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第三章 美沙(二)
朝食後、陽祐と美沙は自転車に乗って町を探索した。
世界中の「ほとんど」全ての人間が消えたらしい。
だが、わずかな例外である自分たち兄妹と同様、この世界に残っている人間が、ほかにいるかもしれない。
あるいは、なぜ自分たち以外の人間が跡形もなく消えたのか、謎を解く手がかりが見つかるかもしれない。
それとも、この世界が推測通りのパラレルワールドであるならば、その証拠が見つかるかもしれない。
車が通らないので、車道上を二人並んで自転車を走らせた。
バス通りを駅へ向かう。
道沿いに並ぶ商店はシャッターを下ろしているが、世界がいつも通りだったとしても、まだ営業時間前だ。
「……午前一時にみんなが消えたとして、その時間でも道を走ってる車やトラックはいたはずだよな?」
陽祐は言う。
「だったら、運転手が消えた車が事故を起こしてもいいのに、そんな形跡は見当たらねーな」
「でも、道端に停まってる車はあるね。路上駐車っていうの?」
美沙が言って、陽祐はうなずき、
「可能性としては、走行中の車だけが全て、運転手ごと消えたってことか」
行く手の信号が赤になり、美沙がブレーキをかけようとしたが、陽祐はスピードを落とさない。
美沙は「もうっ!」と怒りながらも、それに従った。横から車が飛び出して来ることは当然、なかった。
その先にコンビニがあった。
店内は明かりがついているが、外から見える範囲で人影はない。
「ちょっと寄ってみよう」
店の前に自転車を停めて、中に入った。
客も店員もいないこと以外は何の変哲もないコンビニエンスストアだった。
陳列棚が寂しく見えるのは早朝に行なうはずの商品補充がされていないからだろう。
残っていた弁当を手にとってみた。賞味期限はきょうの昼まで。おにぎりやお惣菜も同じ。
だが、冷凍食品のコーナーには、それなりの数の商品が並んでいる。
「食料は当分、なんとかなりそうだ。冷凍庫の電源が切れなきゃだけど」
「停電とかするかな?」
「わからん。トラブルさえなければ、発電所は自動で送電してるもんだと思うけど」
「ここで食べ物を手に入れるとして、お金はどうする? パパのお財布から借りておく?」
「店員もいないのに、誰に金を払うんだよ」
「レジに入れておけば……」
「本気で言ってる?」
陽祐は美沙の顔を、じっと見つめた。
美沙は気まずそうに眼を伏せ、
「いちおう本気だけど……変?」
「いや、おまえらしいけどな」




