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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第三章  美沙(二)
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3 - 6

「……で、お次は『超常現象』だが」

 

 陽祐は用紙にそのままの言葉を書いた。

 

「人が原因不明のまま突然消えるといったら、普通はこれだけど」

「つまり、この世界は美沙たちが元いた世界だけど、ほかのみんながいなくなったって可能性だね?」

 

 美沙が言って、陽祐はうなずき、

 

「乗員全員が姿を消した『マリー・セレスト号』が有名だが、世界中の人間が消えるのとは規模が違う」

 

 もっとも……と、陽祐は言い添えて、

 

「常識じゃ説明つかないことが起こるのが超常現象だ。どんな規模で起きてもおかしくないとは言えるけど」

「そうだね……」

 

 言ってから美沙は、はっと気づいたように、うつむき、

 

「……ごめんなさい」

「いいって」

 

 陽祐は笑って、

 

「超常現象の場合だけど、消えた人間がどうなるか、二通り考えられるな」

 

 そう言うと、用紙に書き加える。

 

  ・別の世界で生きている

  ・ブラックホール? に飲み込まれて消滅

 

 それを見た美沙が眉をしかめた。

 

「やだ……」

「……すまん、俺のほうは謝ってばかりだ」

 

 陽祐は『消滅』の字を棒線で消した。

 美沙が陽祐を、じっと見つめて、

 

「お兄ちゃんは、ママやパパがいなくなって平気なの?」

「まだ現実感がない。とか言ってる場合じゃねーけど、オヤジやオフクロが完全に消えたとは考えられない」

 

 陽祐は棒線で消した字を、さらに黒々と塗り潰しながら、

 

「そのうち何でもない顔して帰って来るんじゃないかと思う。だったら消滅なんて書くなって話だけど……」

「美沙も、ママたちはどこかで無事にいると思う。そう思いたいよ。でなきゃ美沙、普通でいられないよ」

「ああ……、俺だってそうだ」

 

 陽祐は二枚目の紙を脇によけて、三枚目を引き寄せた。

 

「今後のことだが、一つは、この世界を徹底的に調べるって選択肢がある。世界中を飛び回る覚悟で」

「……それでママたちが帰って来ると思う?」

 

 美沙が陽祐を見つめながら言って、陽祐は首を振り、

 

「わからん。世界中の人間を消すとか世界をコピーするとか、とんでもない超常現象だか超能力が相手だし」

「でも……何もしないよりは、いいのかも」

「いや、何もしないのも一つの選択肢だと思う」

「え……?」

 

 きょとんとする美沙に、陽祐は用紙に『平凡な日常』と書いてみせ、

 

「俺は、いまの状況は何らかの意図があって作り出されたものだと思う。偶発的な超常現象とかじゃなくて」


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