択肢だと思う」
「え……?」
きょとんとする美沙に、陽祐は用紙に『平凡な日常』と書いてみせ、
「俺は、いまの状況は何らかの意図があって作り出されたものだと思う。偶発的な超常現象とかじゃなくて」




