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コンビニを出て、再び駅へ向かって二人で自転車を走らせた。
駅へ行って何をしようという考えはなかったが、ほかに目指す場所もない。
駅前の大型スーパーは駐車場のゲートバーが閉まり、案内板に『定休日』と表示されている。
本来は水曜定休だから、きのうからそのままということだ。
駐車場の奥にある店舗の入口はシャッターは下りていないが当然、施錠されているだろう。
いざとなればガラス戸を割って押し入るほかはない。
駅前にも、やはり人の姿がなかった。
ロータリーに数台の車が停まっているが、いずれも車内は無人だ。
銀行はシャッターが下りていた。それを指差して、陽祐は言う。
「世界が元に戻るときに備えて、いくらかカネを持ち出しておくか? いまなら誰も追いかけて来ないし」
「閉店してるから、お金は全部、金庫にしまってあるんじゃない?」
美沙が冷静に答えて、陽祐は苦笑いする。
「おまえの言うとおりだな。どこからか爆弾でも手に入れてくるしかねーや」
交番も無人だった。中を探せば拳銃が見つかるのだろうか。
そんなものに触ってみたいと思わない自分は、まだ正常なのだろう。
いずれ、この世界に絶望したら、どうなるかわからないけど。
駅の入口のシャッターは下りていなかった。午前一時といえば最終電車が到着する前後だ。
終点は、まだ先である。この駅を出発した電車は、そのまま乗客ごと消えたのか。
「駅の中を見てみる?」
美沙が言って、陽祐は首を振る。
「いや、無駄だろう。それより、ほかに確かめておきたい場所がある」
「どこ?」
「スタンド」
「えっ……?」
きょとんとしている美沙にそれ以上は説明せず、陽祐は自転車を出す。
ロータリーから放射状に伸びている道の一本を進むと、すぐ先にセルフ式のガソリンスタンドがあった。
給油機の前まで自転車を乗りつけて、料金投入口のイルミネーションが点滅しているのを確かめる。
どうやら使える状態だ。
美沙がたずねた。
「ガソリンなんてどうするの?」
「車で移動することになったとき、必要だろ?」
「車? お兄ちゃん、運転できるの?」
「たぶん。うちのオートマなんてオモチャみたいなもんだろ」
「……美沙、一緒に乗らなきゃダメ?」
陽祐は妹の顔を、じろりと睨む。
美沙は苦笑いして、
「冗談だって」
「この世界で一人きりになるのと俺の運転、どっちが怖いだろうかね?」
「……やめて! やだ、一人になるのは考えたくない……」
美沙は本気で怖がる顔をした。冗談のつもりが脅かしてしまったようだ。
これは自分が道化を演じるしかないと、陽祐は苦笑いしながら、
「情けねーこと言っていいか?」
「え……?」
「俺も一人きりになるのはごめんだ。頼むから一緒に乗ってくれ」
両手を合わせてみせると、美沙は笑ってくれた。
「……いいよ。これから、どこへ行くときも一緒ね」




