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表の戦い? その壱

 悪夢のような入学式。

 あれから数日たったとある平日の昼休み。

 俺―――上倉零次は教室のドアの前に居た。

 教室の中からは騒がしい話し声が聞こえてくる。雰囲気としては、クラス全体で盛り上がってるような感じだ。出会ってまだ何日もたっていないはずなのに、随分と仲のいいことだ。はてさてみんな、一体なんの話題で盛り上がっているのだろう。共通の話題でも出来たのかね。

 ……だいたい察しはつくけど。

 そう思いつつドアを開ける。ガラッと音を立てて開くドア。

『『『…………』』』

 それと同時に急に無言になるクラスメイト達。

 ……あー、やっぱり。

 あの地獄の入学式以来、俺の噂は学校中に広まったらしい。

 あんな奇行をすれば当然だ。たぶん俺のクラスでもそういう噂はあるのだろうが、本人が居てはしにくいのだろう。だから俺が少しでも席を立つとこうなるわけだ。

 ……冷静に分析してる自分が悲しい。さっさと席に戻ろう。

 クラス中のほんのり冷たい視線を受けつつ、窓際にある自分の席へと向かう。

 ……お前らこっちみんなよ。

「や、零次。どこ行ってきたの?」

 椅子を引いて座ろうとしたあたりで、御堂に話しかけられる。

 こいつだけは入学式の件には触れず、俺と変わらず付き合ってくれてる。ありがたい話だ。

 ちなみに御堂の席は俺の真後ろだ。

 俺は椅子を少し動かし、御堂の方を向いて座る。

「別に大したことじゃねーよ。わざわざ職員室行ってプリント貰ってきただけさ」

「へぇ。プリント?」

「卒業したらどうしますかー的な意識調査の紙だよ」

「そっか……あれ? でもそれってだいぶ前の時間に配られたような……」

「うっ……」

 ……痛いところをついてくるなこいつは。

 そうなのだ。俺が取りに行ったのは、前の授業で貰ったはずのプリントなのだ。

 しかし俺はそれを貰ってはいなかった。

「授業中寝てて、起きたらみんな見覚えのないプリント書いててよ……」

「それで取りに行ったと。自業自得だね」

 ニコリと笑って話す御堂。

 俺からすれば笑いごとじゃない。

「つーかお前、俺の後ろだろ。起こしてくれよ」

「だって授業始まる前に『起こすな』って言ったの零次だよ」

「うっ……」

 ……また痛いところを。

 それにしても、御堂はあえて起こさなかったからいいとして、他に誰か起こしてくれてもいいじゃないかなんてことを考えてしまう。

 やはり腫れもの扱いされているのかと思うと、自然とため息がこぼれ出てしまう。

「はぁ……」

「どうしたの? 急にため息なんかついて」

「いや、なんか俺クラスに馴染めてねぇなって……」

 ふと、本音が漏れた。

 つい御堂の前だからと油断してしてしまったのだろう。

 本当はこんなこと言うつもりではなかった。

 しかし気持ちはそのまま溢れてくる。

「なんか……疎外感を感じるんだよな……」

 こうなってしまったのは入学式の一件が大きな原因だろう。

 あんな初っ端でこけるのはあまりにも痛い。

「そっか……」

 御堂が同情の眼差しを向けてくる。

 こいつは深入りしてこないため詳しい事情は知らないが、俺が『訳あり』であんな行動とったことを、察してくれている。

 でも同情されると余計に悲しくなるのだ。

「せめて新しい友達とか一人ぐらいは欲しかったな……」

 こんなこと御堂に言っても仕方ないのはわかってる。

 端からみたら完全に自業自得なのだから。

 でも抑えられなかった。

 ……正直、クラス内で村八分にされて笑い者にされるのはキツい。

「じゃあ、新しい友達が欲しいんだね。零次は」

「えっ?」

 御堂が何かを言った。

 その言葉はひどく自信に満ち溢れていて、とても明るい声色だった。

「わ、悪い。よく聞こえなかったんだけど……?」

 聞き直してみる。

「ん? いや、なんでもないよ。それより零次、今日放課後ヒマ?」

 話題をそらされた上に質問を質問で返された。

「まあ、暇だけど……」

 家に居ても特にやることはないし、なにか予定があるわけでもない。

「でもそれがどうかしたよ?」

「そんじゃ今日の放課後、ちょっと残ってくれる? 一緒に行きたい場所があるんだ」

 突然だった。

 今一つ御堂の考えてることがわからない。昔から他人との過度な接触を避けていたこいつにしては珍しい、やけに積極的な態度だ。

「えっ、それってどういう……?」

 とにかく何か聞こうと思い、とっさに聞き返してみる。

 しかし―――

 授業の始まりを告げるチャイムが鳴る。

 なんやかんやで活気を取り戻して騒がしくなったクラスの連中が、次々と席に戻っていく。

「あっ、授業始まっちゃうね。この話はまた放課後で!」

「あ……おう」

 御堂はさっさと授業準備を始めてしまった。教科書にノートに筆箱……みてるだけで眠くなってくる。

 前を向くとちょうど教師が教室に入ってくるところだった。もう無駄話は出来ないだろう。

 ……仕方ない。ひとまず御堂の発言は置いとくとしよう。

 こうして昼からの授業が始まったので、俺は机に寝そべり、そのまま寝た。

 勉強? 内申? めんどくせぇ。

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