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世界の黄昏に愛する人と  作者: 白紙撤回
第三章  美沙(二)
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3 - 2

 

 コンビニを出て、再び駅へ向かって二人で自転車を走らせた。

 駅へ行って何をしようという考えはなかったが、ほかに目指す場所もない。

 駅前の大型スーパーは駐車場のゲートバーが閉まり、案内板に『定休日』と表示されている。

 本来は水曜定休だから、きのうからそのままということだ。

 駐車場の奥にある店舗の入口はシャッターは下りていないが当然、施錠されているだろう。

 いざとなればガラス戸を割って押し入るほかはない。

 駅前にも、やはり人の姿がなかった。

 ロータリーに数台の車が停まっているが、いずれも車内は無人だ。

 銀行はシャッターが下りていた。それを指差して、陽祐は言う。

 

「世界が元に戻るときに備えて、いくらかカネを持ち出しておくか? いまなら誰も追いかけて来ないし」

「閉店してるから、お金は全部、金庫にしまってあるんじゃない?」

 

 美沙が冷静に答えて、陽祐は苦笑いする。

 

「おまえの言うとおりだな。どこからか爆弾でも手に入れてくるしかねーや」

 

 交番も無人だった。中を探せば拳銃が見つかるのだろうか。

 そんなものに触ってみたいと思わない自分は、まだ正常なのだろう。

 いずれ、この世界に絶望したら、どうなるかわからないけど。

 駅の入口のシャッターは下りていなかった。午前一時といえば最終電車が到着する前後だ。

 終点は、まだ先である。この駅を出発した電車は、そのまま乗客ごと消えたのか。

 

「駅の中を見てみる?」

 

 美沙が言って、陽祐は首を振る。

 

「いや、無駄だろう。それより、ほかに確かめておきたい場所がある」

「どこ?」

「スタンド」

「えっ……?」

 

 きょとんとしている美沙にそれ以上は説明せず、陽祐は自転車を出す。

 ロータリーから放射状に伸びている道の一本を進むと、すぐ先にセルフ式のガソリンスタンドがあった。

 給油機の前まで自転車を乗りつけて、料金投入口のイルミネーションが点滅しているのを確かめる。

 どうやら使える状態だ。

 美沙がたずねた。

 

「ガソリンなんてどうするの?」

「車で移動することになったとき、必要だろ?」

「車? お兄ちゃん、運転できるの?」

「たぶん。うちのオートマなんてオモチャみたいなもんだろ」

「……美沙、一緒に乗らなきゃダメ?」

 

 陽祐は妹の顔を、じろりと睨む。

 美沙は苦笑いして、

 

「冗談だって」

「この世界で一人きりになるのと俺の運転、どっちが怖いだろうかね?」

「……やめて! やだ、一人になるのは考えたくない……」

 

 美沙は本気で怖がる顔をした。冗談のつもりが脅かしてしまったようだ。

 これは自分が道化を演じるしかないと、陽祐は苦笑いしながら、

 

「情けねーこと言っていいか?」

「え……?」

「俺も一人きりになるのはごめんだ。頼むから一緒に乗ってくれ」

 

 両手を合わせてみせると、美沙は笑ってくれた。

 

「……いいよ。これから、どこへ行くときも一緒ね」


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